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「掌侍・大江荇子の宮中事件簿 四(集英社オレンジ文庫) 小田菜摘」帝、いい性格してんなあ……!!
掌侍・大江荇子の宮中事件簿 四 小田菜摘

掌侍・大江荇子の宮中事件簿 四 小田菜摘

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あらすじ#

ともに帝を支えていく――。出世は望まずただ真面目に働いていた内裏女房の大江荇子は、幼馴染で帝の腹心の部下・藤原征礼の言葉に覚悟を決めた。ところが宮中は今日も事件が止まらない。目にすることさえ叶わない三種の神器に異変が現れたのだ。犯人は誰か、どんな災厄が降りかかるか宮中は揺れる。そんな中、原因不明の病に帝が倒れ、東宮擁立の動きが加速、荇子は奔走するのだが……。大人気! いらない秘密を知ってしまう働く平安女官のお仕事事件簿第四弾!――「こんなもの、いままでの悪だくみに比べればかわいいものだ!!」

感想#

帝、相変わらずおめえはいい性格をしているなあ……!!!!#

現状、東宮は不在。このままでは良くないと東宮を立てたい。しかし、もし帝の子が生まれたなら東宮は退いてもらうこととなる。そんなポジションとなる東宮を、今現在本当に立てるのか? 大臣らは自分の娘である帝の妃に頑張らせて男子を産ませたいし東宮なんて邪魔なんだが? という、なんとも面倒くさい状態から始まるこの巻。
そんな状況で帝が原因不明の病でぶっ倒れ、流石に東宮を立てなければならないと慌てだす周囲。しかし、帝の看病を征礼とともに行った荇子はなんとも顔色が悪い。それもそのはず、帝の病は仮病だったのだ!! そりゃあそうでしょうねこの帝なら!!!

さすがに笑ってしまった。いや、絶対そうだろうとは思ったけれども、やっぱりそうで笑ってしまった。帝ならそういうのを迷うことなくやる。事態を動かすためならば、このぐらいのことまるで躊躇わずに実行する。
しかし、たいていの秘密なことって知っている人が少ないほうが安心なわけで、そういう『他人に知られちゃまずい出来事』を帝が知らせる相手に、かなりスムーズに荇子が入りだしたあたり、帝もかなり変化してきてる。

1巻だと荇子のことを征礼が良く話すやつぐらいにしか認識しておらず、面白半分に代筆をやらせてみたところ文字が綺麗だし、ついでに頭も回るようだから少し使ってみるかとしていた帝。それが1巻ラストで強請られて強制的に秘密を共有したことにより荇子を起用したり呼んだりすることが増え、接触回数が増すほどに信頼度が増していくの、単純接触効果その他諸々あるとしてもおもしれー状態……。
荇子が帝に協力するのは帝への忠誠心というより征礼のためなので、征礼が帝の寵臣である限り荇子も帝を裏切らないという信頼がある。そして荇子自身、かなり頭が回るし強かなので、起用する分にはとても便利。また何か悪巧みに起用する。信頼度が増える。以後無限ループ。

 むすっとしたままなにも言わなくなった荇子を、帝は一瞥する。
「そう気に病むな」
 見ると帝は、心持ち困ったような顔をしている。
 これはひょっとして、慰めようとしてくれているのか? いや、それよりも、実に品のない言い方だが――。
(ご機嫌を取ろうとしている?)
 思いついたとたん心が震えた。恐れ多いのと、申し訳ないのと、ちょっとだけの優越感という種々の感情が入り混じっている。

あの帝が! あの帝が!? 1巻の頃から見たらかなり荇子を懐にいれてしまっている!!
このシリーズにおいて最も人間的変化を見ているの、帝から荇子に対しての態度かもしれない。

そしてちらっと出ていたけれども、麗景殿女御とはいい感じに友人関係を築いているようで笑ってしまった。確かにともに立つパートナーとしてはめちゃ合いそうだなとは思ってましたが、やっぱり性格合うんか。でしょうね。

竜胆宮の強さ#

東宮を立てる話に戻る。

東宮は誰にするかという会議は当然それなりにごたつく。帝に子が生まれたらすぐ次代皇帝の座から引いてもらう必要がある。そんな誰かの人生が変わるようなことを容易く決められるか。しかし今の帝はそのポジションだった。云々。
紛糾するなかで、とうの東宮の立場に立たされかけている竜胆宮が覚悟キマっていて笑っちゃった。このシリーズ、本当に覚悟がキマっている人間多すぎんか。

食うものにも困り自分で農作業をしていた竜胆宮は、『帝に男児が生まれて自分が東宮から引いたら、男児を産んだ妃の父親はきっと自分に恩義を感じるだろう』と判断し、東宮となることを了承する。
次代の帝の立場ではなくなるということよりも、将来的に食っていけるかどうかを先に考える強さが、貴族らしからぬ思考だけれども(なんならこれから東宮に立つ人としてもありえない思考だけれども)とても腹を括りきって覚悟もとうに決めていてめっちゃ良かった。

そして竜胆宮の加冠役を要請されている三条大納言、父親としても人間としても、権力への欲がなく良い人だが思慮深さもあり、ええ大人や……。
竜胆宮の加冠役となるのは良いが、そのためには竜胆宮の人間性を知りたい。更には準備しなければならないものも大量にある。だからこそ時間がかかっていた、という彼の人の良さがスゴすぎる。なんか他の某大臣とか某大臣とかがろくでもないせいで、このシリーズこんな人間性がまともな人もいるのかと若干感動してしまった。


いい感じに巻数が進んでいるけれども、今回は征礼との関係性は恋愛よりも連帯感のほうが強かったので、今後どうなる……どうなる……とじりじりしている。
もう当て馬でも出てきたほうが話としては早く進むんだろうが、このシリーズ絶対当て馬出てこなそうな貫禄がある。