2314 文字
12 分
「どもども、部活やめた同盟です! (MF文庫J)九曜」距離なし女子ものとしては不可もなく
どもども、部活やめた同盟です! 九曜

どもども、部活やめた同盟です! 九曜

Amazon BookWalker

あらすじ#

その集団って『一生もの』?

高2の春。藍井咲良は、同じマンションに住む美少女クラスメイト・水瀬美汐とバッタリ遭遇する。
いつもより早い帰宅……話を聞くと演劇部をやめたらしい。(何やらワケあり?)
「やめるのも選択肢のひとつだよ。俺だって高1の夏にサッカー部やめてるしな」
「え!? じゃあ、一緒だね!」
お互い境遇が重なった事で美汐にやたら気に入られ、急速に縮まる距離に戸惑う咲良! けど、ぽっかり空いていた時間が埋まる感じで何だか心地よい!?
美汐は特殊なこの仲を『部活やめた同盟』と名付け、放課後ラーメンや深夜ドラマ一気見など咲良を想像を超えた楽しい日々へ連れて行く。
途中退部同士でもっと強く繋がる青春物語!

感想#

特定の共通点がある男女が理由をつけてだらだらと一緒にいるタイプのラブコメ未満であり、最近よく見る距離なし女子に積極的に来られる系ラブコメ未満でもある。内容としては可もなく不可もなくってかんじで普通の話なんだけれど、終盤に出てくるヒロインのやめた部活関連がなんとも微妙にツッコミどころが多い感じではあった。

行き場のない二人のお遊び#

サッカーのために遠くの学校に入って一人暮らしまでしているものの、1年のときに熱中症で倒れ、その流れでサッカー部をやめてしまった主人公・藍井。そして、最近部との方向性の違いで演劇部をやめたヒロイン・水瀬。
同じ部活やめたものとして、また同じマンションの真下に住む人間として水瀬に気に入られた藍井が、そのままずるずると一緒にいて、夜中にコンビニに買い物にいったり、ラーメンを食べに行ったり、深夜に一緒にドラマを見たりする話。

少なくとも藍井は部活をやめたのが半年以上前で完全に吹っ切っているので、あまり『欠けた穴を何かで埋めようとする物語』などではない。単純に、距離なしの同級生とだらだらと日常を過ごすタイプの話だった。
日常の楽しいを二人で小さく積み重ねていく話としてはありきたりで王道で、これといっておもしれーとなるところは無かった。ただそれが悪いという話ではなく、マイナス点も特に無く、だらだらと読む分には良かった。

ただこれ、同じような『部活をやめた』という状況ではあれ、藍井と水瀬の立場って全然違うんだよな。
かたやサッカーが好きでサッカーのやる気はあったものの、熱中症で倒れ、その後特に運動をしていないので徐々に身体も衰えていて、特殊な才能があったわけでもないサッカーが好きな少年というだけの藍井。
かたやスクールとは方向性の違いでやめただけであり、部活も部の方針と違うからやめただけで、演技力はまるで衰えておらずコネもあり今すぐにでも別のところで羽ばたける水瀬。
偶然とノリと勢いで同じ場所にいるだけで、というか水瀬が藍井につきまとっているだけで、全然同じ立場でも対等でも同じようなもんでもないんだよな、この二人。

水瀬の演技への感覚にもやもやする#

そもそも水瀬、元々芸能界で入っていたスクールは方向性の違いでやめ、演劇部は先輩たちと合わずにやめたけれども、演劇という道自体は諦めていない。そして彼女の立場と能力があれば、別に高校の演劇部なんて小さいところでやらずに芸能界でやってくって方法も全然あったんだよね。

芸能界の頃にいたスクールでは、歌とダンスが評価される場所だったものの水瀬は演技がやりたかったため、スクールの方向性とは違って芽が出なくてやめた。しかしスクールではスタークラスという一芸に秀でた子が入るクラスに入っていた。
それってスクールでも能力はあると評価されていたのでは? 本人がいうように『そういうスクールは歌とダンスが出来る子が欲しい』のならば、いくら演技が出来ても評価には繋がらないし。スタークラスにだって入れないでしょう。例えばけん玉やプログラミングがなんぼ出来たって芸能界の売り方的には不要と考えられればスタークラスに入れられないように。
なので、演技が出来てスクール的に評価はされていて、けれども何故か芽が出ずスクールをやめた人、という若干謎の立ち位置になっちゃってるんだよな。

で、そんな熾烈なスクールに通っていたものの方向性の違いでやめた人が、なんでたかだか高校の演劇部に入ろうとしたのか。舞台などでやっていきたいというなら小さい劇団系に入ったほうがまだいいのに。
スクールの同期の子であり現在馬鹿売れしている子たちが太鼓判を押すぐらいに演技が出来るのならば、そこからの紹介でなんらかの劇団に入れたのではないか。

最後の部に戻らないの話し合いも、そこまでして部に戻りたいのか(藍井にサッカー部に戻らせたいという願いがあったからにしても、外部の劇団に入るという方法もあったのではないか)、そもそも皮肉をあれだけ言ってきた演劇部になんで戻ろうとするのか、なんで藍井は『演劇部としては水瀬に戻ってきてほしいと思っている』という前提で話を進めているのか(戻ってきてもらうのならばそちらが謝罪するべきと考えている)などと、色々と首を傾げてしまった。
確かに顔を見るたびに皮肉を言うなどという後輩いじめをしていた演劇部先輩は悪なんだけれども、そこに戻りたいと言っているのは水瀬であって、別に演劇部先輩は戻ってきてほしいなどとは思っていない。その状態でそっちが謝って戻ってもらうべきと言うのは筋が違うだろう。
そして水瀬の演技力の高さを証明してもらうための方法も完全に水瀬の友人頼りなあたりも、他力本願すぎてなんだかなあ。

水瀬が演劇部に戻ろうとした理由が完全に『藍井をサッカー部に戻らせたい』という願いからだとしたら、突然呼び出されて、出てったやつに戻ってやるから謝れと言われ、一回退部したやつが知り合いを呼び出してこちらに能力見せつけるだけ見せつけ、やっぱいーやで帰られた演劇部の先輩たち、さすがに被害者でしょ。
物語的にそういう立ち回りであって何かしらの感情を持つほど人間として存在してない舞台装置なのはわかるけれども、それでも流石に可哀想でしょ。


この水瀬の部活関連や演技への思い入れ周りが余りにノイズすぎて、そのぐらいなら無いままだらだらと同盟のお遊びやってる方がまだ増しだったのでは? とも思うけれども、それだとそれでなんのイベントもないままだらだらと進むだけで面白みが無いんだよなあ……。
でも、水瀬の演技への思い入れはまるでわからず、なんで……? となってしまった。