「無自覚チートの箱入りお嬢様、青春ラブコメで全力の忖度をされる」SFラブコメ、令和のハルヒ

★★★☆☆,電撃文庫SF,学園,片思い,現代,転校生

あらすじ

天然素材なお嬢様を“アオハル”で接待? 不思議な部活はじめました。

不運に不運を重ねた人生を歩み、まっとうな青春を諦めていた琥太郎。そんな彼にも、出会いは衝撃的にやってくる。
「食パンを咥えたまま走るのが夢だったんです! 青春ってそこから始まるじゃないですか!」
妙な絡み方をしてきたのは、「青春」にやや歪んだ期待を寄せる変人のお嬢様・天津風撫子。長い闘病生活から奇跡的に回復して無事高校に入学したという彼女は、琥太郎を巻き込むかたちで「アオハル・パーティ」なる謎部活を立ち上げ、様々な騒動を引き起こしていく。
ところで本人は気づいていないけれど、どうやら天津風が青春を満喫できないとこの世界は滅びるらしい。そしてちなみに、彼女は僕に惚れているとのこと。
……つまり、世界の命運は僕次第!?

なんかすげー不思議な味がする本だった。面白かったかと言われれば終盤は燃えたしキャラは良かったとも言えるし、悪いところもあったかと言われればハルヒっぽさがするところぐらいしか出ないんだけれど、でも素直に面白かったとは何故か言えないような、そういうすげーなんとも言い難い感じの本だった。
面白かったか面白くなかったかと言われれば面白かったのに、なんだろうなこの感覚。

令和に涼宮ハルヒ(キャラに関してめっちゃネタバレしてる)

『長い闘病生活から奇跡的に回復して無事高校に入学したという彼女は、琥太郎を巻き込むかたちで「アオハル・パーティ」なる謎部活を立ち上げ、様々な騒動を引き起こしていく。』というあらすじから分かる通り、一時期流行った謎部活をするヒロインと彼女に振り回される人々と見せかけて、実は世界を改変する能力があるヒロインを見張っている周囲の仲間たちとそれを知らずにいたヒロインのキーとなる主人公、という物語。未来人やアンドロイドや超能力者たちが出てくる。

設定やあれこれがすげーハルヒ的なんだよね。ただそのハルヒ的なのが意図的なのもわかるのが結構面白い。

あらすじ通り、ヒロインは闘病からの回復で青春というものに憧れがある。その闘病生活中に青春にあこがれて読んでいたのが青春モノラノベ。ヒロインが謎部活について話すときにSOS団や謎部といった有名どころラノベの謎部活の名前が出てくる。ヒロインが世界改変を行えることを考えると、ハルヒ的なのってヒロインが意図的にそうしたんだろうなって思える物語構造になっているのが面白かった。

中盤あたりまで来ると今後主人公がどうなるか想像はつくけれども、それも含めて面白い話だった。

令和のハルヒだなと一番思ったの、古泉ポジの男子と思われたのが実は男装女子なあたり。そうだな、令和なら古泉は女になるよな。というか作中で名前のある主人公以外に男いたっけ。

物語的にメインヒロインの天津風撫子以外は全員サブヒロインにしかならないんだから、やろうとしていた内容的に女であることに意味がある那珂川先輩以外は1人ぐらい男がいてもいいんじゃないかなと思ったというか、八重樫が男を装った女なのなんで?となった。

友人の男女比が偏ってるやつだいたいヤバい説

青春学園ラノベモノで同性の友人いないキャラってだいたいやべーと思ってる。

リアルとフィクション一緒にすなとかラブコメで男いらんとか突っ込みはいろいろあるかもだけど、同性の友人が全くいないってその時点でかなりやばくない? でも同性の友人はいないのに異性の友人がいるってだいたいやべーやつじゃない? 少なくともそういうキャラ描写が行われている主人公ってやばくない? これは男主人公でも女主人公でもなんだけど。

という認識なので主人公の数少ない同性の友人ポジと思われたキャラがろくに服を脱がないあたりであー……となったものの、そのあたりも『主人公は不運が続いていて中学時代は友達が本当に誰もいない』『現状周囲に集まっている仲間たちと呼べるような相手は全員ヒロインの監視員なので厳密には主人公が0から作った友達ではない』というのを元にすると納得してしまった。運がヤバいやつ。

この主人公の不幸体質は世界のあれこれやヒロイン関係あるのかな。

ヒロインが主人公に惚れる理由がすごく好き

主人公は『インプリンティング、一目惚れ。雛が最初に出会った動くものを親と思うように、パンを咥えて走ったときに出会った相手が自分だから惚れただけ』と思い込んでいるけれども実は違ったとわかる終盤がものすごく好き。

実際は『パンを咥えて走るような奇行を行うような人間であろうともふつうに扱ってくれた』が理由。それ以後も正しい学園生活を知らないのと物語のなかの青春にあこがれているがゆえに奇行を繰り返すヒロインを、主人公はふつうの女の子として扱ってくれた。

確かに最初にパン咥えてぶつからなかったら、主人公をそういう人だと認識できなかったかもしれない。でも、だからこそ、主人公の人となりを知れて、そこから主人公の性格を好きになった、という流れがもうめちゃくちゃ美しいし綺麗だなと思った。主人公が(ある意味)恐れていた一目惚れなんかじゃ全然ないんだよね。その一瞬の行動で主人公の性格に惚れたんだよね。いやここ本当にめっちゃ良い。

ヒロインと主人公のあの電話のシーンがめっちゃ良くて、互いに顔を見えないからこそ本音で話せてるっていうのがわかるのがすごく好き。

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