「わけあり毒伯爵は不束者 春の花嫁との恋は二人だけの冬の季節に (一迅社文庫アイリス)中村 朱里」しんどい状況でも穏やかにしなやかに生きていく主人公が好き
あらすじ
ある日突然、《毒》の魔術師である討伐伯オルテンシアスに嫁ぐことになった、天涯孤独な《花》の魔術師ミュゲ。結婚相手に話は通っているからと真冬に魔物がいる辺境へ行くことになったのだけれど……。出会ったオルテンシアスからそんな話は聞いていないと言われたうえに、帰れと拒絶されてしまって!? こんな雪の降る中で王都へは帰れませんよ! だから、花嫁としてではなく、春が来るまでこの屋敷で雇ってくださいませんか、旦那様? 花嫁ではなく押しかけ使用人になった少女と孤独を抱える毒伯爵の結婚ラブファンタジー。
面白かったー!
ヒロインのやわらかくふんわりした口調、けれども芯があって自分の軸があるところがすごく良かった。柳みたいなヒロインだな。
不幸な状況も柳のように受け流しているヒロインが好感持てる
《毒》の魔法の能力を持つ魔術師と結婚させられるために強制的に養子として連れてこられて花嫁教育を詰め込まれ、魔術師のところへ向かわされたのに相手は自分が結婚相手として現れたとは知らず、雪深くてろくに帰れない場所なのでせめて春まで使用人扱いで良いから置いてくれとお願いする主人公。
そういった他人の都合によって動かされてばかりの人生なのに、それについて悪口を言ったり不平不満をこぼすわけではなく、現状の自分の環境だって悪くはないと穏やかにふんわりと話す主人公が好感持てた。
こういうのほほんとしつつも芯のあるヒロインって好きなんだよな。ちゃんと自分がある。
現状出来る範囲のことのなかで出来る限り現状を良くしていこうとし、現状を悪くない環境であると良いとこ探しをしている主人公がすごく良かった。
恋愛模様のじれったさと距離を起きたい理由が好き
魔術師が主人公を遠ざけたがる気持ちもわかる。
自分の持つ特性魔法である《毒》を制御しきれず、自分の意思ではなく感情の昂りに応じて毒を放ってしまう体質。パッシブスキルすぎるし制御出来ないのだるすぎるな。そんな能力があるからこそ人里離れたところに住んでいるし、主人公と一緒にいて彼女の人柄を知り好きになればなるほどそばにおいておきたくなくなる。
好きな人を傷つけたくないし、自分のせいで命の危機になんて陥れたくないもんなー! それは仕方ねえよ。
他人のせいで自分の人生があっちこっちやらされてもしなやかに生きていく主人公と、人嫌いに見えるけれども他人を傷つけたくない優しい魔術師が、傷を舐めあって癒やしあっていく姿が良かった。こういう穏やかな恋愛小説好きだな。