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「愛とか恋とか、くだらない。 (ガガガ文庫)雲雀湯」サブの三角関係が好みだった

愛とか恋とか、くだらない。 (ガガガ文庫)雲雀湯

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あらすじ

年下幼馴染と、不純な関係を持ってしまった

河合祐真には、ひとつ年下の幼馴染がいた。倉本涼香――親友・晃成の妹だ。祐真にとっても妹のような存在で、高校生になろうと変わらない。そう、思っていた・・・・・・。ある日、晃成がバイト先の先輩に恋をした。「バッカみたい」そう呟く涼香は、恋愛感情が分からないという。そして祐真も、恋愛にトラウマがあった。でも、“そういう”ことには興味がある。「キスって、気持ちいいらしいね?」いけないと分かりつつ、一線を越えてしまった。二人は、ひとつ約束を結ぶ。この不純な関係は『本当に好きな人』ができるまでの期限付き。

面白かったは面白かったんだけど、これに対する「好き!」の感情って、9割ぐらいサブの三角関係に基づいていて、メインの主人公とヒロインの関係性はあまり刺さらなかったな。そういう意味ではすごく変な本。

恋愛感情なしで進んでいくメインカップル

この小説の主人公カップルが面白いのは、お互いに特に恋愛感情を持っていないまま関係を続けているところ。主人公・は親友の妹(兼幼馴染)と雰囲気に流されて一度エッチしちゃって、そのまま続いてる状態なんだけれども、互いに性欲はあっても恋愛感情はないところ。
二人共恋愛に全く興味がなく、けれども性欲はあるのでエロいことはするというスタンスなので、相手に何かあっても嫉妬しないみたいなゆるさがある。

てっきりテンプレよくあるパターン的に主人公はヒロインに対して性欲しかないもののヒロインは主人公に激重執着恋愛感情抱いてくるタイプなのかと思いきやそうじゃなくて驚いた。あ、ヒロインからも恋愛感情はないんですね、っていう。
相手のために可愛い格好をしてみたり、相手に好みだと思われる格好をしてみたりもする。けれどもそれは相手に恋愛感情を抱いてほしいからではなく、ちょっとした仲直りのきっかけを求めてだったり、周囲のみんながイメージチェンジをしたので自分もという理由付けだったりで、恋愛感情的なものはまるで無い。あるのを押し殺しているという雰囲気でもない、というのがちょっと(すごく)不思議というか、異様というか、あんまりないなという独自性になっていた。

ヒロイン側も主人公が合コン行くって言っても全然気にしないし、本当に恋愛感情がないんだなって思う。その恋愛感情の無さがさっぱり感が全体的に強く漂っていたし、タイトルの愛とか恋とかくだらないっていうのが主人公とヒロインの基本スタンスなんだなと。

四人組と三角関係のサブカップル

主人公と親友の妹の他に、主人公の親友ともう一人の女の子(後輩)も一緒にいて、よく四人のグループで遊んでるんだけど、そこの複雑な関係がさいっこうに良かった。

後輩は主人公の親友が好き。
主人公の親友は、バイト先の先輩が好き。
この三角関係が、もうめっちゃ良い。

親友を好きっていうのを誤魔化して親友の恋を応援している後輩が健気でめっちゃ良いんですよ。恋愛感情を見せないようにして、ただの後輩っていうポジションを維持しようとして。好きな人の幸福のためにその恋を応援して、親友がバイト先の先輩に告白するのを成功するようにあれこれアドバイスして。
そんな健気な子、応援しないわけにはいかないだろうが……。

主人公らメインカップルらは、そんな二人(+一人)の様子を眺めながら、自分たちが恋愛をするのは面倒くさいものの、この二人の恋愛は頑張っていて微笑ましくて可愛らしいと少し線を引いているような雰囲気があるのが興味深い。

って書いてる途中で気づいたんだけど、私、実はサブカップルの方が好きだったのかも
自分の好きな人の幸せのために自分の恋を諦めてその人の恋が実るように頑張る話とか、自分の好きな人が傷つけられて振られたことで怒って相手に抗議しようとしに行く女の子とか、そのあたりがすごく良かった。

話の途中で、上述の通り親友は先輩に振られる。バイトで人が足りないときに無理に出てもらったお礼をするという名目で何か食べに行こうと誘われるも、先輩は自分の彼氏を連れてきていた。あからさまな牽制により、明確に振られたわけではないけれども実質振られたような形となる。
はたから見たら先輩の行動ってすごい正しくて、自分には彼氏もいるのに、ちょっと優しくした後輩がすごい自分のことを好きになってグイグイ来るのは怖いよね。だからお礼をするという名目で自分の彼氏を連れてきて牽制するのは全然正しいと思う。
でもそういう「ちょっと考えればそういう手段をとっても仕方ないこと」で、しかも好きな人が失恋して自分にチャンスが訪れたのに怒ってしまうところに、後輩の「自分の好きな人に幸せになってほしい」という純粋な感情が見えて好きだった。

観察者としての恋愛小説

結局この物語は「自分たちは恋愛の外側に置きながらも、恋愛によって変わる人たちを観察している話」なのかな。恋愛感情がなくても誰かのことを大事に思ったり遊んだりできるし、かといってアセクシャルというわけでもなく、誰かに対して恋愛感情を持ったことは全然ある。

そういうキャラクターから見た愛とか恋とかの話として、新しい切り口だなと思った。主人公カップルよりもサブカップルに心惹かれたのは、やっぱり従来の恋愛の機微があるからなのかもしれない。メインカップルはちょっと「性欲」と「一回やったから続いてる」みたいな感じがあって、それはそれで新鮮だけど。

愛とか恋とか、くだらない。 (ガガガ文庫)雲雀湯

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