
あらすじ
楽しいだけではいられない――向き合う時は今。
放課後、ファミレスで、他愛もない話をするだけの関係《ファミレス同盟》を結んだ俺と加瀬宮小白。一緒に遊ぶ予定を立て、楽しみにしていた夏休みは――予定外の小白の家出と共に始まることになった。
家族との不和。それが家出の原因であり、小白がファミレスに逃げ込んだ理由。だから俺と小白は二人きりの逃避行を始めた。海に温泉に、もちろんファミレス。この夏は予定通り楽しい思い出で埋めたいんだ。
でも、現実は俺たちを逃がしてはくれない。家族に追いつかれ、ついに向き合わなきゃいけない時が来た。困難に立ち向かう小白、覚悟を決めた小白。そんな彼女は逃げ続ける俺とは大違いだけど、だからこそ、眩しくて、綺麗で、俺は――そんな彼女が欲しいと思ったんだ
家族と向き合うことを避けている主人公とヒロインがファミレスでお喋りをするラノベ2巻。
今回はヒロインである小白の問題解決の巻であり、紅太と小白の逃避行じみたプチ旅行が行われる。前の巻もだけれども、一緒に逃げてくれる人がいるって嬉しいよな、安心できるよなという話だった。2巻にして二人の関係性が大きく変化してしまったけれども、紅太の問題はまるで何も解決してないから続刊あるよね?
夏だ!夏イベントだ!!
家族と向き合うのを避けていた小白が、母親に「お前がなにか問題を起こしたら姉に迷惑がかかるから家に引きこもっていろ」と言われ、夏休みは主人公・紅太と遊ぶ約束をしていたために反発。発作的に家出をしてしまう。
小白からの連絡を受けて家に迎え入れた紅太は、小白とともにプチ家出、もといプチ旅行をすることとなる。
夏休みのプチ旅行としての家出でやることが、どれも高校生の青春って雰囲気ですごく良かった! 年齢的に保護者の許可無しでホテルに泊まれないからと24時間営業ファミレスでぐだぐだお喋りをしたり一緒に配信映画を見たりして夜を明かし、健康センター的な場所でお風呂に入って汗を流しと、どれも私もやりて~~! ってなる可愛らしさがあった。
夏なので当然のように夏イベントも消化、途中で海の家で働くことになりのあれこれもあり。どれもこれも青春って風味で読んでて楽しかった。
ただ、途中で小白の姉である黒音が元気に出張る出張る。ヤンデレシスコンじみた彼女が小白に敵対するもの全部滅するの勢いで暴れようとしていたので若干のウザさを感じつつ、けれども小白が黒音を姉として慕っているのでどうにも出来ずみたいなところがあった。
黒音が小白を大事にしてるのはわかるんだけど、こういうヤンデレシスコン(テンプレ部分が多い)は読んでいてまたこういうキャラか……的な感情が出てきてしまう。体の良い障害(いい感じのところで結局は引いてくれる)な感じがあり、出てきてもそこまで脅威とも感じないんだよな。どうせだったら組織の宿敵と結婚したら~の兄ぐらいトンチキに走って欲しい気持ちがある。
問題の根っこは解決しない
これは1巻もなんだけれども、問題は結局解決しない。小白と姉との微妙なわだかまりは解消されたが、小白と母とのわだかまりはまるで解消されていない。小白は母との対話をするだけの勇気を得たが、母は小白との対話を拒否して逃げた。
1巻が『互いの家族の問題自体が解決したわけではないが、互いに理解者を得る』という物語だったのを考えると、この間でも対立者である母との和解はかなわなかったものの、代わりに姉という理解者を得たってことになるのかな。
完全に解決するわけじゃないものの前進する物語でここまでもやっとさせずにやるのっておもしれえ~。
黒音の、こいつ家においておくと小白に悪影響だから家から引き剥がそ! の気持ちが切ないし、当時の黒音が頑張った結果なんだろうな。
圧を掛け、黒音のためにならないものは全部排除しようとし、小白の行動を制御しようとする毒親。『こいつは私を憎んでいるはずだ』という被害妄想を小白に抱き続けていつか小白を害しかねない母親。
何があっても小白を守りたい黒音は、母親を小白から物理的に遠ざけるしかない。けれども自分たちはまだ子供。だったらマネージャーにすることで、家から完全に出す。
黒音は黒音で、ずーっと頑張って小白を守っていたんだろうな。だとしてもヤンデレシスコン振る舞いはうざいですが。
今回は小白の家族問題解決巻だったので、次は紅太の家族問題解決巻になるのかな。義妹の『どうして普通の家族が出来ないのか』と紅太に対し不満感を持っているあたり、そこらへんが出てきそう。
プチ旅行も小白に巻き込まれたとしても紅太が家にいたくないってのも大きいし、次巻があれば爆発するんじゃなかろうか。それでも気持ちの良い完全解決にはならず、ふわっとした形に決着するのだろうけれども。
ところで微妙にこう、主人公友人の夏樹が都合の良いキャラすぎてどうなんだ~~~と思う瞬間がある。何かあったらこいつに頼ればどうにかなる存在。バイト先とか。あと頼ってくれて嬉しいってわざわざ言って、紅太に罪悪感を抱かせないようにしているところとか。
ここまで滅私で助けてくれるキャラって裏になにかないと怖いというか、どうしてそこまで何でもしてくれるのかわからないからこそ、何でも頼るの怖くない? と思ってしまうんだよな。もういっそ恋愛感情を抱いているから何でも助けてやりたいぐらいの何かがないと、すべてのご都合を調整するためにいる存在すぎる。
