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「ちゃんと好きって言える子無双3 (MF文庫J) 七菜 なな」ちゃんと好きって言えたら無双だけど、言えなかった子は?
ちゃんと好きって言える子無双3 (MF文庫J)   七菜 なな

ちゃんと好きって言える子無双3 (MF文庫J) 七菜 なな

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あらすじ#

「愚兄の不始末は、我が澄江家によって処理する」 白亜と和泉の距離が縮まりヒロインレースの勢力図がまたまた大きく変化した矢先、皆の前に、和泉の妹にして悪役令嬢な才女・澄江香澄が突然襲来! 和泉の現状に怒り爆発で、和泉を強制的に転校させると宣言してしまう。 皆が戸惑う中──七緒に背中を押された波留は、和泉の転校を阻止すべく立ち上がる! これは、素直になれないツンデレ後輩女子・春日波留がヒロインレースに殴り込む物語か。 それともやはり、ちゃんと好きって言える子・七瀬七緒が無双する物語か。 だがしかし…… 「和泉お兄ちゃんとチェキ10枚!!」 ラブコメの鍵を握るのは、いつの時代も妹なのさ──

感想#

 ――繰り返す。
 これはヒロインレースの物語でもなければ、頭の上がらない兄に圧政を課す悪役令嬢な妹ちゃんの物語でもない。
 あるいは七瀬七緒が無双するだけの物語だったこともあっただろう。
 しかし今回に限り!
 これは少女の小さな勇気が巻き起こす、驚異の逆転劇である!
 ――おそらくッ!!

とある以上、もう『ちゃんと好きって言えない』メインヒロイン気取りの少女たちが、突然現れた『ちゃんと好きって言える』メインヒロイン七瀬七緒にかっさらわれる話ではないのは重々承知。
しかし、私は元々そっちのかっさらわれる物語を望んでたんだな~~と改めて思ってしまう巻だった。

巻ヒロインたる波留の印象が薄い#

他校に通う、実家の跡継ぎたる妹・香澄の来襲。そこから始まるドタバタ劇で、和泉は「お兄ちゃんを転校させて、わたしの監視下で生活してもらう!」と宣言される。しかし転校は避けたいヒロインたちが頑張ってあの手この手をやったり、ツンデレブラコン妹が内心『お兄ちゃんお兄ちゃん大好き!!』してたりするお話。

冒頭の流れ的に、てっきり波留が今巻のヒロインとなり和泉に告白を行うのだと思ってた。
しかしこの巻、妹の香澄のほうがキャラが濃いし出番が多いし妹としてのポジションも強いしで、あんまり波留の印象が強くないんだよなあ……。

香澄が妹という家族としての権限を利用して転校させようとするならば、和泉から妹のように思われている波留が対抗して戦い、和泉の転校を阻止する! という流れは良い。
ただ、その直前にあった『生徒会実行委員的なポジを和泉にやってくれと頼む』というイベントは結局波留がこなせず七緒がやってしまっているし、その後の波留と香澄のゲームバトルも波留が圧倒的勝利しすぎて香澄が拗ねてしまって香澄の代わりに何故か和泉が戦うという変な流れ。
波留の代わりに和泉が戦うんなら波留が巻ヒロイン枠としての印象も残るのだが、バトルの敵なのもあり、あまり巻ヒロインという印象が残らなかった。

特にラスト、せっかくの波留の告白を、タイミング悪く飛び込んできた香澄の声で全部かき消されちゃうのがなあ……。女の子の告白が偶然聞こえなかったは確かに主人公にヘイトが溜まるとしても、ここでまた香澄か……というがっかり感が発生する。
今まで他のヒロインたちが、巻の最後にちゃんと好きって伝えてヒロインレース参戦! の繰り返しだったから変化をつけるために失敗させたのかもしれないけれど、一人だけ好きって言えても伝わってない負けヒロインという印象がついてしまった。
なんなら、ちゃんと好きって言えるようになった香澄がこの巻ヒロインだといわれたら、それはそれで納得できてしまう。ちゃんと好きって言えましたからね。

結局好きって言えなかった波留は、今後も和泉に意識してもらうことはなく、他のヒロインたちからはからかわれ続ける残念悪魔ちゃんポジという悲しい位置にずっと居させられることになるのかな。悲しいな。

七緒の目的がなあ#

最初にちゃんと好きって言ったことで和泉に最も女子として意識され、ヒロインレースのなかでも頭一つ分抜けている七緒。
しかしそんな彼女は、他のヒロインたちになんなら協力し、和泉に告白させようとしてくる。その真意は? と謎だったんだが、そこがようやく把握できた。

「それでもわたしは欲張りだから、やっぱり一番幸せなゴールが欲しいんだ。勝った人も負けた人も、みんな納得できる結末がわたしの理想なの。もちろん波留ちゃんと香澄ちゃんの勝負や和泉くんの将来だって、そう思うんだ。和泉くんが今は自身が持てなくても、いつか自分の理想の未来を掴めるまでずっと応援してる」

メインヒロインらしい傲慢さであり世界平和を望む視点ではあるけれども、それって本当に可能なのかな。現状結構な人数が和泉を好きな状態である以上、和泉が分裂するかこの世界が一夫多妻制を取る以外で、全員が望んだ結末というのは無理なわけで。
1人を残して残りは全員が和泉を諦め、けれどもそれに納得した状況。そんな夢物語のような状況を目指そうとする七緒が、なんかそれェ……本当にうまくいくんですかァ……? という気分になってしまう。

そもそも、ちゃんと好きって言ってくれた相手に対しても、和泉ってかなり扱い良くなくない? 気を持たせるような言動行動をしつつ、明確に受け入れたり断ったりもしていない。ヒロインたちをキープしているだけの、全力で不誠実な状態。
現在は積極的に接している分七緒がそれなりに抜きん出ているように見えるが、その七緒に異性として意識したりしつつも恋愛としてはなんら返答せず不誠実な状態を続けている。

ハーレムもの、ヒロインレースものとしてはその形が正しいんだろうけれども、だとしても誠実さの欠片もないし、大量の女子を侍らせているだけと言われてもそりゃあ仕方ねえよな。佐藤らにボコられても仕方ない。


文章のテンポ自体は良いし、読んでる最中はサクサク進むから読んじゃう。
ただ、こうしてまとめていると、なんかもう読むの違う感じになってきたかも……とも思えてきた。
求めているところに向かわなそうだし、なによりここまで不誠実決め込んでいてなんでこいつモテてんだ、わかんねえな……。