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「やり直し悪女は国を傾けない ~かくも愛しき茘枝~ (集英社オレンジ文庫)喜咲冬子」タイムリープしたのにバタフライエフェクトで最悪が次々とやってくる
やり直し悪女は国を傾けない ~かくも愛しき茘枝~ (集英社オレンジ文庫)喜咲冬子

やり直し悪女は国を傾けない ~かくも愛しき茘枝~ (集英社オレンジ文庫)喜咲冬子

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あらすじ#

絶世の美女・汪玲枝は皇子に嫁ぎ、皇子の死後にはその父である皇帝に嫁いだ。寵愛を恣にし、玲枝の好物だった茘枝を運ぶためだけに邑が滅ぼされたという。皇帝を誑かし贅の限りを尽くさせ、最後には毒を呷らされた傾国の悪女。それが――私!? 八歳で自分の将来を思いだした玲枝は、同じ人生をまたたどるくらいなら死を選ぼうとしたが、そこに現れた仙人のような美しい青年に「貴女が死ねば国が滅びる」と言われ!? でもなんで私だけが傾国の悪女と呼ばれなければならないの!? それなら次は間違えなければいい。悪女にならなければいい。汪玲枝のやり直しが始まった!

感想#

デッドエンドルートのクソゲーを、前回の知識で回避しろ#

なんか勝手に悪女にされて処刑されることになるわ、気がついたらタイムリープで逆行してるわ、子供の頃に戻ってるわ、その状態で再び出会った仙人には「書を読め、賢くなれ」って言われる。うるせーオメーよぉそれに従ってたら最初の人生でめちゃくちゃな目にあって最終的に殺されたんだが!? とブチギレて、しかもその仙人は別に未来を変える方法をちゃんと知ってるわけでもないしアドバイスの「書を読め」だって単純に『女は馬鹿だから物事を考えるようになればきっとまともな道を辿れるだろう』というクッソ雑な思いつきだけで出てきただけ。マジでしょうもねえ! 今度は絶対に最悪ルートを回避してやる!! という物語。

マジで無理ゲーかつクソゲーすぎる人生を2周めという知識チートを利用してどうにか切り抜けようとする主人公・玲枝。チート技である未来の知識を利用すればするほど、バタフライエフェクトによって最悪ラストへのチェックポイントにどんどん早めにチェックインするハメになる。このままじゃどうやっても再度最悪に行くハメになるんですが!? となるのが余りに最悪すぎた。ここから入れる起死回生の一手があるんですか!?

まずは楓親王に見初められたら敗北エンドに入るため、見初められないためにあらゆる方法で逃げ回る。更には仙人から渡された秘伝の薬のレシピは守り切る。浩帝に見初められても確定でデッドエンドに向かうため、そもそも視界に入らないようにしまくる。そうやって回避しようとしても、むしろ回避しようとしたのを嘲笑うように、運命は玲枝をそいつらに会わせてくる。
バタフライエフェクトが起きてはクソ野郎連中と遭遇するタイミングが早まりまくり、本当に読んでて「逃げてー! どうにか逃げてー!」と思い続けていた。
しかし、どうにか逃げても別のタイミングで顔を合わせる。そこを回避して無理矢理逃げたら別の男に惚れられる。惚れられたことで帝の寵愛を欲している女からは憎まれる。あまりにご都合悪い主義かというレベルで玲枝を襲い来る出来事たちに、運命の強制力とかいうなろう乙女ゲーあるあるのものの存在を確信した。

あらゆる男たちが玲枝の顔を見ると惚れていくので、なんかもういっそ玲枝は顔を焼くか何かしたほうが人生としては安心に過ごせるのでは……? と思えてきてしまう。いや、クソ野郎どもがいるから女に顔を焼けというのもかなり乱暴な話ですが。でも顔面を見た瞬間にやべー連中がとにかく惚れてくるし、それ以外の逃げ道はないのではないか。たいていの連中は玲枝の顔面に惚れているのであって、玲枝自体に惚れているのは柏心ぐらいだろうし。

そのオチは望んでなかった#

ここまでどんどん最悪な方向へと物事が進んでいくと、次こそ逃げ切れるか? 次こそ奇跡の一手で玲枝は助かるのか? と思うが、事態は容赦なく悪くなっていく。けれども残りページ数的にどうにかなるんじゃないのか? ここまで頑張った主人公は報われてほしい! と思ってたところで、落ちとしてはかなり『え?』という感じに終わってしまって首を傾げた。

私は、これだけ頑張った玲枝が物語の主人公であり、男の身勝手な独占欲と支配欲と恋愛感情と性欲に振り回された女が抗う話だと思っていた。
なのに作中で

 この時、気付いた。
(これは――陶柏心の物語だったんだわ)
 これまでずっと、稀代の悪女が、悪女ならざる存在になるための試練だと信じて生きてきた。だからこそ必死にもがき、あがき、時に我が身を捨てんとまでしたのだ。
 仙人の言うように、女一人の影響力など微々たるものだったろう。
 しかし、人一人の変化だけは起こし得た。
 玲枝を妻に迎えたことで、第三世の柏心には変化が起きている。

要するに柏心に変化を起こしたから国が傾いたりその他諸々の事態は免れたし悪女の誹りも逃れることが出来たということなんだけど、結局男がどうにかするためのひとつのスイッチになっただけじゃねえかと。
玲枝の努力により世界が変化するわけではなく、たった一人の男が変わっただけかと。

そのたった一人の男が変わるための物語であり、そう変化させる玲枝の物語であるのはわかるんだけど……わかるんだけど、でもそうじゃないんだよ。私が求めていた方向はそうじゃないんだよ! 女が抗った物語なんだよ! と思ってしまった。
そもそもその柏心と別れている時間が長すぎて、ついでに言えば柏心とねんごろな関係だからこそ命狙われたターンもあるからこそ、柏心に対して思い入れや格好良いという印象も抱けなかった。そのせいで柏心にラストをかっさらわれたみたいな感情が出てしまった。

周囲の地位が高いし玲枝の出来ることは限られているとはいえ、結局これだけ抗ったのに玲枝自身は何も出来ないままで終わってしまったっていうの悲しすぎるだろ。

胸糞悪いキャラクターたち#

出てくるキャラクターたちがみんな元気に胸糞が悪い!

最初に玲枝に「書を読め」と言った仙人は、特段何かしらの悪女回避の方法があるから書を読めと言ったわけではなく、単純に女は馬鹿だからやらかすので書を読めと言っただけ。基本的に女の頭を悪意なく悪いと思っていて、だからこそ無意味でなんなら玲枝の人生をしんどくするようなアドバイスとプレゼントをしただけ。
玲枝を悪女と一方的に決めつけ、玲枝の以前の行動は悪女だから不倫も姦通もしていたはずだと思い込み、玲枝の話をまるで聞かない。完全に矛盾した発言をし、すべての責任を玲枝におっかぶせているし、それを悪いとろくに認識していない。
読者視点からしたら玲枝は悪女ではないが仙人視点からしたら悪女である、というのはわかるものの、だとしても即座に矛盾点を指摘できるような状況かつ相手を愚かと見下した状態でずっと話を進めるので腹がたった。

玲枝の父親は玲枝を楓親王に嫁がせることしか考えていない。書を読む女はよくないとして書物を持っているのを知られたらおしまい。

楓親王は元気なクズで、やることなすことすべて敵。下半身が元気。顔面見ようと部屋に突撃もしてくるし、下半身を出そうとしつつ迫ってきたりもする。

浩皇帝も様々な不条理や不合理を全部自分以外の他人に押し付けまくるクソ野郎。こいつに惚れられたら人生が終わる(ガチで)。
なんなら、玲枝がこんなループやらされる理由として、玲枝の好物であるライチを得るためにこの浩皇帝が道を作ろうとし、その際に呪い師の一族が滅ぼされたからというものがある。だが実際のところ、浩皇帝がその一族に存在されると不都合があるから滅ぼしただけで、玲枝の好物は実際はなんら関係なかった。

基本的に玲枝は本当に何一つ悪いことをしておらず、あえて悪いというなら運が悪いぐらい。そんな状態で惚れられては無理矢理求められ、拒否しても慎ましい女だと認識されるばかり。
ようやく仲良くなった女は男関係で仲が冷え憎まれ殺されかけたり、別の仲良くなった女は玲枝のせいで殺されたり。

本当に最悪の人たちばかりが出てきて、でもきっと玲枝がどうにかして乗り越えて行くのだろうと考えてたのにあっけない終わりで、本当にどういうこと……? となった。
ビターエンドと言われたらそのとおりなんだけど、いやでも、なんかもっとあるだろ!? というか。ひたすら玲枝が可哀想な話という認識で終わってしまった。