ミュージカル ジャック・ザ・リッパー 09/20ソワレ

★★★★☆,舞台

ジャック・ザ・リッパー

あらすじ

1888年ロンドン。

刑事のアンダーソン(加藤和樹・松下優也)は娼婦だけを狙う、“ジャック・ザ・リッパー”と呼ばれる殺人鬼(加藤和樹・堂珍嘉邦)を追っていた。残忍な犯行で解決の糸口も見えないため、マスコミを排除し非公開で捜査を進めようとする。 しかしロンドンタイムズ紙の記者、モンロー(田代万里生)はスクープ記事のネタを狙って アンダーソンに近づく。 モンローは、麻薬中毒者で金が必要なアンダーソンの弱みにつけこみ、情報提供の取引に応じさせてしまう。

4度目の殺人現場で、アンダーソンの前に男が現れ「犯人を知っている」と告白する。「そいつの名前はジャックだ」と。 彼は、7年振りにアメリカからロンドンにやってきた外科医ダニエル(木村達成・小野賢章)。 7年前、ダニエルと元娼婦のグロリア(May’n)はジャックと出会っていた。

犯行が重ねられ事件は混迷を極めていく一方。 アンダーソンはダニエルの告発に基づき、おとり捜査を計画するが、ロンドンタイムズ紙は “ジャック・ザ・リッパー”の殺人予告記事の号外を出してしまう。 そして、アンダーソンと彼のかつての恋人だったポリー(エリアンナ)までもが事件に巻き込まれる。

果たして、殺人鬼“ジャック・ザ・リッパー”の正体とは…?
そして、本当の目的とは…?

キャスト(私が見た回)

ダニエル:小野賢章
アンダーソン:松下優也
ジャック:加藤和樹
グロリア:May’n
ポリー:エリアンナ
モンロー:田代万里生

朝隈濯朗 伊佐旺起
石井雅登 齋藤桐人 常川藍里
水野栄治 森内翔大 りんたろう
碓井菜央 岡本華奈 熊澤沙穂
香月彩里 菅谷真理恵
ダンドイ舞莉花
永石千尋 橋本由希子

見てきた人

  • あらすじ特に確認してない
  • キャストも加藤和樹さんがジャックということぐらいしか確認してない
  • 史実のジャック・ザ・リッパーはよくわからない(過去に橋本さとしさん主演のシャーロック・ホームズ2がジャック・ザ・リッパーを題材にしていたなというぐらい)
  • 朝の情報番組的なサムシングで歌唱披露していて気になったので売り止めになる直前にノリと勢いで買った

感想(ネタバレあり)

めちゃくちゃおもしろかったーーーーーーーー!!!!

韓ミュということでまあ好きだろという雑な感覚で見に行ったんだけど超面白かった! 言うて韓ミュそこまで知ってるわけでもなく何作か見たのが今まで全部あたりだったというだけではあるけれどもこれもかなり好きなタイプだった。
特にラスト20分で一気に「この話好き!!!」となった。最高。超楽しかった。良かった。

ストーリーについて

物語自体は切り裂きジャックの物語だけあって娼婦がどんどん殺されていき果たしてジャックは誰か?目的は?という流れ。
それにあらすじの通り刑事のアンダーソンと彼を脅してどうにかスクープを手に入れようとするモンローが捜査をし、途中で突然「犯人はジャックだ!」と告げる男・ダニエルが現れる。ダニエルは自分と彼女の過去を語りだし……と続いていく。

1幕前半:現在の内臓摘出殺人事件の流れ。記者のモンローが刑事のアンダーソンを脅し、記事がスクープになった場合の報酬は山分けということで協力関係を築くこととなる。
1幕後半:ダニエルによって語られる惚気もとい、彼が7年前に娼婦のグロリアと出会い恋をし、ジャックに出会って内臓を買おうとしたがグロリアによってジャックが警察に売られて報復としてジャックがグロリアを襲い、警察に追われたジャックは川に身投げする
2幕前半:現在。ダニエルが実際は生きていたグロリアと出会うが彼女は梅毒で内臓が溶けていた。彼女を救うには新鮮な内臓を手に入れる必要がある。そこへジャックが現れ、ダニエルに内臓を売ってやると言い、ダニエルを連れて娼婦を殺してその場で内臓を奪わせる。
2幕後半:ダニエルが警察でそこまで話し、おとり捜査を行うこととなった。刑事のアンダーソンの馴染みの娼婦ポリーがひょんな手違い(あれは手違いか?)から囮となる。しかし守りきれずポリーは殺される。研究室に戻ったダニエルの手は真っ赤。実はジャックはダニエルが警察の目を欺くために出しただけであり、実際のところすでに7年前に死んでいた。ジャックはダニエルの中にいる。アンダーソンとモンローがその事実を突き止めてダニエルの研究室へ行く。ダニエルを捕まえようとするアンダーソンだが、モンローがアンダーソンを邪魔し、これからもジャック=ダニエルをスクープにするためマネージャーになるという。しかしジャック=ダニエルが拒否、攻撃する。ポリーを殺された恨みで起き上がったアンダーソンがジャック=ダニエルを殺し、研究室ごと爆破させる。
最終的に切り裂きジャック事件の犯人は不明と報告書を書くアンダーソン。恋人のために内臓を集めた男の悲劇の物語にしないため、ポリーやその他死んだ女たちを悲劇の物語の舞台装置にしないために。

このラスト20分の圧倒的な流れが最高だった。
言われてみれば途中で「なぜジャックがダニエルの前に現れた?」などわかりやすく表現されているのに全然気づかず、もしかして……?と思ったのがポリーが殺されてからだったので完全に騙された。ほんと面白かった……。

ここの研究室のシーンでジャックとダニエルが入れ替わるというか、ジャック(中身がダニエル)とダニエル(中身がジャック)のシーンがめちゃくちゃ好き。どちらがステッキを持っているかでどちらがジャックなのか見せる、という描写をした後に、アンダーソンたちへ攻撃するときのダニエルはジャックとすれ違いざまに毎回ステッキを手渡されててうわ~~~~!となった。好き。

恋愛描写がなげえ。実際作中でも1幕後半については「2時間も惚気聞かされて~」みたいな発言をアンダーソンがしていて、それなんだよね。
でもその部分があるから、ダニエルがグロリアを愛してるとわかって、ダニエルが殺人をおこなう理由へとつながっている。とはいえめっちゃなげえけど。すげえなげえけど。でも好きなんだなあ。
アンダーソンとポリーに関しては、二人の「頼みがある」「OK」「何がOKだ」「なんでも」っていうやりとりで二人の関係性がわかってもーめっちゃ好き! なにを頼まれても受け入れると決めていたポリーに惚れてしまうだろ。ジャック・ザ・リッパーの物語なのでまあ囮失敗して死ぬだろうなとそこんとこで覚悟してしまったけど……。

最後の最後、アンダーソンがすべてを燃やして犯人不在にするの、わかるし物語的に正しい。
モンローが事前にこの社会の人間たちはただのニュースではなく面白いニュースを求めていると言っていた。だからどうやってもジャック・ザ・リッパーは切り裂きジャックという殺人鬼ではなく愛のために殺人を犯した男として民衆に処理されてしまう。そんなのアンダーソンは絶対に認めない。ポリーを、その他の女達を殺した理由がきれいごとにされてしまい、舞台装置にされるなんて許せない。わかる。わかるし、彼が言うことはきっと正しかった。

アンダーソンがタイプライター打ち込んで記事書いてる最中に後ろの窓っぽいのにジャックの影絵が映る描写、てっきりいりす症候群が始まるかと思って焦った。違って良かったよ本当に。

カテコでメインキャストが1人1曲歌うとこ、ダニエルが俺がジャックみたいなの歌ってんのめっちゃ良かった。最高。好き。

ところで、ダニエルが7年前にジャックに会いに来た理由が、戦争が終わって死体が手に入らなくなったからで、思わずフランケンシュタインを連想してしまった。あっちも戦争が終わったら死体が手に入らなくなったよね。戦争って死体製造イベントなんだなと改めて思ってしまった。嫌だな……。

歌について

どの曲もめちゃくちゃ格好いい!!!

今まであんまりそういうの感じたことなかったんだけど、同じメロディラインで別の歌というのが数曲あった気がする。1回ふわっと見ただけだから実際はそんな無いかもだけどいやあったよね? あった? どうだろ……あった気がする……。

歌で全部を説明していくスタイル、眠くならなくて好き。
歌で感情を表現するやつは眠くなりがち(歌詞を聞かなくても物語が理解できてしまうので)なんだけど、この作品は歌詞を聞き逃したら物語がすっ飛んでしまうので全力で聞かなければならないので楽しかった。こういうタイプ好きなんだよな。それこそ前述の橋本さとしさんのシャーロック・ホームズがすげえ楽しかったな……。

一番好きなのは新聞社での歌? モンローの歌。モンローの歌はどれもめちゃくちゃに旨いしテンションが高くて聞いてて楽しい。どれが流れても好きー!となる。

あんまり他作品の名前出すのアレなんだけど、なんかどの曲かわからんけど楽器の使い方がすごいフランケンぽいと思ったのあったんだよな……どれだっけ。

キャラクターについて

ダニエル:小野賢章

1幕前半の最後で出てきたときに何だお前と思ってごめん。
あと1幕後半の惚気でなげえなと思ってごめん。
更には1幕後半でのグロリアの歌で完全に歌の圧で負けてんなと思ってごめん。これはマジで思った。グロリアの歌の圧がすごい。

全ては終盤のひっくり返しが強いキャラだな。2幕後半の一変するとこがものすごく好き。

誠実な青年が7年の時を経て出会った恋人のために殺人鬼となる。そりゃあ物語性が高くて面白いし、一般大衆は大喜びするでしょうよ。

細くて品の良い青年って雰囲気の彼が2幕後半での豹変、ジャックと入れ替わりでテーブルに飛び乗り姿勢低くするのめっちゃ良かった。しかし惚気は長い。

ダニエルはジャックが存在しないってのは最初から理解した上で警察を欺くためにああ話していたって思って良いんだよね?
過去編だとかあのあたり、だいたいダニエルがアンダーソンたちに話しているというていであって、実際にあったシーンではない。彼の会話の再現シーン。だからダニエル自身はジャックの幻覚を見ているとかではなく、ずっとジャックのふりをしている、自分が殺人をする上でこういうキャラクターが存在したほうが隠れ蓑にしやすいと罪を押し付けるアバターを作り上げていたっていう認識でいいのかな。
言われて思い返すとジャックがダニエルに甘すぎるもんな。過去に自分が川に身投げした原因であるというのに優しいというか。助ける理由がないというアンダーソンの発言通りだよ。

アンダーソン:松下優也

ヤク中刑事。ポリーとどんなご関係なんですか……。
ポリーとのやりとりは1幕前半にちらっとあった以降はほぼ無く、でもなんとなく親密なんだろうなとはわかっていたので、2幕後半のアレにめっちゃ驚いたしサイコー! ああいう信頼関係が好きなんだよ。薔薇を違うとも言えずにもらわれてしまうのがさ……あそこでお前が違うと言って止めていればさ……しかし、好きだったと告白されなければやっぱり囮に使うつもりだったのである。お前。

ヤク中ぶっ壊れ刑事だけど追い求めるという意識はすごいあるし、実際ジャックを捕まえたかったんだろうなあ。
綺麗事にはさせない、美談では終わらせない、と思って全部ぶっ壊すところが好き。捕まえたかったし真実を追いかけていた男が全部を闇の中に隠すの、めっちゃ良いです。

ポリーのところに行く前の花を買っているあたり、この街が嫌いという歌がすごく好き。

ジャック:加藤和樹

思い返してみれば2幕になってからのこいつはすべてダニエルの話した虚構である。ダニエルに優しく協力してくれたジャックはすべて虚構の存在である。大半が虚構の嘘で描かれたキャラ。

とはいうものの、曲がめちゃ格好いいのですべて許してしまうんだなあ。
久しぶりだなダニエルみたいなあたりから始まる曲がめっちゃ好きです。あの朝の情報番組でやってて朝から歌うには物騒なと言われてた歌。あれで見に行くのを決めたので。
ジャックの歌はどれもこれも好みなのばっかで好き。でも俺は殺しが好きみたいなやつは感情表現がメインなのでうーん……となっちゃった。メロディラインや歌い方自体はかなり好きだったんだけどね。

言われてみると1幕時点の服装と2幕時点の服装も違う(これは7年経過したからかな?と思ってた)し、色々とわかりやすくはあったのね。
一番わかりやすいのはダニエルの証言のなかにしか出てきてないことだろうけれども。
というかダニエル、どう見ても女の内臓抜き取る前は生きてたけどダニエルが奪ったから死んだように見えるので、自分の手を汚さないためのアバターを作成したとしても手めっちゃ汚れているのでは???

7年前の、内臓販売人していたジャックは一体どういうやり方をしていたのかなというのは気になる。
直接自分に人が出会わないように、取次にグロリアを使い、道案内になんか知らん老人っぽいのを使い、その上で依頼人と出会う。依頼されれば殺しに言って新しい内臓を取ってくる。お忙しそうだな。
実際彼はグロリアが裏切ったから警察に追われる身になってしまうため、あそこで見せしめと口封じにグロリアを殺すのは正しい(殺人が倫理的にあかんという話はおいといて)んだよね。彼の選択は間違ってない。ただ、ダニエルがグロリアに惚れているが故に庇ったのが運が悪かっただけで。
ダニエルも自分が内臓ほしいですってお願いしに行って、流れ的に誰か殺されて内臓持ってきてもらうことになるのがなんとなくわかってるんだから、なんかまあ……あいつもあいつで……みたいなとこある。

グロリア:May’n

歌つっっっっっっよ。

歌つっっっっっっよ!?!?!?!?

1幕後半でダニエルと歌い出したときに歌つっっっっっっよ!?!?!?!しか出てこなくなった歌つよつよじゃん。
声量あるし歌うまいしでつよつよじゃん。
曲自体がそこまで好きなわけじゃないんだけど歌がつよつよすぎてすべてを薙ぎ払う。強い。

めちゃくちゃ可哀想な人。
グロリアはただダニエルと幸せになりたかっただけなのに、警察がジャックを捕まえられなかったせいで家ごと燃やされるわ、ダニエルはそれで死んだと思い込んでおそらくはいなくなるわ、無事生還したときに愕然としたろうあな。というかそうだよ、ダニエルがグロリアの生存を7年も気付いてなかったってそういうことじゃん。あいつグロリアの死体を確かめもせずにアメリカに戻ったのか。おまえ……もしかして船間に合ったのか……?
顔にも体にも傷がついてしまったからろくな客もとれず、ろくでなしな客ばかりとった結果梅毒にかかり内臓とろけ、あの日ダニエルが見せた希望が絶望に変わった人。いやほんとダニエルが悪くない? これ。

最終的にダニエルと死体を見てしまってダニエルが殺したと思い込む、と見せかけて、あれ実際はダニエルが殺しているので(あのシーンでもそういえば彼女はジャックを見てない、ジャックはその前に去ってしまっている)そりゃあ絶望もする。自分のために好きな男が、あの日馬車に轢かれた人を助けたような人が、人を殺している。そんなふうに変えたのは自分だ。そりゃあ絶望もする。

最後の最後の自殺まで含めて可哀想な人だった。そして歌がつよつよだった……。カテコまでつよつよだった……。

ポリー:エリアンナ

アンダーソンとの関係をもっと詳しく教えてほしい。
アンダーソンの前でもふてぶてしさのある女だったのに、2幕後半のやりとりから一気に可愛い人になった。あのふてぶてしさはどこへ行った?

歌がグロリアとは別路線で強いなあ……。

モンロー:田代万里生

こいつやべーーーーーーーーーーぞ!?!?!?!?!

1幕の時点ではキャストをろくに認識してなかったので誰だこのめっちゃ歌うまくてゲスい人はと思ってたんだけど田代万里生!? 田代万里生ですか!?!? 歌上手いのも声が聞き取りやすくでかいのも納得だわ!!!!

モンローの曲はどれも明るくて好き。新聞社での歌が一番好きかな。
スクープを得るのに必死な人。必死過ぎて壊れている人。

2幕ラストのモンローの死、「あと1枚」と叫んで残ったがために死ぬこととなる。でも現状撮っている写真で全然良いはずなんだよ。金を得るための記事を書くためならば、そこまで写真にこだわる必要なんてない。金を得るためには生きて帰るのが最もだいじだから。
でもモンローは写真にこだわる。記事を少しでも良くするために。1記事で1000ポンド!なんて言ってるけど、彼は記事自体を良くすることを、民衆に面白がらせることを、喜ばれることを狙っている。
アンダーソンやダニエルに取り分は7:3だ!なんて言ってるけど、本当のところでモンローがほしいのは金ではない。記事を書いて得られる自己肯定感や自己顕示欲が満たされる瞬間、とくダネを得た瞬間の興奮だ。
だから翌日朝刊に出るはずの記事が号外で出てしまってこれから得られるはずのスクープが邪魔されたと怒る。

って考えるとこいつめちゃくちゃ壊れてるんだよね。誰よりも目的がぶっ壊れてる。
恋人を助けるために内臓がほしいダニエル、金のために(これは描写が薄いから不明点多いけど)人を殺して内臓を奪うジャック、最終的にはポリーのためにすべてを破壊したアンダーソン。彼らとは違って、ただ一人、スクープを得るために駆けずり回っている。スクープのために気軽に命を投げ出せる。最後の最後、爆発するとわかっていながらあと1枚と残るあたり、こいつにとって大事なのは命よりスクープだよ。
きっと金を与えるから記事をもみ消せと言われても絶対に消さない。ああそうか、アンダーソンとの最初のやり取りがそんな感じじゃん。金ごときじゃ動かない。もっとでかいスクープを目の前に吊り下げられなきゃてこでも動かない壊れた人だ。

モンローのなにが怖いって、曲は全部明るい表情はずっと笑顔、死に際のシーンすらずーっと笑顔でめちゃくちゃ怖いんだよ。ぶっ壊れてんぞこいつ。

それはそうとして田代万里生の歌のうまさにビビる。めちゃくちゃ上手くない? なんだこいつ……。

はよ映像化して

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