「教え子に脅迫されるのは犯罪ですか？ 7時間目」作者はどうやって読者に物語を届けるか
あらすじ
「わたしは、このお話が、読みたかった」
――『教え子』の物語をついに描いた天神。
その新作の宣伝のため、担当編集者から提案されたＳＮＳ運用を始めるが、一向に認知が高まらない。
ヤヤにアドバイスを求めたところ、天神の自宅にて疑似新婚生活（!?）を送る冬燕と、予測可能回避不可能なご対面を果たすことに。
たちまち勃発する大惨事冬ヤ大戦――
「もう、天くんとキスした？」
「……は？」
「ヤヤは毎日ちゅっちゅしてる」
「はあああ!?」
挙句の果てには、星花と冬燕とヤヤの三人娘が、なぜか揃って動画に出演することになってしまい……？
これは“才能の話”ではない。もっと根源的な、物語の価値についての話だ。
またしてもラノベ作家巻。やっぱりラノベ作家側のほうが比重がでかいんだな。とはいえ冒頭に、塾講師なの忘れてませんよとでも言いたげに塾講師パートがあってよかった。道源寺先生とロジカルマンがそこそこ仲よさげになっているのあんまりにも面白すぎるし、ロジカルマンが馴染んでいるのも本当に「そこ！！もっと詳しく！！」過ぎるんだよなあ。そこ、マジでもうちょい詳しく見せていただけませんか。
ロジカルマンが日向ちゃん呼ぶときに「日向先生……日向先輩……」ってちょろっと後輩の顔出しているの本当に可愛いので！！そこ！！もっと！！！詳しく！！！！
今回は、作者から読者にどうやって本を届けるかの巻だった。
初代編集が「新規で出る本の売れる売れないは全て作者ではなく、パッケージングや売り方などを含めて編集者の責任」と言っていたも正しいなと思ったけれども、今度ピンチヒッターでしべりちゃんの代打となった（星花の担当でもある）編集者の久堂は「面白いのではなく面白そうと思わせる本を」と出してくる。確かにそれもすごく大切だよな。
読者として本を買うにあたって、事前にわかるのは表紙と作者とあらすじぐらい。最近は試し読みも増えてきたけれども、ぱっと目に入るのはそのぐらい。そのあらすじの時点でぐっと掴む話にするには「面白いではなく面白そう」な本にする必要がある。
面白いかどうかが効いてくるのは、初動が動き終えて口コミが回りだしてからか、2巻以降の売上になってくる。正論ぶっぱなし野郎じゃねえか。
才能の奴隷初代編集は才能の奴隷を自称するだけあって才能ある人間に甘いけれど、久堂はしべりちゃんが冷徹人間というだけあって、冷徹に計算した上で人に届けようとしてくる。どっちが正しいとかないんだろうな、これはもう。
ツイッターっぽいツールでのアピールは、前にヤヤが言ってたとおり返報性の法則もあるし、とりあえず名前とタイトルを広めることで、ふとしたタイミングで目について買ってもらうためにも必要だ。
正直、わたしは宣伝多い作家は気軽にブロるし、感想にコメントしてくる作者も場合によってはブロるし、編集者に至ってはこの本書いたのお前じゃねえのになんで我が物ヅラしてんだでブロってるんだけれども、こういうひねくれた人間は切り捨てて、ヤヤが以前話していたとおり、それで釣れる人間を多く釣っていったほうが正しいんだろう。ついでにわたしのブロもツイッター上ではうざいからブロるだけで、それで今後買う買わないはあんまり発生しないし。例外は著者のツイッター上の発言が嫌で本を売るとかぐらい。
だから美少女3姉妹で名前を売るっていうのは確かに戦法としては有りなんだろう。
ただ、天神先生はそれを邪道なやり方だって認識していて、でもその戦法を取るハメになった自分が嫌だと思っているからこそしんどい。
お隣のあっくんさんが「気持ち悪いっすね」と表現したのを最も同意するのは間違いなく天神先生だよ。
冬燕が天神先生のサイン会に行こうとしたくだりが読んでてしんどかった。第三者の目から見て明確にわかるぐらいの人気の差が明確に見せつけられてしまうのはしんどい。
ヤヤと星花が書店にサインを書きに行ったときもなんだけど、物理的に目の前にあるものでそれらが出るとしんどいよな。けれども、本の冊数は数字であり、サイン会にわざわざ足を運んで来てくれる人は個だからこそ、ヤヤと星花サイン書きとは別方向で読者の顔を見られて天神先生が「良かった」と言えて良かった。
結局どんな面白い本だって読者のところに届かなければ意味がない。お隣のあっくんが「気持ち悪い」からの「面白かった」になったのだって読んだからだし、読者の下へ本が届かなきゃ意味なんてないんだよね。
ところで途中で天出太郎先生へ「この人のちからになれるんだったらなんだっていい」とばかりに協力してくれた星花がサイン会に赴かないのはさすがにちょっとそれはなくない？ 自分のサイン会抜けてでも会いに行くと思うんだけど、あの子。