魔法の子 (富士見ファンタジア文庫) 入江 君人
あらすじ
七十年前突如発現した人類の新しい力、魔法。
ときを同じくして、のちに“特殊災害指定生物”と名付けられる化け物達が現れ始めた―。
魔法を疎む相馬アキラは召喚領域の復活が認められ、防衛型教育都市“時島”へ連行されてしまう。
そこで妹の凛と五年ぶりの再会を果たし、自身の世話係となる桜田ノアと出会う。しかし魔法の復活を祝福するノアと衝突し、決闘することに…。
そんな中、巨大な災害が島に近づいてきて―!?
魔法の力がもたらすのは繁栄か、災いか?
少年少女の想いが交差する、現代ダークファンタジー!!
善悪のないこどもの持つ最悪の力
子どもたちは、魔法を持って生まれてくる。
例えば寒いから自らを温めるために炎を起こす魔法、熱いからと周囲の温度を劇的に下げる魔法など、人それぞれの様々な魔法。
だが、その魔法はファンタジーなものではなくむしろ恐ろしいぐらいに現実だ。寒いからと起こした炎は周囲一体をすべて焼き尽くし、温度を下げた結果周りのものはみなすべて凍りつく。
善悪を持たない赤子が放つ魔法は、どこまでも最悪で凶悪で、そして責任を取らせようとしても生まれたばかりの子供は何も理解していない。
唯一の救いはその魔法が年に10%の割合で消失していくこと。一刻も早く魔法が消えるのを願いながら子どもたちの成長を見守る大人たち。
これは、魔法が一度消失したはずなのに復活した少年の物語。
世界観が面白い。子供の頃は魔法を持っていた、というよくあるかも知れない言葉から始まってこの流れは面白い。
そして、確かに子供が魔法なんて使えたら、間違いなくその先にあるのは地獄なんだよね。善悪を持たない子供が自らの手足を振り回すように魔法を使ったら、その先にあるのはどう考えても災害だ。
魔法なんてなくなればいいという主人公と、魔法の力があればこそ状態のヒロインが、対立しよりも対話を重ねた上で理解し合い協力しあう物語はすごく良かった。互いに理由を告げて、相手の理由を尊重してくれるの、すっごく好き。
出来るし自分の意思をしっかりと持っていて能力もあるが肝心な場所で弱気になってしまうタイプのヒロインを無茶苦茶な部分もある言い分で引っ張り上げる主人公は強い。
気になるのは、一番面白いと思ったのが冒頭だったことかな。
そりゃ上記の通り中盤の展開も良かったんだけど、間違いなく一番面白いのは冒頭だった。
王女コクランの人なので結構期待してたんだけど、そこまででもなかったという感想。
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