「星美くんのプロデュース vol.1 ~陰キャでも可愛くなれますか?~」可愛いを求める女装男子と可愛くなりたい陰キャの話
あらすじ
自称“最強に可愛い”女装男子、星美次郎。道を歩けば、誰もが必ず振り返るような超絶美人。学校ではそのことを隠している彼だが、ある日隣の席の陰キャ女子・心寧四夜にバレてしまう。「秘密を守る代わりに、わたしを星美くんみたいに可愛くしてください!」唐突に始まった、心寧のプロデュース計画。彼女にメイクをしてあげたり、女の子の格好で一緒に服を選びに行ったり、スイーツ店で映える写真を撮ったり。可愛すぎる星美くんが、心寧にその心得を手取り足取り指南する。「でも、星美くんは男の子……なんだよね」ちょっと異性として意識することも……。女装男子が陰キャ女子を“可愛く”する、プロデュース系ラブコメ!
少女漫画方面にときどきたまにある、女装少年がおしゃれに興味はあるけれどもやり方がわからない少女をプロデュースする物語。
王道ストーリーな割に、最近めな骨格診断やパーソナルカラー診断などを取り入れていて面白かった。
魔王は服の着方がわからないみたいなおしゃれがわからない子にちょっとずつ教えていく物語ではあるんだけど、男性向けにあるオタク改造モノよりも、ヒロインが最低限の可愛さと服装への頓着があるのが女性の印象変化、外見改造モノっぽさがあって面白い。
男性向けだともうやべータイプのシャツ着てて、改造アドバイザーに初手から「そのシャツ最悪!」みたいに言われるのもある。でもこれはヒロインがメイクはほとんどわからないけれども服装はカジュアル系の服装っていうのが女の子だなと思った。
陰キャヒロインのキャラ造形が面白いんだよなー! 嫌な方向のリアルさがある。
馴染みのある人にだけ饒舌でそれ以外にはどもりまくりでろくに会話にならない。みんなが自分を見ているという変な自意識過剰さがあり、主人公と一緒にいるのを他人に見られるのを嫌がる。陽キャに会話のボールを投げかけられても全く打ち返せず会話にならない。会話を重ねて距離を詰めた主人公には無駄にぐいぐい来るし躊躇も容赦もない。
あまりにどこまでも距離なし陰キャとしてリアルすぎて最悪なんだよ。そんな嫌なところを異様にリアルにすな。流れ弾がこっちにまで当たったわ。
可愛いと言われても今まで培った性格ゆえに受け入れられない陰キャに、主人公が感情で「可愛い!」もいうけれども受け入れられず、そこで理論で「似合うもの」を教え込むのがうまい。
出てくる理論が今流行の骨格診断やパーソナルカラー診断といった現在よく言われているものなのでそりゃあ彼女も納得しやすいだろうなと。感情の「可愛くない」に傷つけられたことがあるからこそ、理論の「似合う」は受け入れられる。
とはいえ「似合う」ばかりを選ぶのではなく、そこから自分が求める「可愛い」を「似合う」のなかにどうやって取り入れていくかという方向に舵を切る主人公が可愛いを本気で求めているし大事にしているんだよな~~~~~~信念の男。
この主人公、面倒くさい陰キャが何を言おうとも投げ出さず諦めず『可愛い』を教えているので本当に良いやつだ。彼女との軽い会話も読んでいて楽しかった。
この二人、特段そのエピソードを互いに詳しく話しているわけじゃないんだけど、ともに信じていた人に「可愛くない」と言われた過去がある。そこでもっと可愛く!可愛いを求める人を否定しない!に進む主人公がはちゃめちゃに強すぎるし、自分は可愛くない、他人と距離を取りたい、可愛いなんてもういらないと思ってしまうヒロインもリアル。
なにかのためにの可愛くなりたいじゃなくて、自分のための可愛くなりたいで頑張る陰キャと、可愛いを求めて自分を磨くし他人が可愛くなることの協力を一切厭わない主人公のコンビがすごく可愛かった。