「日和ちゃんのお願いは絶対2 (電撃文庫)岬 鷺宮」日和の思う100倍ぐらい彼氏はお前を愛してるよ
あらすじ
俺と彼女――日和の恋は、続いている。
「お、おはよう。深春くん、卜部さん!」
腐れ縁な幼なじみの卜部絵莉。男勝りで気安くて、何の気もない彼女との交流は、それでも日和に少しずつ影を落とす。
そして日和は、俺の知らない場所で言う。
「……ねえ、わたし、邪魔かな?」
聞いてしまえば誰にも逆らえない「お願い」の力を持っていても、誰かの心を変えられても、自分までは騙せない。
海と山と坂の街、尾道。日常の中にあると思われていたこの街にも、俺と日和の、恋にも。
隠せない崩壊の足音は少しずつ近づいていき、そして――。
これは壊れたまま終われないセカイの、もしかして、最後の恋物語。
SFラブコメディ、災害到来編。
今回も日和の無事を祈る主人公・深春、セカイをより良くしていこうとするヒロイン・日和の高校生らしい恋愛模様に加えて、主人公の幼馴染である卜部も関係性に加わった物語として面白かった。
深春、日和が思うのの100倍ぐらい日和を好きな件
相変わらずセカイを良くするために駆け回る日和と、彼女の無事を待つ深春の関係性が、高校生らしくないんだけどもすごく高校生らしい関係性で良かった。好きな人が危険なことをしているのがわかっていて、でも自分は何も出来ない、でもなにかしたいってぐるぐる思い悩むの、めっちゃ青春だよ。そういう部分で深春の日和を好きっていう感情がにじみ出ていてすごく良かった。
深春、たぶん日和が想像しているのの100倍ぐらい日和のことが好きなんだよね。それって1巻の終盤で日和に記憶を消されたにも関わらず彼女に再度恋をしたことからもわかるし、今回の終盤でも日和に恋を消されても、また彼女のために走ってるんだよ。
前巻ラストで「もう深春の記憶を消さない」と約束した日和だけれども、今回は「深春と卜部が好き同士になる」というお願いを発動させて、二人を半ば無理矢理くっつけるという強行手段に出る。でも、深春は結局その違和感にちゃんと気付いて、「自分が好きなのは日和だ」と理解する。なんだよ必ず最後に愛は勝つじゃねえか。
日和は「自分が本来はくっつくはずの卜部から深春を奪ってしまった」みたいなんをずっと悩んでいるフシがあるが、なんかこれを見ているとんなことはねーよ!と強く言ってあげたくなる。2回も手を変えて恋を消されておいてそれでも好きになるの、もう何があっても好きだから、日和はうだうだぐじぐじ悩むのをやめて「この人は私を好きなんだ!」って思え!! でも思えないから優しくて気弱で真面目な日和なわけで……。
それにしても、国一つ消すぐらいの覚悟をキメさせるような日和のお願いを跳ね除けて「俺が好きなのは日和だ」に戻ってこれる深春、すごいよ。
今回の場合は「卜部を好きになる」だったので「日和を好き、だが同時に卜部にも惹かれている」という状況だったから、日和への恋愛感情は残したままなので、はねのけるというより感情が両方とも存在していたためギリギリどうにかなったというのもあるのかも。
でも、だとしても、必ず最後に愛は勝つだし、深春は日和の思う100倍日和を好きなので、ちゃんと日和はそこを認めてあげてほしい。
今回の巻において卜部はこのカップルに迷惑かけられる側だったので、何かしら良いことがあってほしい。彼女としての認識自体はフリーダムに生きてる感じだから大丈夫な気もするけど、でもカップルのはた迷惑な痴話喧嘩に巻き込まれたのは間違いないからなー。
ところで卜部へのお願いは解けたんだろうか。日和が解除されてほしいって心の底から祈ってそうだから大丈夫な気もする。
死んだ人の妹
1巻で深春を庇って死んだ牧尾さんの、自慢の妹である志保が、この巻から登場した。現状出番としてはそこまでないし、なんとなく何かを知っているんだろうなーという雰囲気だけ出ていて具体的に何をしているというわけでもないのだけれど、彼女はこの後何をしてくるんだろうな。出てきたならば何かあるだろうし。
深春視点の地の文で言われているとおり、あまり牧尾さんの言っていた妹像とは被らない部分があるんだけれども、そのあたりは何なんだろうね。