「VRMMOをカネの力で無双する」シリーズ
あらすじ
ツワブキコンツェルンの御曹司、石蕗一朗はすごいお金持ちである。ゲーム内での人捜しを手伝ってほしいとハトコの石蕗明日葉にお願いされた彼は、新世代VRMMO「ナローファンタジー・オンライン」の大地に降り立った。
しかし、すべてにおいて頂点を極めなければ気が済まない一朗は、その才能&財力を使い、ゲーム世界で無双しはじめる!
全巻読み終えて面白かったので、シリーズ全体での感想。
主人公であるイチローが、カネの力で無双する
見事にタイトル通り、わかりやすいタイトルの物語。
カネの力で無双すると言えば、簡単に思い浮かぶものとしては「チートアイテムの購入」「レベリングアイテムの購入」「超強いアイテムの購入」じゃないだろうか。
このゲームの主人公たる石蕗一朗は、実際にそういうアイテムも購入するし、最初は高レベルな自分の使用人にパワーレベリングしてもらってレベリングする。でも、『カネの力』はそういう部分に関わってくるものじゃない。
VRゲームにおいて必要なものはVRゴーグル。そしてオンラインゲームに必要なものといえばネットの通信速度。
そんなものも、お金持ちのイチローは最高級品を使っている。
ゲーム内部のものだけじゃなく外のものも良いものを使っているからお金持ち。なるほどなーという気分。そしてそれをきっちり有効活用してくるところが面白い。
1巻のラストなど、タイトル通り『カネの力』ではあるけれど、そこをそう使ってくるかー! という面白さがあった。
しかし、カネの便利な面ばかりが表に出て来るわけじゃないのも良いところ。
イチローの使用人たる桜子さんが諸事情あり超パワーレベリングをしなければならない際にカネの暗黒面へと落ちるくだりは面白かった。めちゃくちゃ笑った。というか、純粋に金持ちでカネの使い方を知っているイチローだからこそ今までまともに活用出来ていたわけで、そうじゃない人がいきなり超高額な金額使えるとなったら狂うよな……。あのあたりはよくよく考えれば当然ながらもめちゃくちゃに笑った。というか、今までそう思わせないカネの運用方法をしていたイチローがすごい。根っからの金持ちはこれだから。
アイリスの成長物語
アイリスは、ひょんなことからイチローに目をつけられ出会ってしまったデザイナー志望の少女。属性は突っ込みで苦労人、というか周囲にイチローを始めとしたやべー人々が出揃いすぎてやべー状態になっている少女。彼女の成長物語としてのこのシリーズはめちゃくちゃに面白い。
まずはイチローにデザイナーを頼まれたことで、有名ギルドの職人にケンカを売られる。まだ自分のデザインに強い自信を持てていない彼女がそんなもんにケンカを売られたらそりゃビビるしメンタル面では負けてしまう。普通の少女だしね。
続いてイチローが彼女のデザインを気に入ったことで、リアルで尊敬していて雲の上の存在だと思っていたデザイナーにケンカを売られてしまう。尊敬しているデザイナーにはどう頑張ってたってたどり着けるわけがないと想っているし彼女のデザインのほうが良いと理解している。そしてデザイナーのほうはアイリスへライバル心を持っているため自分のデザインで全力を尽くして叩き潰しに来る。
こんなん無理ゲーじゃん! と思うような状況ですら、アイリスはそれでも立ち上がり頑張って成長していく。
一体何度プライド叩き折られたか、というかアイリスのプライド叩き折り物語なのか? と若干本気で思うぐらいに、中盤の巻は延々とアイリスのメンタルが叩き折られ、そして彼女が再度立ち上がる様を眺められる。
何があっても立ち上がろうとする少女、めっちゃ良い。
ラストと最初が繋がっているって良いよね
ところで、RPGにたまによくある最初に得たアイテムがラスボスとの戦いに関わってくるってめっちゃ良いよね。それ、あります。
カネの力で無双する、それがあります。熱かった。いやーキリヒトたちがあんなに……あんなに頑張るとは……。
ネトゲのオフ会って良いよね
私はネトゲのオフ会モノがとても好き。具体的に言うとユー・ガット・メールが好き。
ああいった、本来は知らないはずの姿を偶然知ってしまうとか、ネット上のような顔が見えない場所で距離を詰めていた人たちがリアルで会う物語が大好き。
そして、ネトゲモノにありがち(?)なことに、このシリーズでも最終巻で大半のプレイヤーたちが顔を合わせるシーンがある。
今まで喋っていた相手やケンカをしていた相手が、外見はこんな人だったんだ、リアルじゃこんな人だったんだと思うシーンはやっぱり良いものだ。しかも7巻というそこそこ長い巻数を経て愛着を持った上で出会うのでなおさらに。
個人的には、そこに参加しない人がいる、というのがまた良い。
キングが参加しないのはわかっていたけれども良いものだ。なにより、彼女はイチローには素顔を見せているが、他多数のプレイヤーたちには会わないでいるというのがまたなんとも神秘性もありなおかつ彼女らしさもありでとても良かった。
本当に面白いシリーズだった、という話をしたいだけの記事だった。