「隣の女のおかげでいつの間にか大学生活が楽しくなっていた」大学3年(成人)でぼっちの主人公に突然話しかけだした美人の異性、何故この流れで勧誘が始まらないのだ
隣の女のおかげでいつの間にか大学生活が楽しくなっていた(1)
あらすじ
ぼっちな大学生と華やかな美女が紡ぐ、心温まる歩み寄りの物語。
第4回カクヨムWeb小説コンテスト・ラブコメ部門<特別賞>受賞作。
「ここ、空いてますよね。よかったら座らせてくれませんか?」
常に独りで勉学に励む大学三年生・佐々木健斗。そんな彼の隣の席に、突然一人の美女・伊藤奈月が現れた。――そして、奈月の存在により健斗の人生は少しずつ色づき始める。
『間接キスとか意識した?』『君の連絡先教えてよ』『今度はお泊まりしたいなぁ』『健斗とは……ちゃんと仲良くなりたい』
女性に不慣れな健斗に対し、何故か積極的にアプローチする奈月。ゆっくりと、でも確実に2人の距離は縮まっていき――これは、不器用で優しさを見せようとしない青年と、その隠れた優しさを見つけた美女との、歩み寄りの物語。
いつ勧誘が始まるのかとハラハラしながら読んでいた
読んでて正直、ずっといつ勧誘が始まるかとハラハラしていた。
自称コミュ障ながらも実際は初対面女子と空気が悪くならない程度に会話できて、相手のフォローも出来るような主人公。なのに何故かぼっちな主人公が大学3年生になって最初の授業で何故か隣に座ってきたのは、美人のコミュ強っぽい女子。彼女は何故か主人公に話しかけてくるし、それは1回だけではなく次の授業もその次の授業も続いていく。全く見知らぬ女子ながらも話しかけてくる彼女とだらだらだべったり少しずつ仲良くなったりする。
大学3年、つまりいくら誕生日が遅くても20歳以上。この本が発行されたのは2020年。確実に成人しているということは、契約系の諸問題に親が出てきづらくなっているということ。
3年にもなってろくに喋る友達もいないぼっち(にしてはコミュ力めっちゃあるけど)、そこに距離を詰めてくる美人の異性。どう考えても勧誘だろうが。宗教か販売かしらんが絶対に勧誘だろうが。ぼっちで他の人との情報ネットワークが無いのを良いことに何かしらに引き込むための勧誘だろうが。
ちなみに実習でちょっとしたことから主人公に懐いて「異性と連絡先交換するのは初めてです」などと言ってくる外見おとなしい系で優等生な子もいる。「名前を呼んでほしい」「もっとたくさんメッセージアプリで連絡をとって欲しい」と他に異性に興味はありません顔をして距離を縮めてくるあたり、こっちもなにかの勧誘目当て臭さがある。
まあラノベなのでそんなことはなく、サブヒロは違うとしてもメインヒロインは主人公にとっては見知らぬ異性であっても実際は過去に彼女のほうが主人公を認識していて主人公と仲良くなりたいと思っていたからこそ3年に進級したのをきっかけに距離を詰めてきたんだろうなというのは察せられるんだけれども、大学3年という時期、ぼっちな主人公(※ただし会話を見る限りコミュ強 これはラノベあるあるだけれども)、突然話しかけてくる異性というあまりに役満。読みながら妙にドキドキハラハラしてしまった。
だらだらとしていてこの先につながるわけじゃないエピソードがただ積み重なってくだけを読むのはきっつい
中身はあらすじの通り、主人公とヒロインが大学の授業で隣になりお喋りしたりノートを写させてもらったり軽口をたたきあったりするという交流を通して徐々に距離を縮めていくというお話。
ただこれ、読むのきっっっつい。
なろうやカクヨムで1話1話アップされて読む数千字なら気軽に読めて良いのかもしれないけれども、1冊としてまとめて10万字近く読むのはきっっっっっつい。数千字だったら「今日の二人はこんなかんじか~」と思えるんだけれども、文庫本サイズで1冊で読むんだと、物語は進んでんのか進んでねーのかわかんないし、このエピソード後半で意味あるわけ? 絶対ないよな? というのが延々と繰り返されるし、ギャルゲのイベントが積み重なって無限に読まされているだけに思える。
書籍化する際にはせめて物語を起承転結つけてくれないものなのかな。ここぞ山場! ってところが存在してくれないものだろうか。
たとえばこの本だったら二人で同衾するあたりをもっと山場にしてくれてもいいと思うんだけど、だったらもうちょっと盛り上げてほしいじゃん。二人のドキドキを出してほしいじゃん。そうじゃなくて二人が互いに知らないところで過去にこういうことがありました~それで興味を持ちました~と回想するか、こいつのお陰で他人と一緒にいるの楽しいと知りました~一緒にいてくれてありがとうな~と頭の中で言うだけかで、全く面白みが無かった。
例えばせめて主人公側のそれがヒロインに聞かれちゃってヒロインがそれを意識しちゃって、どうなる2巻!という流れも出来るのに、ただ無で終わるだけだった。
ウェブっていう、区切りもなくやろうと思えばだらだら引き伸ばせる日常系で頻度高く毎日更新だったらこれでも全然良いだろうけれども、1冊っていう区切りがある状態ならば山場が欲しかった。
主人公、なんでぼっちなの
ところで、主人公はひたすらぼっちだぼっちだ童貞だと繰り返されていたけれども、読んでいてなんで? と思ってしまった。
これはラノベあるあるのそういうものだと言われればそうなんだけれども、彼は実習でペアになった女子とも普通に会話出来るし距離無しでもない。なにかあったら相手を気遣えるし、メインヒロインが実習で困っていたら手を差し伸べようとする。むしろメインヒロインとペアになった男子のほうが距離無しで空気読めずうざいと表現されている。
確かに自らぐいぐい行かないとしても、主人公は主人公で空気読める勢として実習でペアになった子だとかノートの写しさせてくれた誰かだとか、そういう相手と今まで2年間の間に普通に友達になってそうな人なんだよね。なのにぼっちなの、意図的なぼっちか? と思いきやヒロインが来ても拒否んないし、本当にひたすら意味がわかんなかった。キャラの設定とそこからなる性格と立場が全部ちぐはぐで、読んでて何度か首を傾げた。
隣の女のおかげでいつの間にか大学生活が楽しくなっていた(1)