「嘘と詐欺と異能学園」無能力者による口八丁手八丁のジャイアントキリング
あらすじ
無能力の最強詐欺師がエリート異能学園で成り上がる。 究極の知略バトル!
国中から集まったエリート異能力者が日々熾烈な競争を繰り広げるハイベルク国立特異能力者養成学校。
無能力者なのにもかかわらず入学試験を突破した天才詐欺師のジンは、〈災禍の女王〉と恐れられる少女・ニーナと出会う。実は彼女も、天才的な演技で周囲を騙し続けてきた無能力者だった。
お互いの秘密を共有した二人は、学園の頂点を目指すため共犯関係を結び、エリート異能力者たちを策略にハメていく――。
「俺とあんたが組めば、世界すら騙し通せる」
最強の嘘吐きたちがあなたを魅了する、究極の“騙し合い”エンターテインメント。
シリーズ
あーーー好き、こんなんめちゃくちゃ好き、大好き。超面白かった。
能力のない人が能力のある人に勝つ物語は絶対に面白い
戦闘能力的に最下位というかそもそも戦闘能力自体がない主人公が、それを隠して異能を持った人間たちを片っ端から倒していくという展開が面白くないわけがない。無能なナナとかそっち系のカテゴリの物語。
主人公が息を吐くように嘘をつくので日常のシーンからも詐術のうまさやこいつの言葉は信じてはいけないと思わされて面白い。こういうキャラすごい好き。信じやすい騙されやすいエマに対しては流石に騙し過ぎではとちょっと罪悪感持っちゃってるシーンもあるあたり、完全に悪い人じゃないのがわかるからこそなおさらに好感度が上がっていく。
主人公は異能は所持していないものの、異能持ちたちの集まる学園に入り込み、ばれないようにうまく立ち回り異能があるかのように見せつけていく。その方法が下準備は必要なれど全部しっかり堅実に行われている。知恵と頭脳と詐術でぎりぎりのラインを駆け抜けていく物語、面白くないわけがない。
主人公の味方にいるのが造園業者さん(育ての親の詐欺師の知り合い)なので、必然的に山中や森などを利用したギミックになるの、面白いしたしかになー! 今までそういうところでやっていくのも多かったんだろうな。とはいえこの造園業者さん、やってることがチートである。チートを持たない主人公だが、ある意味この造園業者さんが所持チートかもしれん。
無双チートよりも、こういう普通に考えて無理なのをひっくり返すジャイアントキリング的な物語が好きなのでドツボった。
同類であるヒロインの魅力
能力者しか生きていけないような家で暮らしていたために能力者を装うこととなり、なんなら偶然を味方につけ、演技力を磨きまくり、結果的に演技という詐術でここまでのし上がってきたヒロイン。人の心がない化け物を装っていながらも本心はそこまで化け物なわけじゃない普通の女の子っていうのが熱い。
最初のうちは自分は人を騙すのを面白がっているわけじゃないという自認の彼女だけれど、いや言うてお前結構楽しいだろ? 人のまえで演じて他人を自分の演技にうまく巻き込むの好きだろ? と思わせるシーンが入ってくるところがうまい。幼い頃に見た演劇から演技に興味を持ち始めたというヒロイン、それで人を欺く(という言い方はちょっときついけれども)楽しさを心に刻まれてしまったんだろうな。
本人の自認としては演技がある程度できるだけ、というけれども、七色どころじゃない声を使いわけたり変装技術が詐欺師の主人公すら見抜けないレベルだったり気配を消したりメソッド演技で人格ごと変えちゃったりと完全に化け物なのよ。
二人の協力関係が良い
協力というか共存というか、互いの弱みを握り合っていることから始まった割に、双方が自分と同じものを相手に見ているが故にさほど敵対という感じがない。最初からそこそこの信頼関係があるコンビというのが面白かった。
主人公の飄々としてウソばかり混ざった会話にヒロインが突っ込み入れつつ振り回されて、でもふたりとも良いテンポでやりあっているのが面白かった。恋愛関連で主人公が茶化せば慣れてないヒロインがたじたじになるのも可愛い。現状は絶対に恋愛になりそうにないが、もしかしたらもしかしたらがあるかもしれない雰囲気の男女バディ、良いな……。
詐欺っていうのは一種の演技で、こうなる・こうするという大まかなあらすじに乗っかってエチュードを繰り返すようなもの。詐欺師である主人公が描いた脚本を今まで主人公一人が演じてきたわけだけど、演技力の化け物であるヒロインが加われば、二人の作り出す演劇はもうめちゃくちゃにレベルアップするし、どんどん色んな人を役者として観客として巻き込んで進んでいく。
この先どうなるかめっちゃ楽しみ。