「嘘と詐欺と異能学園3」駆け足ながらも良いシリーズ完結巻

★★★★☆,電撃文庫バディ,ファンタジー,学園,男女バディ

嘘と詐欺と異能学園3

嘘と詐欺と異能学園3

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あらすじ

無能力者でありながら嘘と詐欺だけで異能学園の怪物たちと渡りあってきたジンとニーナ。激闘の末学園の秘密に近付いた矢先、突如として特務機関〈白の騎士団〉のメンバーにしてニーナの実兄・ハイネが担任教師として赴任してくる。
 ハイネに殺された養父ラスティの意志を継いだジンたちは、ハイネが結成した自警団に参加しつつ、裏では彼を陥れるという最高難度の信用詐欺に挑むことに。
 無敵の特異能力を持ちながら嘘や策略でもジンを圧倒する最強の敵に、果たして立ち向かう術はあるのだろうか…!?
 究極の“騙し合い”エンターテインメント、最終章!

シリーズ

面白かったー! 1巻2巻で期待したものをそのまま引っ張って完結してくれた。こういう話、めっちゃ好き。
なんとなく伏線の残し方や性急な風呂敷のたたみ方からして打ち切りかなとも感じられたけれども、異能学園の物語と考えると正しい終わり方かも。下手に間延びするよりは、3巻でぱしっと完結の形で終わって良かった。

いやこの巻、キャスパー! キャスパーがここまで良いキャラになると思った人いる!? いないでしょ!! 最後の最後まで良いポジションで出張ってくるとは思わなかった。
思わなかったけど、かなり物語的に便利に利用されているなとは感じた。無能力者二人の真実についてはちゃんとは知らされないまま、女子とのデートなどを餌にすれば(今回はそういうのナシでも動いてくれそうな感じはあるけれども)いくらでも動いてくれる。能力自体は殺傷能力は無いけれどもほぼチート級に便利なもの。キャスパーがいなかったらありとあらゆる作戦が崩壊していた気がする。
ついでに言うと、1巻でうまいこと買収された教師も無限に言いように使われまくっている。このあたりは流石に無理がないかと首をひねった。

物語において、ジンの信条がそうであるというのはあるけれども、だいたいの物事は事前に仕込まれていて、読者の知らないところで全ての処理が終わっているから読者は見抜くのが不可能という形になっているの、ちょっとずるいなあと感じてしまう。今回はハイネの契約書がすでに作成されていたし、そのためにキャスパーの父親はとうのむかしに手駒になっていたあたり。
事後諸葛亮! 事後諸葛亮! って言いたくなっちゃうんだよな、そういうところ。でもこの味は1巻から変わってないので、むしろ文句をいうほうがおかしいとはわかる。
それに、今回庭師のおっさんがたやすく死んだことで、それだけ無能力者と能力者が対等に渡り合うのが難しいんだなと改めて感じた。

今回の敵はニーナの実兄でありジンの仇敵であるハイネ。ハイネがあまりに強すぎるあまりに、どうやって二人が無能力者だとバレずに倒すか?→バレた上でどのように倒すか?っていうようにハラハラが移行していくのおもしれー!
実際のところいままでニーナが能力がないにもかかわらず実家にいたときに勘違いされていた理由としてハイネが関わっていたの、確かに~~!!となった。全部掌の上っていうのは絶望感がすごい。
逆転劇のニーナとジンの入れ替わりは条件が判明した時点でもしかして?と想像できていたものの、とはいえ実兄すら見抜けないニーナの変装術がすげえ格好良かった。

ニーナが詐欺師としてどんどん成長していくさまを読んでいくのが面白いシリーズだった。最初のうちはちょっと変装と演技と声色を変えるのがうまいくらいだった少女が、どんどん成長していき、最後には強敵である実兄すら欺くぐらいになる。思考も詐欺師に影響されて、徐々に他人を欺いたり詐欺師だったらどう考えるかという思考トレースが出来るようになる。彼女の成長物語として格好良かった。
そして、彼女という最強の役者を活かすためには、ジンの作った台本が必要というのがめっちゃ良い。二人はニコイチ。二人の協力関係があるからこそ出来上がる共犯者な男女バディはめっちゃ良いよー!!
二人の最後が明確な恋愛とならないままに終わったのがすごく好きかもしれない。うっすらとした恋心みたいなものは描写されていたから決着をつけていないといえるかもしれないけれども、二人はこのぐらいの共犯者の距離感が良かった。
だからこそ、二人が最後に共犯者として生きていく、二人の詐欺師として生きていくと決めたシーンが好き。ジンがニーナに家というものにもう縛られない道を指し示したの、めっちゃ格好良かったよ。

短いからこそさくっと読める、良いシリーズだった。

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