「教え子に脅迫されるのは犯罪ですか？ 2時間目」斜に構えて皮肉げな物言いだけど実際は職務に熱を持つ男、みんな好きだろ。
あらすじ
「夏は水着の小学生に限る」と綴ったのは清少納言である――。
中高受験指導塾で働く塾講師・天神の夏は忙しい。
プールでスクール水着やおしゃま水着のＪＳ（10歳）に密着されたり、某クソ悪魔さん（14歳→15歳・ＪＣ）の誕生日で“初めて”を奪ったり、真夜中に全裸のパジャマパーティに侵入したり、社会的に綱渡りのお仕事ばかり。
そんな中、現れたのは――
「生徒にリアルな愛情を抱いていると公言できる？」「できないが？」「はいクソザコロリコン」
――ちょっぴり辛辣な北欧天使ちゃん（14歳・ＪＣ）！新しい教え子には、秘密がふたつ…!?
子供を愛する全ての大人に捧ぐ、ガチでリアルなお仕事×年の差ラブコメ、夏合宿編の第二弾！
1巻はこちら。
https://houchi.work/wordpress/4636/こういう主人公みたいに、斜に構えて物事を嫌そうにしているし一人称になっている地の文では子供を嫌いみたいに言っていながらも、実際の行動では子供のために親身になって必死に駆けずり回っていて、でもそれを本人に伝えたらものすごく嫌そうな顔をして否定してくるか薄ら笑いであーはいはいそうそうって言ってきそうなキャラ、そんなん好きになるしか無いんだよなあ……と改めて思った巻だった。
読者にすら明かしたくないし本人だって絶対に認めたくないけれども、主人公って今回も子どもたちのために必死なってるじゃん。冒頭で鶉野姉妹の姉が羞恥ポエムノート見られて飛び降りキメそうなときだって、自分がお茶の間の話題になるんだよなあ！って内心思いつつも助ける、という描写だけれども、たぶん他に誰もいない自殺の名所でも助けちゃうんだよ。相手がある程度誰だって。それをシニカルな物言いと年を取るに従って得てしまったのだろう諦念で誤魔化しているのが、あーもうこんなん好きにならずにはいられない。
今回のヒロインは鶉野姉妹・姉。合併となった他の塾から転入してきた妹が塾に馴染めているか、そしてカンニング疑惑を持たれているのでそれに対抗して守るために、合宿に乗り込んできた。彼女に振り回されていくお話。
振り回されているし脅迫されている形ではあるんだけれども実際のところ全然そうじゃないっていうか、鶉野姉を一段高い位置から見下ろして、ここはこうしておくのが最善だからとりあえずこうしておこう、最悪の場合はどうにか出来るから、って思っている大人の立場でしかない。それを見せずに話して協力しているように見せかける大人のずるさと、脅迫している自分のほうが上！と思い込んでいる中学生の幼さが同時に描かれるシーン、主人公の視野の広さとたちの悪さにうわっとなった。
とはいえ、最終的に助けるために、自分にだって言い訳しながら助けてしまうあたり、そうやって『なにかあったらどうにでもしてやれるし、今こうして協力するふりをしているのはこの子供をうまく動かすための建前である』という思考すら自分への言い訳でしかない。いや、そういうひねくれたキャラ、みんな好きでしょ。自分にすら嘘ついて論理的にひねくれたキャラ、みんなだいすきでしょ。
今回は最後で物語がひっくり返る瞬間が美しかった。いじめられていたと姉が認識していた妹は実際はむしろクラスのまとめ役。いじめられていたというよりも周囲の輪に入れなかったのは姉で、学校に行けていなかったのも姉。合宿に乗り込んできたのは自分が夏休みの行き場がないから。妹を守るという立場でいれば、自分は可哀想ないじめられっ子ではなくなる。
モンペ気味な姉っていうキャラクターがくるっと回った瞬間がすごいぐっと来たしぞっとした。
主人公が、ロリコンwwwwwみたいなノリにしてるけど俺はロリコンじゃないですよ？小学生は最高だなあ！なノリなのがすごい露悪的かつ嫌な感じで好き。
実際、天神先生は子供に言い寄られても絶対なびかないだろうなって思わされる。小学生は言わずもがな、一応正ヒロイン？みたいな気がする中学生だってそういうのはない。出るところ出てるなあという描写が、マネキンの出るところ出てるなあみたいに、そういう部分に性的な魅力をマジで感じてねえんだなこいつって思わされる。
教え子自体がもうそういう対象じゃないんだろうな。教え子たちが自分に向けている感情は、子どもたちを効率的にコントロールするために好感を持たれるように自分が仕向けたものであり、本心からの本物の好意ではないって思い込んでる。だからこそ元教え子のシャークすらルートに入れなさそうな感じある。
論理的と言えば今回出てきたロジカルマン、てっきり本名隠してるんだからシャークと同じく誰かの関係者と思いきや、普通にロジカルな人だった。いや、今後やっぱり誰かの関係者なオチは全然あると思う。今回出なかっただけな気もする。
それはそうとして、主人公が全く違う信念を持っていた過去をしり、その頃の主人公を好ましく思っていた男、めっちゃ美味しそうな味がします。大変今後が気になるキャラだった。