「二番目な僕と一番の彼女」前半のイベントスキップしないで
あらすじ
誰かの“二番目”でいい。キミの“一番”なら。
誰とでも気軽に話せて絶大な人気を誇る美少女・南野千夏。
彼女と知り合った高校一年の秋から、同姓同名のイケメンの陰で同級生から“二番”と呼ばれている僕の生活は変わり始めた。
「“二番”なんかじゃないし。……うちが初めてキスしたいって思うんだから」
南野とは学校以外でも会うようになった。
放課後はストリートバスケに一緒に行って、一緒にご飯を作って、二人だけの秘密を話して、触れあって。
独りでいいはずだったのに、彼女は僕を認めて、あいしてくれる。
だから僕も、それを返したいって思うんだ。
当たり前の願いが当たり前に尊いと気付く、青春恋愛小説。
中盤~終盤の展開は好きなんだけど、前半の展開が好みじゃなくてどうにもうーん……となってしまっ3た。
イベントが華麗にスキップされる前半と、イベントが描かれる中盤~終盤
しゃがみこんでいるクラスメイトの千夏に声をかけたところ、彼女は捨てられた子猫を見つけてどうしようか困っている最中だった。子猫を連れて行く病院を手配し子猫を自宅で保護すると決めて、自宅へ猫を連れ帰り、ついでについてきた千夏に「自分を偽って生きている」と指摘したところ、彼女の身の上話が始まる。からの、猫を見るという目的で千夏は主人公ハジメの家の合鍵を受け取り、夕食も家でごちそうになる日々となる。
という流れの、身の上話までは書かれてるんだけど、ぬるっと合鍵受け取ってそのうち家によく出入りするようになり気付いたら一緒に夕食食べるような仲になっていた。
どっちかっていうと、今までの状況→なにかイベント→それによる変化が描かれるっていう流れが好きだからこそ、前半のイベントとにかくスキップして、3分クッキングのように「はい!こちら色々あって合鍵を受け取って家に来るようになった千夏です!」「はい!こちら夕食も普通に食べるようになった千夏です!」とお出しされても乗り切れなかった。
家に来ても子猫はたいていずっと寝ている、つまりほとんど二人一緒にいるだけ、って言うんだったら、その二人一緒にいるときにどういうことしてるか見せてくれよ! 気付いたら千夏の好感度が100ポイントぐらい上がってて、気付いたら距離感がめちゃくちゃ近くなってて、なんだこれは……となった。
このあたりはわたしがイベントが発生して変化する二人っていう描写がすごく好きだからこそ、スキップされまくったのが気になったんだと思う。
逆に中盤で二人でキスしてしまってから~終盤の父親との邂逅と敵対あたりはすごく好き。
キスしてしまって、ハジメの側からはどう会話していいかわからなくなったけれども、千夏は普段と変わらず声をかけてくれたので安心して会話ができる。一緒にクレープ食べに行ったところでクレープが間接キスなんじゃないかとドキドキする。今までハジメの家で二人っきりでも特段そこまで意識していなかったけれど、キスの後に千夏の家で二人っきりのときはドキドキする。そういう、キスしたことで距離感が変わった二人っていう描写がすごく可愛かった。
「うち、初めてだからね! いい? 佐藤は凄いの! うちが初めてキスしたいって思うくらい凄いの!」
これめちゃくちゃかわいくて、読んでて最高~~~!!ってなった。とっさにキスしちゃって、それをなんとか取り繕おうとしたのかな。取り繕おうとした結果、好きだからとかじゃなくて初めてキスしたいと思ったぐらい凄いっていう方向に行くのも可愛いし、それってもう好きじゃん!好きって言ってるようなものじゃん!ってめちゃくちゃアガった。こんなん可愛いよ。
こういうノリで合鍵を渡したあと初めて家に来る千夏の描写が見たかったんだよ!!そういうのが見たかったんだよ!!わたしは!!
千夏の「他人に平等」の設定が設定としてしか存在してない
これは普通に悪口です。
外見が美少女だからと異性からは関心を持たれ、同性はさっさと誰かとくっついてくれとばかりに異性を勧めてくるのでとりあえず付き合うものの相手がグイグイ来るのが嫌で別れ、けれども最初にループしてまた誰かと付き合うというのを繰り返してビッチ扱い。そういったあれこれが嫌だからと、クラスでNo.1人気男子だろうと1回も会話したことない男子だろうとすべて平等に同じように扱うと決めた。
という設定があるはずなんだけど、そんな千夏、めちゃくちゃハジメだけ贔屓してくる。主人公に対してだけ態度が違う。というか処世術としての猫かぶりを出来ているシーン自体殆ど無い。
割と早々に、千夏が友人としている会話のなかで友人がハジメを「2番くん」扱いするのを聞いたら、それに真っ向から反論してそういう言い方は良くないと言う。ハジメに連れて行かれたストバスの現場でも猫をかぶれていないし、少し経つとハジメとの関係どうなったの?と周囲から訊かれるようになる程度に表に出しちゃう。母親にも即バレする。ハジメを悪く言う過去の知り合いにも速攻で啖呵を切る。
誰にでも平等だし同じように接しているように見える、っていう設定がまるで機能してないシーンばかり見ているので、本当に千夏って他人の前だと猫かぶれてるの?って思ってしまった。作中で出てくるシーン、全部ハジメを特別扱いしているよ。
こういうのって、すごい表現がアレなんだけど、超絶強い女騎士が悪人に捕まり快楽堕ちしてよわよわっていうシチュエーションは、超絶強い女騎士部分がわからないと雑魚女騎士が簡単に落ちてしまっているのと何ら変わらないんだよ。強い女騎士が堕ちるという部分に興奮するのに、女騎士の強さを見せてくれなきゃ興奮ポイントが無いんだよ。女騎士がオークぶっ倒したり大量の敵を薙ぎ払って無双している部分がほしいんだよ。
それと同じで、こういうタイプのお話の場合、他の人の前では誰もかも平等に扱っているカースト上位の女子が、主人公を知るにつれて主人公だけを贔屓してしまうっていうのが見たい。わたしは。
でも、千夏が他人を平等に扱っているシーン自体が無いので彼女がそういうふうに他人と接しているっていうのは冒頭に出てきたハジメの台詞とそういうふうにしているんだよという千夏の開示トークでしかわからない。なので、誰をも平等に扱う女子ではなく、好きな人は特別扱いしまくる系女子としか思えなかった。
それにハジメに関しても『佐藤一という同姓同名の男子がいて、そっちはイケメンでスポーツ万能だけど、主人公の一はフツメンで秀でた部分もない。だから2番目』という設定部分はまるで生きてなかったなと。そっちの佐藤一くんが出てくるならなんかあったかもだけど、もう一人の佐藤一がまるで出てこねえ。
どっちかっていうと設定的にはハジメの場合は家族が死んで妹の人工呼吸器止めるのを選び、少しでも楽になりたくて友人と思ってた相手に話したところ拡散されて地獄見たのほうがデカいし、作中でも「親の顔が見たい」といわれて「もういっかい見たいよ」って内心思ってるあたりなんかは設定の使い方がうめーってなった。