「やり直し令嬢は竜帝陛下を攻略中2」弱体化しても愛がでっかいジルがかっこいい
あらすじ
人生2周目の令嬢・ジル。婚約者・ハディスと都へ戻ると皇族軍が待ち受けていた!? 家族の裏切り、やはり破滅の未来は避けられないのか。なのにハディスはこれ幸いとスローライフを満喫中……ってダメです、陛下! 国を追われるハディスに代わり騎士団に潜入したジルは彼が『呪われた皇帝』と呼ばれる本当の意味を知る――「わたしが守ってあげますからね」もう一人ぼっちじゃない。本物の"夫婦"になるために人生やり直し!
帝都へと向かったところ、ハディスは偽帝だと追い払われ、そこから逃亡生活……と思わせてニコニコスローライフが始まったり、おうちで家庭菜園をしつつご飯を作ってお嫁さんの帰りを待つ竜帝陛下(19歳)と竜騎士団に入ってお金を稼ぎに行く竜妃(10歳)からなる巻。なんかおかしいぞ。なんかおかしいけどテンポが良いし面白いしするする読んでしまうけど何かがおかしいぞ。
ハディスとジルのラブコメ可愛い
もうラブコメってはっきり言える関係性になった二人がとにかくかわいい。ジルにお弁当を作って渡してジルの帰りを美味しいご飯を作って待つハディスも、じっとしてられないしハディスのために情報集めたいしで竜騎士団に入るのを選び、疲れて帰宅してハディスに抱きついて甘えたりするジルも、もうどっちもめちゃくちゃ可愛い。完全に夫婦です。
ジルがハディスに甘えるのをためらわなくなったあたり、二人の関係が進展したなーって感じがある。騎士団から帰ってきてハディスに抱きついて甘えたあたりが顕著で、1巻の関係性だったらもう少しためらっていたところを、ジルが迷わなくなった。ハディスももう完全にジルを囮とかそういうの忘れて甘えるわ甘えるわで可愛い。
おまけでも書かれていたけれども、この巻においてのハディス→ジルの行動って、大抵が甘えっぽくてすごく微笑ましい。抱きついてみたり膝に乗せてみたり頭をなでてもらったりととにかく甘え倒したい。そしてジルもジルでハディスが家族の愛が足りてなかったりしたのを理解しているので、そうされると甘やかしちゃう。面倒なツンデレ発揮したりせず、きっちり甘やかしてくれるところ、ジルって良いお嫁さんだなと笑っちゃう。お嫁さんっていいつつめちゃくちゃ戦闘力高いし料理類は完全にハディスがやってるのでお嫁さん(性別的呼称)(ハディスがそう呼びたいから呼んでいる)って感じだけど。
このハディスの「お嫁さん」発言や「幸せ家族計画」あたりの発言は、すごくラーヴェの育て方を感じる。ハディスが人間ってものに絶望しないですむように、家族ってあったかいぞとか、女神の嫌がらせがなくなったらきっとお前は愛されるとか、お嫁さんってお前のことを愛してくれるんだとか、夢物語みたいなものを話していたんだろうな。1巻でラーヴェにいわれているとおり薄々疑ってはいるけれどもそれでもハディスはこころの何処かでそれを望んでいたからこそジルに対して「お嫁さん!!」ってテンションで愛を注ぎまくるし、兄弟たちにも期待をしていた。
この悲惨な環境でもハディスが他人を期待して信じようとできるのは間違いなくラーヴェの教育の賜物だよ。ラーヴェ、お前がこの作品No.1パパだ。ジルとハディスの間に子が出来た場合はぜひとも教育係になってくれ。
ジルがハディスの「お嫁さん!!」の圧に負けないどころか受け止めて幸せにすると言いきり、絶対的に味方になることを選び、実際に幸せ家族計画も叶えてあげようとするようなメンタルフィジカルめちゃ強で本当に良かったよ。どんな問題もジルが力技と精神技でぶち折ってくれるって信じて読めるから安心できる。
ジルがただの脳筋で力技ですべてを解決するというわけではないのも良い。いや力技は多いけれども、その前にきちんと思考をめぐらし相手の策を見抜こうとする。ジルだけじゃなくてハディスや今回ではロレンス、フェイリス、敵であるゲオルグなど、それぞれが何かしらの思惑があり、己の求めるものを得るために思考をめぐらし策を立案し誰かを罠にかけて思う通りにやろうとして生きている。個々人が舞台装置じゃなくて生きてるーって感じあって好き。
しかし、ジルとハディスがいちゃついているさま、傍から見たら10歳と19歳である。一部の人は16歳姿にうっすら気付いているけれど。
ものすごくおしまいの絵面だな。
ハディスの姉兄たち関係、良
今回の巻で出てきた、ハディスの半分血の繋がった姉と兄であるエリンツィアとリステアード。この2人がどちらも家族というものに対して情が篤い人であり、それぞれの信念と正義を持っていて、それにそって行動しているのがわかって良かった。
とくにリステアード、まじで本当にめっちゃ良かった~~!! ハディスより2ヶ月年上だから兄上と呼べと言うし、なんだかんだでハディスのことちゃんと心配してるのが言葉や行動の端々から溢れ出ていてニヤニヤした。そんでもって幸せ家族計画を掲げているハディスはそういうのに弱いので、ジルによってリステアードの微ツンデレ発言を翻訳されて真意を告げられると照れて挙動不審になるのも可愛い。どんだけ嬉しいんだお前は。
リステアードは青い。青臭すぎて愛嬌溢れちゃってるぐらいに青い。だからこそ自分の兄の死についてああもはっきりと信念掲げて言い切れるし、最終的にエリンツィアが敵対したときに迷わずハディスの側についてくれたんだろうなって思える。
しかし、ハディスが血筋が違って母親の浮気相手こそが竜帝の血筋だとすれば、それはそれで大問題だしハディスが悲惨。
とはいえそこらへんの「幸せ家族計画を目指していたのに誰も本当は自分の家族じゃなかった」をジルが「だったら私が10人子を産んで、リステアードやエリンツィアと結婚させましょう! それでみんな血が繋がってなくとも家族です!」で解決するの、あまりにも力技すぎてちょっと笑っちゃった。ハディスのお嫁さんが強すぎる。
明確に見えてきた敵
1巻では女神が敵だろうとはわかっていたけれども、そのさきにあった果たして誰が女神の器なのか問題。14歳以上の女性の体に入ることができるとしても、そもそもの器は一体誰なのか?という問題にようやく答えが出た。
しかし、フェイリスが器ということは兄であるジェラルドもおそらく知っていると思うし、フェイリスは女神の望み通りにするために動いているのか? なんとなく14歳になったら彼女は体を女神に乗っ取られる説が出てきているが、本当に乗っ取られるのか、それともハディスとラーヴェのように共存になるのか? 妹第一らしい兄のジェラルドは何を考えてどういう思惑でいるのか? みたいな細かい謎がぽこぽこ湧いてきて、この先どうなるか楽しみ。