「すまん! クラスで人気の文学少女がスカートを短くしたのはオレのせいだ (ファンタジア文庫)ヰ森 奇恋」パブリックイメージからの脱却の物語
あらすじ
清楚な女の子がスカートを短くしたのは俺のせいだ
――こいつ、女殴ってそうな男だな。……と、オレは周りから思われている。実際は普通極まりない一般人なのだが 「理比斗くんのおかげでオトナになれました!」 クラスで人気の文学少女・葉桜の一言で一変した!
文学少女のパブリックイメージを押しつけられていた少女が自身のパブリックイメージから抜け出すための話であり、女殴ってそうという印象を持たれていた主人公がそれを抜け出す話でもある。他者から向けられた印象から脱出する話としては面白かったんだけど、ラブコメとして見るとヒロインがアホの子かつ都合の良い子すぎてなんだかなーと思ってしまった。でも本当にパブリックイメージからの脱出の物語としては面白かった。
押しつけられたイメージからの脱出
文学少女のイメージを押し付けられている葉桜が、女殴ってそうというイメージ押し付けられている主人公と仲良くなって文学少女から脱していくのは読んでて応援できたし、最終的に主人公も女殴ってそうイメージから脱せて良かった。
「文学少女のままだと、私はずっと置いてけぼりだから……」と言う葉桜の、「だから、私はメガネをかけて、三つ編みにして、スカートを長くしたんです。みんなが求める文学少女に自分を近づけるために」「幻滅されたくなかったから」と他人が自分に押しつけてくるパブリックイメージを演じようとして、でも本当は食いしん坊でオトナなことに憧れがある普通の女の子という内面との差に辛くなっちゃってるの、読んでて痛々しかった。だからこそ確固たる自己をもって生きている主人公の理比斗に憧れ、彼を師匠とするの、わかる~~!!
デブが食いしん坊キャラを求められるように、非関西地域で関西弁がお笑いキャラを求められるように、外見やその他特徴のせいで何らかのキャラクターを求められ、良い人であったり他の人から好かれたいがためにそのキャラクターを演じようとするのって、誰しも少しはあると思う。だからこそあるよな~~!!ってすごく刺さった。
ただ、その確固たる個を持ってるように葉桜からは見えていた理比斗も、他者から押しつけられた女殴ってそうっていう印象によって距離をとられたりしているわけで。
この女殴ってそうっていう概念、自体が知らんもんだったので検索したけど、微陰キャ優男ホスト風って感じで良いのかな。外見に気遣っているけれども一昔前のヤンキー風外見のように見かけで判断される(けれどもイケメン)概念、美味しいとこてんこ盛りでおもしろ。ただのヤンキーよりは随分と良いかっこですね。
ただこの話、パブリックイメージの押しつけで苦しんでいる人だけじゃないのが良い。途中で出て来たギャルのひめマユは、恋愛経験豊富な可愛いギャル――というパブリックイメージを持たれているけれども実際は恋愛経験などない普通の女の子。でもそのパブリックイメージを喜んでいるし、そういう自分であるため努力を怠らない。ダンスの練習もするし、彼氏がいるように見せかける。そんな彼女の頑張りもあったからこそ、パブリックイメージイコール悪!ってなってなくて、読んでていいなって思えた。
パブリックイメージから脱却したいヒロインといえばこっちも。こういう押しつけられた印象から抜け出したい子は可愛い。
それはどうよとなった恋愛部分
物語の本筋たるパブリックイメージのあたりは面白かったんだけど、恋愛部分は読んでてきつかったな……。
葉桜が自分の恋愛感情を伝える前にある程度ぐいぐい来るのは理比斗に意識してほしい(にしてはパンツを選んでもらうのは痴女的では?)ということで理解できたものの、ひめマユも理比斗を好きっぽそうと理解した上で理比斗に告白の返事を棚上げされたままの状態でのひめマユ&葉桜での風呂介助はちょっと引いた。葉桜が一切嫉妬の感情を見せないのもあり、都合よく両手に花してんなあって感じてしまった。
理比斗も突然の告白だし答えられないよなっては思ったし葉桜からまだ回答はいらないと言われているので返答していないのは納得出来たけど、でも自分を好きな子&好きなんじゃ?疑惑の女の子2人と風呂介助はさすがにちょっと。1人に決めたら両手に花出来なくなっちゃうもんね。不誠実だなと感じてしまった。
男女逆にして言うと、主人公が告白したヒロイン(彼女に言い寄る当て馬あり)、告白の回答を待っている状態で彼女が自分と当て馬一緒に海水浴に行って日焼け止めオイル塗りを二人に頼むとかそう言うレベルの接触を求めてきたとかで、それを平気で許容してる主人公にお前もうちょいなんとかあるだろーーー!!とか、嫉妬とかなんとかしろよーーー!!って思っちゃうだろうし、男女逆でそうなら男女同じでもどうにかしろと思うよ。
「女殴ってそう」
それにしても女殴ってそうという概念、それで小学生の頃から嫌われて距離取られるってどういうことだよwwwと変なところで笑ってしまった。もっとわかりやすい不良っぽいよりもかなりふんわりしていて、なおかつ高校生ぐらいじゃないと活きない概念じゃないのかな。小学生の頃からそれで引かれて逃げられるってどういう生育環境だよ。不良のように見えるのほうがまだ理解出来るけど、それだと一般的で浮きすぎないけどイケメン的ファッションである主人公っていう設定が出来ないからなのかな。
ただ、女殴ってそうなのに童貞ということで謎に好感度上がったのはすごい納得出来た。ギャップ萌じゃん。