「俺の背徳メシをおねだりせずにいられない、お隣のトップアイドルさま (MF文庫J)及川 輝新」背徳メシに即落ち2コマ
あらすじ
“おせっかい”な高校生・真守鈴文はお腹を空かせて倒れていたマンションの隣人を助ける。
その正体は人気絶頂の女子高生アイドル・有須優月だった!
理想のアイドルでいるため、過度な食事制限をしていた優月。
だが心配した鈴文が手料理をふるまうと、
「……はああああああああああああっっ!」
「もう、無理ぃっ……!」
と幸せいっぱいの顔で完食! その食べっぷりに恋をした鈴文は、優月の大好物で誘惑して《メシ堕ち》させることを決意する。
豚丼、ラーメン、お好み焼き!
「ぜったい食べない!」と言いながら、優月は今日も鈴文のメシを欲しがってしまう──。
ちょっと特別なお隣さんのお腹とハートを掴む、メシ堕ちラブコメ!
うーん……。良い話ではあるんだけれども、どうしても納得&消化出来ない部分があり、そこをどうしようか迷う話だった。
オカン属性主人公によって背徳メシを味わわずにはいられないヒロイン
服のボタンがとれかけている子がいれば手持ちの裁縫セットで縫い付けてあげ、お隣さん老夫婦が大掃除で重たい電子レンジを階下に下ろそうとしていれば手伝うような世話焼きオカン属性主人公は、ある日お隣さんがろくにメシを食ってないと気づく。彼女の家に乗り込んでカロリーマシマシの美味い飯を食わせるようになり、徐々に彼女と近づいていくというお話。
このヒロインがするメシの食レポ描写が、もう全力過ぎてて読んでて面白い。
「さっぱりかつ濃厚なバラ肉を、玉子がまろやかにコーティングしてくれているから、ごはんと一緒にするする入っちゃう……♥ ニンニクのガツンとしたパンチと生姜の爽やかさが追撃してきて、食べるほどに食欲が加速するの……♥」
(中略)
「シャキシャキのネギにごま油の風味が加わって、奥歯を合わせるたびにふわっと香るのが心地いい……。ごはんの間に敷いた海苔もしっかり存在を主張していて、全員が引き立てあっているの……。玉子の黄色、お肉の茶色、ごはんの白。このコントラストは、もはやオーロラよね。ああ、まさかの丼の内側で天体観測できるなんて……♥」
この子、アイドルとして頑張ってるのはわかるし、歌とダンスを全力でやってる描写はあるけれど、絶対食レポ方面の仕事やらせたらウケるよぉ!! 誰かお仕事持ってきてあげて! 事務所! なぁ事務所!!
自分のメシを美味しそうに目を輝かせて食べてくれる子なんて、どうしても嬉しくなるし心轢かれるもの。それで主人公が彼女に惚れたのもわかるし、二人が徐々に近づいたり、アイドルと一般人で熱愛報道なんて絶対に駄目だから!と距離取ってみたりするところも読んでいてとにかく可愛かった。
メシに堕とすvsファンに落とす!
読んでて面白いなと思ったのがこの対決。
ヒロインは、食べたくないのに美味しい食事の匂いや誘い文句で落とそうとしてくる主人公に対抗するため、自分のファンになって自分の言うことを聞いてもらうようにしてやる!ということで、写真集をプレゼントしてくれたりする。なんならいっそライブ呼べばいいのにとは思ったけどそこまでは熱愛報道とか勘違いとかあるからね。しょうがないね。
主人公は主人公で彼女に美味しいメシを食べてもらうために彼女を堕落メシで堕落させようと頑張る。この戦いが読んでて可愛かった。
ヒロインが毎度毎度堕落メシに対抗しようとしているのに必ず落ちるの、もう即落ち2コマの風格がある。無理だよ頑張ったところでお前は勝てねえよ……。
主人公が出してくるのは豚丼やチーズたっぷりドリア、二郎風ラーメンなど。そんなツイッターバズ料理人みたいな味濃いシリーズで美味しそうな匂いを漂わせられたら、アイドルとしてあんまり食べないように頑張ってる子が勝てるわけがないじゃん! そんなんずるい!!
アイドルとして……私は食べない……と抗いながらも結局ヒロインが負けまくっているのが可愛かった。
メシ、もうちょっと相手のこと考えてあげられないかな
ただそのメシがひたすら堕落メシ背徳メシばっかりなの、読んでてうーん……となる。
ヒロインはプロ意識が高いし、アイドルとして余計な肉をつけられないという意識がある。だからこそ家にあった一番まともな食事が豆腐バーぐらいだったんだし。そんな子にバクバクと高カロリーメシばっかり食わせるのって、それってどうなんだろう。食ったあとに彼女が体引き絞るためにものすごく運動したんだろうなって想像しちゃった。
たとえばそれが同じ背徳メシでも、豆腐でかさ増しみたいにカロリー低いけれどもタンパク質多めみたいな路線だったら、ヘルシーだけれどもしっかり栄養が取れてお腹も膨れて彼女のためのメシを作ってるんだなって思えた。
でも食わせているのが次郎風(アブラマシ)だのドリアだののしっかりカロリー!みたいなメシばっかりだから、彼女の努力を無に返してんなこいつっていう印象がものすごく強いんだよね。
あとちょっと、ヒロイン側も売り言葉に買い言葉があるとはいえ、「ファンはアイドルのことを全肯定なので、主人公をファンにして自分のいうことを聞いてくれる存在しにして、背徳メシなんて作れないようにさせてやる」っていうのはちょっと。ファンをそういう目で見ていると、思っていても言わないでほしかったな。特に作中に熱狂的ファンなヤバ教師がいる以上、自分の食事すら潰してでもアイドルであるヒロインを愛してる存在がいるって出しちゃったんだから。
微妙な部分が見え隠れしつつも、それでもヒロインのメシ即落ち2コマは可愛いし食レポは面白い話だった。
完全に負けヒロインの年上幼馴染にも頑張ってほしいところ。