「牙狼 TAIGA」制作陣が年を取ったなというのを最も感じた

あらすじ
「黄金騎士ガロ」の称号を継承する魔戒騎士の家系・冴島家。 冴島大河はその家系に生まれ、黄金の鎧を受け継いだばかりの若き魔戒騎士だ。 魔獣ホラーとの闘いの日々に明け暮れる大河に、新たな指令が届く。
「ホラーの手に堕ちた”羅針盤”──”聖獣”の魂が宿りし魔導具を奪還せよ」
「聖獣」とは、人間を守護する大いなる力。 大地の力で多くの人の命を守る、青龍
燃え盛る炎の力で邪気を焼き尽くす、朱雀
清く流れる水を操り人界の瘴気、業を浄化する、玄武
そして、風の力で人を鼓舞し戦う力と知恵をくれる白虎
青龍、朱雀、玄武、白虎=四神の魂が「羅針盤」に納められ、人界の安寧を司っていた。 「羅針盤」を奪ったのは魔獣ホラー・蛇道。 喰らった者の力を手にする蛇道は聖獣を狙い、その強大な力を我がものにするべく暗躍していた。 大河は聖獣の祠に仕える魔戒導師・吹奇とともに、「羅針盤」を取り戻すための戦いに身を投じるのであった。
今、「聖獣」をめぐる「守りし者」の戦いが幕を開ける!
感想
遅ればせながら、11月中旬に牙狼TAIGA見てきた!
本当はムビチケも持ってたしもっと早めに行く予定だったんですが、原稿とかそこらへんやっていたら気付けばそんな時期になり、それでもバルト9ならやってるでしょと余裕ぶっこいてたらやってるはやってるけど26時開始で笑った。は、早いと23時の日もあったし……!
しかも新宿の映画館、レイトショー料金がない。新宿は眠らない街なので。
どうしようと思ってたら池袋のシネマ・ロサでやってるのを発見、行ってきた。初めて行く映画館だったんだけど、丸の内TOEIみたいな雰囲気だった。こういう劇場が生き残ってるのって良いな。始まる前の予告で気になった映画も見に行きたい。
全体感想:制作陣が大人になったな……
この大人というのは、年を取ったなのほうの意味合いが強い。
牙狼って私は初代の印象が強く、白いロングコート靡かせたイケメンが生身と剣でスタイリッシュなアクションする、ヒロインとの少女漫画みたいな恋愛、父を超えろ、友情みたいなイメージが未だに結構あるんですよ。その後冴島牙狼は全部追ってるのに、未だに初代の印象が強い。戦闘に関しては一歩間違えたら俺TSUEEEEEEに行きかねないぐらいの強さ。
その初代では前述の通り父を超えろがテーマ的な部分に入ってきており、12話の大河とかめちゃ良い話だよね。え、思い出せない? 牙狼公式が1期を全話公開しているからぜひ! ちなみにチャプターはないよ。10時間がノーチャプターだよ。正気か……? でも2期も映画館オールナイト上映とかしてたしな……(参加した)。牙狼的には一気見が正しい視聴方法なのかもしれない。
そんな父を超えろな物語が、今回は父を超えるものではなく、更には最終的にテーマとして「いくつになっても子は愛しい」を持ってきたのが、制作陣が年取ったな~~~……と最初にしみじみしてしまった……。
牙狼もリアルタイム放送の2005年から20年、大人向け特撮であった以上当時としての対象年齢層も20歳以上。となると当時20歳前後だった人も40前後と親になる年齢となり、同時に総合監督たる雨宮監督も還暦を迎え、子が大きくなった父親の視点に立つ部分も増えてきたのかな。
雷牙の物語たる魔戒ノ花(2014)でも、父である鋼牙は超えるべき存在ないしは追いつきたい存在であって、その父の視点での物語部分てさほど無かった。これは鋼牙が行方不明のため父親不在の物語だからというのもあるけど。師匠であり鋼牙と肩を並べた零も、出番は1話分なのでそこまで父親や師匠視点で物語を描かれてない。
だからこそ、『これだけ離れていたけれども、再び会うことは許されるだろうか』『今更会ってもなんで今頃と思われるのではないか』という恐怖について、父である白虎の視点から描かれたんだのが意外だった。
今までだったらもう少しフキのほうに寄ってたような気がする。そうなると牙狼RedRequiemっぽさが増すかも。烈火側の物語であり、父の物語でもある。
タイトルにはTAIGAとついているが、物語のメイン軸は若き日の大河ではなく、師であり四神の一体である白虎なのが意外だった。
メインテーマである「大きくなっても子は愛しい」を思うのは白虎。まだ子のいない、そして父親は不在だが元気な大河はそういう思考は出てこない。なんかラストにご都合的にぽっと出で未来の自分が言っている――が発生したものの、それ以外には特に無い。
正直、牙狼なのでもっと大河にスポット当てる気がしてた。牙狼って当然ながら主人公にかなり明確にスポットライトを当てる作品だなと今まで思ってたので、具体例で言うと白夜の魔獣も翼じゃなくて結局鋼牙の物語だったように、最終的に主人公の物語に帰結するもんだと思ってた。ここまで大河ではなく白虎が縦軸になるとは思わんかった。
でも、冴島牙狼シリーズは主人公の強さを見るところと考えれば、これで合ってるのかもしれない。媚空だって媚空さんがヒロイン代知を助けるための物語だった。あれは捕まり操られるヒロインという意味でもものすごく丁寧に初代を踏襲している映画。RRは鋼牙は事件に巻き込まれただけで縦軸はある意味烈花だったし、クルスとシオンの過去話もめちゃくちゃやってたし。月虹が特に雷牙(とマユリ)の話だっただけなのかもしれない。
でもその白虎も、大人ではあるけれども人間かと言われると人ではないなという感覚のほうが強いかも。
これは本当に重箱の隅だとわかっているのだけれども、白虎って他人から身体を借りるじゃん。白虎が記憶喪失になって知らない女と家庭を持っている間の数年間、一晩だけ神獣に身体を貸したはずの人間が数年間行方不明になっているんだよなと想像してぞっとした。本人知らない間に自らの血を分けた子も出来ているし。おそらく知らないし、顔貌も変わるので知らないまま死ぬのだろうが。
白虎が自らの妻子については気にしていたものの、身体を借りる相手に関しては一切気にしていないあたり、人外だなあと言う気持ちがすごくあった。
大河という人
大河自体もすごく好感を持てるキャラ付けで良かったな。お、良いやつじゃん! ってシンプルに思える。落ちているゴミを拾って捨てるようなお人好しなところもあれば、倒れているゴミ箱は気にしないところもある。
比較的よく喋るしにこやかで一般的好感度が高いあたり、雷牙くんと結構似てるなとも感じた。
牙狼1期の大河を見る感じだともうちょっと厳しいのかな? と勝手に思っていたけれども、若い頃は普通にいい人だった。王道的な好感持てるキャラクター。
小説の大河も含めてこういう人だっけ? とは思ったけれど、こういう人だったかも! のほうに最終的にまとまっていった。
でもこういうタイプだと、主人公の相棒であるザルバが若干立ち位置困るな。
初代で鋼牙の相棒のときにあった鋼牙のコミュニケーションをサポートし、外見は変だけど和やかに話してくれる潤滑油たるザルバの存在っていうのが、なんか喋れる相棒くらいまで落ちちゃう。
大河も雷牙くんも人当たりよくコミュニケーションが出来るタイプなので、ザルバの補助がいらないんだよなー。そうなると鋼牙の相棒であったときほどは輝かない……。
このあたりは最近のキャラクター造形の流行もあるのかもしれない。この10年ぐらいは主人公的なキャラってどちらかといえばツンデレやコミュ障よりも人当たりのよい善人のほうが愛されている気がする。鋼牙的なキャラって、2000年代の流行な感じがある。
コミュ障でもラノベ界隈に多い陰キャ卑屈系コミュ障ではなく孤高の狼系で、かなり希少種なんだよな~……。でも今いきなりああいうキャラが出てきたら流行りづらいのもわかる。そう考えると大河の人当たりの良さなんかはすごく今どきっぽいキャラ造形だよね。
ところでこういう人が、最後に出会った絵描き・御月由児をホラーの囮にする日々がこの先に来るのか~……と考えると不思議な縁を感じる。
アクションはいつもの大好きな牙狼
アクション方面がすごく相変わらずの牙狼で良かった~~~~!!! 私は牙狼のスタイリッシュ厨二アクションを愛している!!
大河役の北田さんが映画初主演と見たので色々と大丈夫か……? という不安は正直あったのだけれども、そこらへんを全部吹っ飛ばすアクションでめちゃ良かった!! 鮮やかな徒手空拳バトルからの剣バトル!! やっぱこれよ牙狼は!!
双子ホラー相手にしてるところめちゃくちゃ格好良かったよね……。二人が連携攻撃を繰り出してくるのを軽やかに対応していく大河。すごく……すごく良かったです……。
蛇道が上から飛びかかってくるのを振り返って睨みあげる大河が、すごく俺の知っている大河だ!! ってめちゃくちゃテンションあがってしまった。あそこが一番好きまである。
ただ、横山監督のときに必ずある人間ぐるぐるとキックで膝を曲げるやつが見られないのは寂しかった! あれが好きなので!! 東京喰種でもあれを見て大喜びしてしまった。
この先牙狼はどうなるんだろうな、冴島牙狼としても父の若い世代もやったし三世代揃い踏みは渡辺さんが亡くなった以上難しいしな~、そろそろ鋼牙戻ってこねえかな……役者さんがワイヤーでぶんぶん振り回されても大丈夫なうちに……と考えてしまった。









