「今日は天気がいいので上司を撲殺しようと思います」パワハラ上司をザマァしてくれる、後味最悪ホラー短編集

★★★★☆,集英社オレンジ文庫お仕事,ざまぁ,ホラー,現代

今日は天気がいいので上司を撲殺しようと思います

今日は天気がいいので上司を撲殺しようと思います

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あらすじ

些細なことから上司・岸本の執拗な嫌がらせを受けるようになった玲美。疲弊しきった玲美は、彼を殺したいと夢想するようになる。こいつの頭をぐしゃりと潰してやれたら――。業績を掠め取る係長、若い女子を目の敵にするお局、会社に寄生する豚野郎。こんな最低なヤツらが迎える結末とは!? 会社で頑張るすべての人々に捧げる、ちょっとブラックなお仕事小説!

夕鷺さんの一般文芸。少女小説のかわいいお話が頭にある上で読むのやっぱりビビるな。前に読んだ一般文芸の死にたいあなたに男子大学生がお肉をごちそうしてくれるだけのお話も相当うわーーー怖!?なんで!?いやいやいや!?となったんだけれども、これもかなりびっくりした。
パワハラ上司が酷い目に遭うザマァ系ホラー。あらすじにある『ちょっとブラックなお仕事小説!』は詐欺だよ!!!ドブラックだよ、会社も中身も!!

短編集。1作1作は繋がってないけど、どれもパワハラ上司でメンタルを病みかけている主人公、そしてホラー展開によって解決するその状況という構成。
パワハラ具合が読んでいて具合悪くなりそうなぐらいリアルでとにかくしんどかった。ひどい上司が酷い目に遭う物語である以上上司の酷さ見せる必要はあるしわかるんだけど読んでてガチめにきつかった。
わたしはこのレベルのパワハラは食らったことないんだけど、こういうのあったら絶対メンタル病むだろというのの連続。一人敵を決めて言葉で延々と相手の矜持を叩き折り続ける人間、一体何が楽しいんだよ……。そして憎まれっ子世に憚るというだけあってこういう人間ほど何故かやめさせられたりしないんだよな……。社員の人数も有限なので減れば新規に取らなきゃならんことを考えると、やめさせ続ける癌は早めにかたしたほうがいいんじゃないかと思うけど、なにかあるんだよな。本当に最悪。
このあたりは3話目で言われている通り、こんな上司をのうのうとのさばらせている会社も悪い。辞めよ辞めよ。そう簡単にやめられないのはわかってるけど、死にたいと思うぐらいならやめたほうがいいよ。殺したいは攻撃だから良いけど(良くない)死にたいはやめたほうがいい。

パワハラ上司がホラーでぶん殴られて酷い目に遭うというのはどの話も同じだし、なんなら言ってしまえばザマァ物なんだよね。でもザマァというにはスカッとしない。嫌なやつが因果応報以上の酷い目に遭うというのに全然よかった~!とは思えない、なんなら読み終えてからの後味は最悪だった。
とはいえ、事前にパワハラがねちねちと丁寧に描かれているので、なんでここまでされちゃうの……?と同情したりはしないんだけど、とにかく後味は最悪。そう見せる作者がとにかく上手い。

この後味の悪さなんでかなと考えてたんだけど、過剰暴力に加えてその制裁を加えたのが主人公でも他の虐げられた人でもなく、純粋ホラー展開だからだと思う。例えばこれが1話だったら主人公の彼氏で「君を酷い目に遭わせ僕にあえなくするような上司だから撲殺しておいた」と言われれば、殺意を覚えるほど酷い目にあったのは主人公であってお前ではないし何てめえが酷い目に遭いました顔してるんだ??と思いはすれど、主人公逃げてー!くらいで済む気がする。過剰暴力だしね。
目に見えない超常現象だからこそ怖い。なんでだろって、超常現象だとその矛先がいつなんどき最悪な人以外に向くかもわからないからかもしれない。一応最悪な上司に対して矛先が向くような雰囲気があるけれども、だとしても確実性はない。ホラー特有の謎の事情で突然なんの悪さもしていない主人公に向くかもしれない。そういう怖さがある。
正義のためでもない、主人公のためでもない、何が行動原理かわからないものは怖い。
あと純粋に、主人公が「やったー!!!」ってしてなくて後味悪そうにしてるので読み手としても後味悪い。その後味の悪さが作者が狙ったものなんだろうなーってわかるからこそ「後味悪ッ!」って声高に言えるんだけど。

そんでこれは物語の直接の感想じゃないんだけれども、3話目のテキストファイルになぜか赤い文字が表示されるのと、ファイルを消しても復活し、なんならディスプレイの向こう側からバンバンしてくるあたり、読んでてこういうフラッシュがありそうだなと思ってしまった。あなたは赤い部屋が好きですか?

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