「死にたいあなたに男子大学生がお肉をごちそうしてくれるだけのお話」前半は間違い無くほっこりお料理物だったんだよ!!!

★★★★★,角川文庫お仕事,ざまぁ,ホラー,料理,現代

死にたいあなたに男子大学生がお肉をごちそうしてくれるだけのお話

死にたいあなたに男子大学生がお肉をごちそうしてくれるだけのお話

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あらすじ

「料理好きの男子大学生」。最近、私が夢中になっているお料理動画アカウントだ。
疲労と憂鬱を溜め込んだ重たい体で帰宅して、スマホで彼の動画を見るのが唯一の癒し。
どうやらお肉が大好きらしい彼は、ハンバーグにサイコロステーキ、メンチカツなどなど、いつも素敵なレシピを解説付きでアップしてくれる。
その軽快なトークと、柔らかい語り口に、私はすっかりハマってしまっている。ああ、今日もなんて美味しそう……!

寄生ぶりっ子マウント女、純情女子大生から金も身体も巻き上げるクズ男、同担拒否SNS粘着女。
嫌なことは全部この包丁で刻んだのちにじっくり焼いてコトコト煮込んで、ハンバーグにしちゃいたい!
読めばスカッと、大人のための暗黒童話的メシウマ小説!

いやーーいやいやいやいや!?と読みながらなってしまった。なんだこれは。
あらすじちゃんと見てなかったのが幸か不幸か、「竜神さまの生贄になるだけの簡単なお仕事や(仮)花嫁の人の小説だ~!」と、きっと最近流行の料理物でほっこり前向きになって明日も頑張って生きよう系小説だと思って読み始めたら、全然違うものが出て来てちょっと待てや!?となった。なんだこれは。

少なくとも1話目、おそらくは2話目までは、何かあって疲れている主人公がツイッターに弱音を吐いたら、いつも見ている料理YouTuberの『料理好きの男子大学生』がDMをくれて美味しいご飯を食べさせてくれて、嫌なことはたくさんあるけれども明日から頑張りたい、少しでも前向きになれるように何か行動してみようと思う、割と良くあるお料理ほっこり小説だった。
というか1話目の嫌な女に対して主人公が、寄生ぶりっこ腹立つ横取りマウント女だけど、あの子が私に化粧や服を教えてくれた過去もあった、嫌なやつだけど嫌なことばかりじゃなかったと思い出すシーンが本当に良かったし好きだし、やられっぱなしではあるけれども主人公が前向きになるほっこり小説じゃないかと思ったんだよね。
いや全然違ったわ。3話の視点主のやべえ女で一気に風向きがおかしくなって今までとの差で風邪ひくわ。

基本的にこの男子大学生くん(もう男子大学生じゃない可能性のほうが9割だろ)の行動原理って『悪い人を食べ物にする』『その悪い人かどうかの判断として、自分の動画を見てくれていいねしたりコメントしてくれるような人に害をなす人という基準を設けている』というのは前半からは変わらないのか。
あらすじで読めばスカッと、大人のための暗黒童話的メシウマ小説! ってあるけど、本当にこれ読んでスカッとメシウマになる!? メシウマはネットミームのメシウマと彼の作る料理が美味しいのメシウマをかけてるんだろうけれども、その出された料理があいつだと知っても本当にその飯は美味いか!? それで飯が美味いと言ってくれそうな相手、3話目のヤバ粘着マウント女ぐらいでは!?
スカッとメシウマ部分、あるかないかで言えば無いわけでは無いんだけれども、一般的によくあるざまぁ物と違ってざまぁ部分をねちねち書かず、読者の想像にある程度おまかせしている分、ざまぁというよりも後からぞっとするホラーっぽさが強い。特に1話目2話目、最後まで(もしくは3話まで)読んだあとで思い返してみればあれって……いやあれって!?となるタイプなので、ざまぁとかメシウマっていうのは結構違う気がした。

4話目の部屋にいれてからの「本当になんでもしてくれるのか」「食べるか」という問いかけで、3話目以降人外の化け物にしか見えてなかった料理好きの男子大学生が人間っぽく見えた。彼にとって殺したい=>料理したい>喜んで欲しいぐらいに見えていたので何よりも人間解体主義の殺意が強い人なのかなと思ってたんだけど、あのシーンは試し行為に見えて、なんだかんだ言っても4話の主人公に受け入れて欲しいんだろうなと想像した。

普段はどちらかというともやっとした部分なしに全部出してくれる小説のほうが隙なんだけど、これは読んでて「うわーーー説明されてないけどこれってこういうこと!?」「この部分ってこういうことなのかな!?」「あれってつまりそうなの!?」みたいにかんがえるのがめちゃくちゃ面白かった。
全部説明しない小説でもこんなにうまく面白いのあるんだな。

冒頭にも書いてたとおり同じ作者さんの小説だと竜神さまの生贄になるだけの簡単なお仕事や(仮)花嫁シリーズぐらいしかちゃんと読んだことなかったので、そういう少女小説出身の人が書くライト文芸系かと思いきや、途中からすごい勢いでパンチ食らった小説だった。
そう思って読み終えてから作者名検索したら現代ダークものも結構書いてんのね……びっくりした……。

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