「放課後、ファミレスで、クラスのあの子と。 (電撃文庫)左リュウ」大掛かりな事件が起きるわけでもないのに気付いたら読んでしまう物語

★★★★☆,電撃文庫学園,家族,片思い,現代

放課後、ファミレスで、クラスのあの子と。 (電撃文庫)左リュウ

放課後、ファミレスで、クラスのあの子と。 (電撃文庫)左リュウ

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あらすじ

 いつものファミレス――そこは、親の再婚でなんとなく家に居づらくなった俺の逃避先。家族と無理に過ごさずにすむ、自分だけの居場所。
 そんなファミレスでいつも見かけるクラスメイトの加瀬宮小白は、誰とも馴染まない孤高の美少女。どうやら彼女も家に居場所がないらしい。ひょんなことからお互いの秘密を語り合った俺たちは、遅く帰るためのアリバイを作る《ファミレス同盟》を結ぶことになって……。
 その日から俺たちは、お互いがありのままでいられる関係になり、退屈だったファミレスでの時間は小白と愚痴り合う楽しい時間になった。
「「―――明日の放課後、いつもの店に集合で」」
 放課後のファミレスで、今日もふたりの帰らない理由探しが始まる。

面白かったー!
どこが面白かったとかこのシーンが良かったみたいなのはまるで出てこないし起伏も少ないのに、でも読み終わって出てくるのが「面白い話だったなー」というすごい不思議な小説だった。

家に帰りたくない者同士、ファミレスで駄弁る

母親が再婚して新しく1個下の義妹と父親が出来て家に帰りたくない主人公・成海と、芸能人をしていて何でも出来る完璧な姉と比較されるのが嫌で帰りたくないヒロイン・加瀬宮が、帰宅したくないためにファミレスで一緒に時間を潰すことになる物語。

ふたりとも理由は違えど帰宅したくないし家族について愚痴があり、それを聞いてもらったり、時間を忘れるための趣味を分け合ったりしたことから仲良くなっていく。この二人の関係性がすごく良い。
寄り添いはするし、相手が話したくなったら聞くけれども、無理に聞き出そうとしたりしない。なにかあるのは薄々察せられるし、高校生があまり帰宅が遅くなると親がよく思わないというのも互いにわかるからこそ「友達と一緒にいる」という大義名分を作るのに互いを利用する。利用というけれども、本人たちが言うとおり、同盟というのが最も近い。家に帰らないために協力する二人、というのが正しい。そんな関係性がすごく今どきに感じられたし素敵だった。

物語は最終的に特段大きな局面を迎えるわけじゃない。芸能人であり何でもできる姉と加瀬宮を比較し妹の方はどうして……となる母親は、そのまま変わらない。物語によっては主人公である成海が加瀬宮の母親のところに怒鳴り込んで改心させてというパターンもあるのかもしれないけれども、この話はそういうこともなく終わっていく。
でも加瀬宮には成海という理解者がいる、それだけでも救われるし助かるというのは、ある意味すごく現実的な終わり方だった。

恋に落ちる流れがめちゃ好き

わたしは! 【他の誰も気付いてくれない/みんなも私もそれをして当然だと思っていた】私の【努力/悩み/苦しみ】をこの人が気付いてくれたというのが大好き!!
そしてこの話も!! 初めて自分のために怒ってくれた成海に加瀬宮が恋に落ちてしまうシーンが最高で大好き!!!

本当にそういうシーンにめちゃくちゃ弱いので、成海が何故自分が不機嫌か→加瀬宮を悪く言われて怒っていたんだと気づくの流れにめっちゃくちゃ大喜びしてしまった。
この話って最初に書いたとおり全体的に大きな起伏というものが少なくて、事件も家に帰りたくない二人のエピソードの強化か、加瀬宮が姉に近づく踏み台にされそうで他人と関わるのが煩わしいというエピソード、もしくは成海と加瀬宮の距離が近づくエピソードのどれかなことが多い。淡々とした物語で、この加瀬宮が恋に落ちるエピソードもそこまで大々的にドカーンとくるものじゃない。なのに妙に心に残る。静かなのにちゃんと残る。めっちゃ良かった。すごいドキドキ!というシーンがここまで少ないのにぐいぐい読ませるのって面白いよなあ。

義妹も妙に普通の家庭にこだわっていたりと気になる箇所があるので、この先どうなるか楽しみ。

放課後、ファミレスで、クラスのあの子と。 (電撃文庫)左リュウ

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