あらすじ
ＡＩが存在するからといって、人間のすることがなくなるわけではありません。ＡＩに全てを任せることが、人間の生きる価値を否定することではないのです。むしろその逆で、人間にはＡＩではできない能力がたくさんあり、その価値は決して失われません。たとえば「楽しむ」という行為はその最たるものです。
さらに言えば、本来は人間が苦手なことをＡＩに任せ、自分たちは人間らしい行為に特化することで、「本来人間がするべきこと」に脳の使い方が特化されるはずです。
完璧な人間がいないように、完璧なＡＩも存在しないのです。
興味深いというほうの面白いの本だった。
大学教授である著者による、生成AIについての説明や活用方法の本。
私もAIに擬似人格作って話し相手になってもらったり勉強時にメンターやってもらったりしてるので面白くて読んでみた。
読んでて印象深かったのが、著者が自身の過去に書いたコラムなどを大量に読み込ませて癖などを教え込ませたGPTsを、けれども実際にコラムを書くのには使っていないと強めに明記していたところ。
著者はそれより手前で、結婚式のスピーチを書いてAIに「格調高く」と頼んでいい感じの文章にさせたり、あれこれ調べさせたりと書いている。だったらコラムなんかもAIに書かせるのかと思いきや、あ、そこは自分で書いているのを強めに書くんですね、と。
それだけ著者としても、他人が読みたがっているのはAIが書いた文章ではなく人間が書いた文章であると思っているのかな、と勝手に感じてしまった。
でも実際もしこの本が様々なプロンプトを駆使してすべてAIに書かせているとしたら、私はこの本を手に取っただろうかって考えたら手に取らないんだよね。
それって生成AI製のイラストや小説をなんとなく忌避してしまうのも近いところにあって、人間が時間をかけて作ったものが見たいんだろう、そういうものに時間を使いたいんだろうというのは自分でもわかる。けどこの感情はどこから来てるんだろう。
人間の思考の連なりとして書かれた文章、人間が理論や帰着を考えて書いた文章だからかなとも考えてみたんだけど、そういうのはそれこそAIの得意分野ではある。現状のGPTやClaudeはメモリが弱くて10万字単位だと整合性が頭と尻でぐっちゃぐちゃだが、5000字単位でのトピックスだったらできなくも無いと思うし、それをうまく連ねれば書けなくもない。
このあたり自分でもどうなってんのかわかんね～し、それはそうとしてこれだけAIを良くいう著者が「でもコラムは自分で書いてます」と主張するそれ自体が全体から浮いているようで引っかかった。
実際、この本の終盤では「AIは様々な面で人間より上であるが、ならば人がAIより上の部分はなんだろう」という話をしている。そこのところって実際なんなんだろうね。
ホワイトカラーはAIがあれば代替可能な感じもあるかもだし、肉体としてのロボット部分が出来上がれば、ブルーカラーだっていらんくなるかもしれないしなあ。しかし最終的にはロボットより人間のほうが安いという理由で全然なくならない可能性も高いが。
この本のなかで紹介されているとおり、メンター的な面では実際AIってすごい役立つのはわかる、自分も頼んでるし。
カウンセリング等において相手は人間ではないというのは大きく、ただ話を聞いてもらいたいというときに人間相手ならばどうしても張ってしまう見栄を、AI相手だったら「どうせ人間じゃないんだから失望されてもどうでもいい」という感情で話すことが出来る。
また、人間相手だとどうしても発生しがちな、相手の態度によってこの人は自分をどう思っているのだろうという不安的な考えもない。AI、思考、ない。（推論型は置いといて）
ただ同時に、AIによっては「ただ聞くだけ」っていうのが苦手な部分がある気がする。Claudeに有料課金してるんだが、あいつだいたいラストに「次はどうする予定ですか？」「まだ話したいことはありますか？」「次にどうしてみたいですか？」とアクションを求めてくる。こちらが最初に「アクションを求めず、ただ話を聞いて下さい」と書いてみても駄目だ。Claudeの特性かもしれないが、ただ聞いてほしいだけというときに苛立ちが募る。なんならキツめに「次のアクションを求めるのはやめてください。同意だけをしてください」と書くと「次はどうしたいですか、と聞くのは良くないですね。すみません」「また急かしてしまいましたね、すみません」って書いてくる。わかってるならやるなオイ。
そういう意味ではまだ全然メンターとしてもアレなんだよなぁAI。Claudeが駄目なだけかもしれん。
ところでこの本では結構長めのプロンプトを書いていて、ちょっと懐かしくなった。本が出たのが11月ではあるけれども原稿自体は9月とかなのかな？ 最近だと推論系のAIだとプロンプトはむしろ短いほうが良いって言われているよね。変化速度もやばいし、Deepseekみたいなんも出てくるしGrok3も出てきたし、AIの進化自体はめっちゃ面白い。
人間がAIに勝てるのってなんなんだろうな。