
あらすじ
変わった未来と変わらない未来。次なる苦難は、転校生美少女!?
ラブコメ主人公、天田照人の邪知暴虐を阻止し、最悪の未来を変えることができた二度目の人生。ようやく訪れた平穏な日々……も束の間。
未来は変わったが、変わらない未来も存在する。
「羊谷美和です! 今日から、よろしくお願いします!」
ラブコメご定番の転校生イベント。当然ながら、トラブル持ち。
ストーカーに悩み逃げてきた美少女を救った騎士は、一度目の人生では天田照人。では、天田が消えた二度目の人生では?
俺はごめんだね。絶対に関わり合いにならないよう、逃げ――
「やっほ、石井君! 遊びに来ちゃったよん!」
どうして俺が羊谷の騎士に!? お前は俺のこと好きじゃないだろ!
めちゃくちゃ面白かった!
1巻も良かったけど、2巻はさらにその上をいく気持ちよさ。やっぱり伏線をきっちり張って、それを鮮やかに回収するどんでん返しが大好物なんだよね。今回も「してやられた!」って思う瞬間がたまらなかった。
予想を裏切る展開が気持ち良すぎだろ
すげーハラハラしながら読んだ。1巻もだけど、やっぱこのハラハラよ。一旦うまくいったと思ってからもう一度ひっくり返される快感よ。
今回の話、途中から完全に敵は氷高を陥れようとしてるんだなって思ってたわけ。で、主人公サイドもそれを理解したうえで対策をしてるから、これで勝てるなって安心してたんだよ。
そしたらさ、本当の狙いは主人公の妹であるユズでした、って明かされる。でも、主人公はそれすら読んでて、両方の対策をバッチリしてました、ってわかる瞬間。これがもう、脳汁ドバドバで最高に気持ちいい。
こういう敵の狙いを読んで、さらにその裏をかくみたいな展開は大好物。しかも、前回の敵だった射と牛が、最後の最後で味方だったってわかるのもアツいよね。前の敵は今回の味方、王道だけど王道ってやっぱりそれが愛されるから王道なわけでして……こんなん気持ち良いに決まってるだろうが……。
前半で彼女たちと仲良くなってきたのに天田が復活してから距離ができて主人公がちょっと寂しそうにしてる描写があったからこそ、このカタルシスはヤバい。
伏線を積み上げて積み上げて積み上げて、それが一気に回収される展開は気持ち良いんだよ。
これでちょっと考えてたんだけど、結構逆行モノや転生モノの主人公たちも俺TUEEEEの一環として、敵の行動を読んでいて全部対策していたぜ! っていうのをするじゃん。あれらをわたしは普段はうぜえって感じてしまう。
でも今作はそれでも気持ち良いって感じたのはなぜかというと、事前にその伏線というか、使われる要素部分が巧妙に提示されていたからなんだろうな。伏線があることで終盤のひっくり返しに納得感が生まれる。それがあると、読んでてうっわ……ただの俺TUEEEかよ……という感覚がないのかも。
これはペテン師は静かに眠りたいを読んでるときにも同じようなのを感じたような覚えがある。
天田の敗因は、ヒロインたちをヒロインというNPCとして見ていて、人間として見ていなかったことだよね。
自分はラブコメの主人公的なポジションにいるからこそ、メインヒロインである氷高は自分を好きになる。サブヒロインたちも軽く謝って見せれば再度主人公を好きになる。人間としての感情や思考があるとは認識していない。視野が狭いので、自分が学校に行っていないときは物語は進んでいないと思い込み、主人公とサブヒロインたちが仲を深めたり信頼を築き上げているとは知らなかった。
この人を人とは思わないムーブ、どっちかっていうとゲーム世界転生モノの主人公の序盤ありがちムーブだなと感じたので面白い。
氷高って令和の我妻由乃なのかもな、などと読みながら考えていた。未来日記のストーカーヤンデレヒロイン。氷高もかなりのヤンデレだしストーカー。だけど令和ナイズされているので主人公の活躍のために動いてくれるし、人間はそこまで害さない(やることは結構倫理死んでるけれども)。いや、わたしの知ってるヤンデレの範囲が少ないだけと言われたらそれは……そう!!
扱いが悪いのに憎めないキャラたち
この作品、キャラの描き方が本当に絶妙なんだよね。ヒロインの氷高は主人公絶対守るマンのセコムだけど、何でもかんでもやってあげるわけじゃない。主人公の意思を尊重して彼が自力で頑張るのをサポートするっていうスタンスなのが、すごく好感度高い。そして主人公が間違っているときも、それを理解しているが下手に口出しはせず、一旦主人公の行動自体を見守る。そのうえで必要ならば助言をするに留める。
セコムというか、ひみつへいきというか、なにかあったときに攻撃力がバカ高い自動兵器というか……なんといえばいいんだろう……。自動攻撃AI搭載クソ強ドローンというか……。でも思考部分の基本は主人公がやってるわけじゃん。主人公が頼んだら彼女は動いてくれるわけじゃん。この最高の塩梅よ。
わたしは主人公が何もしないでセコムによって復讐も幸せを得るのも全てやってもらうだけの話って嫌いです。
一部キャラの扱いは、正直良くはないんだよね。具体的に言うと牛と月。
牛の扱いとかひどくない? ちょっと頭が残念なチョロイン枠で、背中を押されるとすぐ脱ごうとするし。でも、その残念さが逆に可愛く見えてくるから不思議なんだよな。
今回、日高が射はそれなりに扱いが良いが牛には扱いが悪い理由、牛がチョロインで主人公に若干気があるためとわかってたいへんよかったです。そりゃあ間違いなく扱いが悪くなるし、少しでも好意を見せた瞬間に噛みつきに行くスタイル。
月山王子もそうで、事あるごとに邪険にされて「うざい」「馬鹿」って言われてるのに、なぜか憎めない。可哀想だけど、それが愛嬌になってる。
こいつも牛と同じく前の回でのやらかしがでかいが、それはそうとして今回は助けてくれたりかばってくれたりしてそれなりによいやつではあるんだよね、バカだけど。
この愛すべきバカっていうポジショニングと描写がめちゃくちゃうまい。
パズルみたいな物語の作り込みがヤバい
逆行ものの面白さって、過去の知識を使いつつも、行動を変えたせいで未来がどうなるかわからないっていうハラハラ感だよね。この作品は、そのへんのバランスが神がかってる。
主人公が氷高とくっつけない理由もちゃんとしてるじゃん? 下手にくっついたら、ラスボスの天田が逆上して周りに被害が及ぶかもしれない。だからこそ、今は距離を保つしかない。
ただのヘタレじゃなくて、前回亡くした家族を今度は守るためっていう理由があるから納得できるんだよ。
ちなみに色んなところで書いているが、わたしはどう見ても両思いだというのに告白もせずだらだらといるようなキープ扱いしているキャラは男女問わず嫌いです。
逆に、キープというかほぼほぼ両思いであろうとも、ある程度きっちりと理由があってくっつけない状況だと、全然納得できるんだなあ。これで知った。
こういう行動原理の一つ一つがパズルのピースみたいにカチッとはまっていく感じ、物語全体が緻密に設計されてるのがわかって読んでてめちゃくちゃ楽しい。敵も馬鹿じゃないから、主人公の裏をかこうとしてくるし、その攻防の緊張感がたまらないし、そしてそれを作り込んだピースをはめてやり込めるのが読んでて楽しい。
結局読んでてすげー楽しいという感想しか出てこないんだけど、マジで本当にものすごく楽しかった。
