屋根裏部屋の公爵夫人 (カドカワBOOKS) もり
あらすじ
政略結婚のすえ公爵夫人となったオパールの新婚生活は、埃っぽい屋根裏部屋から始まった。
いわれのない不名誉な噂のせいで悪評の的にされ、邪魔者扱いされ、敵意に満ちた嫁ぎ先。しかし、負けず嫌いな公爵夫人はこのままじゃ終わらない!
女は領地経営と無縁。そう油断する者たちを出し抜いて、オパールは「ある計画」のために屋根裏部屋から革命を起こし……!? 公爵夫人の華麗なる逆転劇が幕を開ける――!
こんな人におすすめ
- 堅実な主人公が見たい人
- ざまぁ展開が見たい人
- 丁寧に用意されるざまぁが見たい人
- 恋愛展開よりも国の立て直しが見たい人
丁寧に作られるざまぁは面白い
正直な話今まであまりざまぁモノに対して良い感情が無かったんだけど、それが完全に覆された。
これがあんまり合わなかったからざまぁって面白くないのかなと思っていたんだけど、うまくやるとこんなにも面白いんだな。
主人公は才色兼備なご令嬢。しかしパーティでちょっとした事件を起こされて名を汚され、結婚を申し込んでくる相手などは一切いなくなる。
そんな中父親が結婚相手を連れてきた。相手は金に困った借金まみれの公爵で、主人公のもつ金が目当てだ。以前一度ダンスをしたときに好感を持った相手だったこともあり、相手の事情も理解した上で主人公は政略結婚するが、行った先の公爵家では主人公は邪魔者扱い、本来は主人公がその座につくはずの女主人の立場には公爵の近親が居座り、主人公に与えられるべき部屋はこれまた別の公爵の近親が住み着いていた。そして現状を何もおかしいと思っていない公爵。
屋根裏部屋に追いやられた主人公が図書室に通ううちに見つけたこの家の問題。借金を返す手段が見つかるかも知れないと思った主人公はそこからどんどんと調べていくが――というお話。
序盤の展開がひたすら胸糞悪い。
後半で主人公によるざまぁをするためとはわかっていても、あまりの胸糞悪さに苛ついてくるレベル。
正しく女主人であるはずの主人公が虐げられ、使用人には敵対視されるの何なんだ。お屋敷の天使様である少女がいるとはいえ、主人公はその持参金によって屋敷を助けてくれる存在だ。そんな彼女によくぞここまで悪い扱いができるなと驚くレベル。頭が悪いのかな……。
また、結婚相手の公爵もアホ。相当なアホ。主人公の金のおかげで糊口をしのぐのだと一番理解してなきゃならないのに、主人公に対しての扱いが悪い。視界に入っているのは目に入れても痛くない病弱の親戚少女のみ。いくら病弱少女が大事でも体面とかあるだろ、というか主人公は少なくとも下城はまだ何も悪いことをしてないんだから敵対視して嫌味行ってまともな部屋を与えないのはおかしくない? せめて持参金のことを考えてもう少し愛想よくしない? と思う。
そういった扱いの悪い面々への対抗、また病弱少女の前に姿を見せるなという伯爵の言いつけに守る形で、主人公は本を借りて部屋で読んで過ごすようになる。
本を読んでいる最中に見つけたとある帳簿は、どう見ても金額が合わない。土地管理についての知識がある主人公はその帳簿を持って実家に帰り、調査していく。
この調査パートが個人的にすごく面白かった。
ざまぁモノって、個人的な偏見でなんとなく「なじられた主人公が隠していた力などでドーンとうまいことやって周囲の人にも守られ相手ざまぁ!スカッとジャパン!」というイメージがあった(前述の元令嬢様の華麗なる戦闘記がそういう部分あったし)。
でもこの物語はそうじゃなかった。
主人公は帳簿を元に下調べをする。自分の知識だけでは心もとないので実家でこういうことが詳しい執事に話を聞き、やはりおかしいと再確認。
証拠もなしにこういったものを出すのは良くないからと、数字のおかしい領地へ自ら赴いて、数字をごまかしていそうな人間に目星をつけた上で裏帳簿を探して立ち回る。
裏帳簿と、やらかした人間が金に困っていた理由を見つけ出し、証拠を揃えて戻っていく。
この丁寧な調査すごく良かった。堅実かつ地道な調べによって裏付けされた証拠なんて持ち出されたら、よほどのアホ以外は納得せざるをえない。とはいえ、そこからアホ公爵がまたアホなんだけどね。
最終的に公爵に見切りをつけた主人公によるざまぁが、今まで主人公にされたあれこれと、公爵のアホさ加減で成功したので、なんというか……公爵がひたすらアホとしか……。
最終的にこの状況で主人公にプロポーズできる面の皮の厚さには驚いてしまった。
なにはともあれ、丁寧な物語は面白かった。