夢見る男子は現実主義者 1 (HJ文庫) おけまる

★★★☆☆,HJ文庫両片思い,学園,恋愛,現代

あらすじ

同じクラスの美少女・夏川愛華に恋い焦がれる佐城渉は、彼女との両想いを夢見て、めげずにアプローチを続けていた。
しかし、ある日突然、夢は醒める。

「あんな高嶺の花と俺じゃ釣り合わなくね……?」

現実を見て適切な距離を取ろうとする渉の反応に、愛華は呆然。

「もしかして、私、嫌われたの……?」

勘違いの末、焦り慌てる彼女からは無自覚な好意が見え隠れ!?
両片思いのすれ違いに悶絶必至の青春ラブコメ、開幕!

両片思い、と書いてあったはずなんだけど

たしかその文章を見て読み始めたはずなんだけど。

主人公は同級生の夏川にベタぼれで、事あるごとに彼女に好きだだのなんだのと言いまくる。
言われている夏川はうざがりつつも完全に拒否ったりはしない。
ふたりのそんな姿から周囲からは付き合っていると思われていた(しかし付き合ってはいない)。
けれど主人公はある日唐突に自分と夏川は釣り合っていないという現実を直視。彼女につきまとうのをやめにする。
つきまといをやめ、朝から帰りまでずっとくっついている生活をやめたところ、他の女子から声がかかったり風紀委員長から声がかかったりし始めて――というお話。

両片思いと銘打たれているから読んだんだけど、個人的には両片思い……?とちょっと首を傾げる感じ。

主人公→ヒロインの片思いはわかる。そりゃあもう全力ベタぼれ。好き好き大好き超愛してるのもものすごくわかる。
作中ではあまり描かれなかったけれど、今までは事あるごとに口説いて告って好き好きしていたというのだからわかる。

ただ、ヒロイン→主人公の感情が、まだ無意識というかほぼ未自覚で片思いというにはあまりにも薄いんだよな……。読者を騙すのに気合を入れるタイプの作者だったら『キープしている男が他の女にフラフラしているからムカついただけでしたー!』という展開をぶち込んで来そうなぐらいのふわっと具合。
なので、最近自分に告ってこない主人公がムカつく!とヒロインが主人公に声をかけようとしたり不器用ながらなにか言おうとしているシーンを見てもあんまりきゅんと来なかった。
どうせやるんだったら巻の真ん中あたりではもう自覚させて、なんであんなやつ……!となりつつもグイグイ来てほしかったかも。

執着はそんなに簡単に消えるのか

サッカーボールがぶつかりかけて、主人公は唐突に現実を見る。
自分なんかがヒロインに釣り合うわけがないと。ごくごく普通の外見、普通の少年の自分が彼女と彼氏彼女になれるわけがないと。
そして、主人公は諦める。明確な諦めではないかもしれないが、彼女につきまとうのをやめ、距離を取り、べたべた話しかけなくなり、一介のファン程度の距離に落ち着く。

……え?
読みながら正直良くわかんなかったんだけど、執着が消えた流れがよーわからん。

今までそれだけ好き好き大好き超愛してるしてて? 少なくともクラス中にはお付き合いしているかのように見られてて? それが? サッカーボールがぶつかりかけただけで? 消失するか?

物語的には『グイグイ来てた主人公が引いたことにより、押してだめなら引いてみろを無意識で主人公が行い、それによってヒロインが主人公が自分から離れてしまったことで自分の感情を自覚する』なんだと思う。
ただこのグイグイ来てた主人公が唐突に引く理由が全然納得できなかった。
ただサッカーボールがぶつかりかけただけなんだもん。

外見が釣り合わない? そんなもの今まで何回も鏡見てきただろ。
ごくごく普通の人間だ? そんなの今まででよく知ってるだろ。

恋は盲目の盲目部分が取っ払われたと考えても良いのかもしれないが、だとしても唐突さがすごい。
そして、そんな簡単に今まで自分に染み付いた執着が取れるのか?とも思う。

そのあたりがうまく納得できないし理解も出来ないので、どことなくふわっと地に足つかない感覚があるんだよな……。

話のとっちらかり具合

全体的に話がとっちらかってた。
主人公がヒロインと距離を取り始めた時に現れた少女に関しては面白いなーと思ってたんだけど、そこから先の風紀委員長や姉関連は、で?となってしまった。
彼女たちが出てきたからってヒロインとの関係性がどうにか動くわけじゃないんだよな。
ヒロインが話しかけようとしたタイミングで主人公が連れ去られてしまう程度の流れでしかない。

これ書いてて思ったんだけど、私が見たかったのは『両片思いの主人公とヒロインの関係の変化』だったんだろうな。

基本的に主人公には、突然ヒロインへの執着が消えた以外の変化はない。
ヒロインも、主人公が離れてしまったことによりどうにかしたいという思いはあれど、積極的に動く前にほぼ全ての行動が潰される。
多分これWeb小説だと思うんだけど、もしこれが最初から1冊の文庫本になることを目的として書かれた話だったら、ヒロインがそれでも最後に動いて主人公も変化して物語が終わったかもしれない。
でもこの小説はそうじゃなく、中途半端なところで終わる。ええー……というぐらい、『主人公とヒロインの物語』としては中途半端なところで終わる。

ただ、その最中に風紀委員長や風紀委員の先輩の物語は解決されるし、主人公と姉の関係も動く。
ヒロインと主人公の関係は進んでないのに。

そこが読んでてとっちらかってた印象を受けたのかもしれない。

正直、1巻出すだけだしてこうしてある程度きちんと終わらず問題先送り一番楽しみにしてたものは放置の小説ってあんまり好きじゃないので続刊は読まないと思う。

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