「嘘つき皇后様は波乱の始まり」キャラがみんなその立場の理由と行動があって筋通ってて面白い

★★★★☆,ビーズログ文庫お仕事,ファンタジー,両片思い,主従,偽装/政略結婚,幼馴染,恋愛,新人賞,片思い

あらすじ

嫁いできた皇后さまが『男』でした――その嘘、新米女中が守り抜きます!!

隣国から嫁いできた皇后ニジェナが『男』だった!!
衝撃の事実を知ってしまったコチュンは、口封じとして皇后付きの女中になることに。
初めは態度のデカいニジェナに腹を立てるも、実は彼が、和平のために皇帝と結託して偽装結婚したことを知る。
その覚悟に心を打たれたコチュンも力を貸すが、この婚姻をよく思わない勢力に正体が暴かれそうになり!?
第3回ビーズログ小説大賞《優秀賞》受賞作!

キャラクターの立場がそれぞれあるのが面白い

政権争い部分は上皇が言えばなんとかなる的なふわっと感はありつつも、話として緊迫感はあるし、この人はこの立場、この人はこの立場とわかりやすいながらも立場的にその人敵対しちゃうの~~~!?みたいなのもガンガン出てきて面白かった。

特に女装皇后の双子の姉。わたしも読んでる最中はてっきり彼は双子の姉を敵対国に嫁がせたくなく守るために自分が嫁いだのかなとも思っていたので、まさか出てきた彼女が超武闘派の開戦しようぜ派なのは予想外も外でちょっと笑っちゃった。しかも腕っぷし強いし。モブ兵士なら倒せる女装皇后を拳で倒せるの、普通にめっちゃ強くねえかこのお姉ちゃん。

シリーズ物を前提とした話だと次へのヒキ欲しさにここまで出せなかったろうなと思うので、さくっと出してくれる単巻前提新人賞モノはやっぱり面白い。

政権争いの部分自体はそんな簡単に行く?と首を傾げるような箇所もすごく多かったんだけど、それでも立場の違う人の対立が多くて結局面白く読んだ。

主人公のキャラ付も良いんだよね。女中という立場だけれども裁縫がとても上手い。お針子になれば良いのにと皇后偽装男にも言われるし彼女もそれも良いかなと思っている時期もあったが、お針子は給料が安定しないし何より低い。養わなければならない人がいるからこそ、好きなことや得意なことが出来るお針子ではなく給料の良い女中を選んだ。

皇后偽装男だって元々は学者になりたいと思っていたぐらい動物が好きだけれども、双子の姉は嫁ぎたくねえと言い出すしそもそもガンガン行こうぜ開戦しようぜ派閥。だからこそ和平を作りたくて、夢を諦め女装をしてでも嫁ぐことを選んだ。

立場の話で言うと主人公の先輩女中がすごく良くて、主人公を嫌いでいじめて全然優しくないけれども、兵士の家系だからこそ開戦したら父や兄が戦争で死んでしまうかもしれないから最後の最後には主人公を助けてくれる。 この先輩女中の描写めっっっっちゃうまかったし、突然何故か手を貸してくれるんじゃなくて、理由があって彼女も手を貸すのだっていうのがわかってすっっっっごい良かったな……。

今この立場でこれをしていることに対して全部しっかり理由がついているあたりがすごく面白かった。

トギ、良いやつ過ぎない?

ずっと面倒を見てきてなにかあったら愚痴に付き合っていた年下の女の子に結婚しようと告白するも先延ばしにされた挙げ句断られ、その上で彼女が好きっぽい男の逃亡に手を貸して、最後の最後まで自分が危機に陥るかもしれないにも関わらず手助けをしたトギ。

作中では皇后偽装男の逃亡に手を貸した主人公がこのままだと重罪扱いになると散々描かれていたけれども、それに手を貸したトギも十分重罪の可能性がある。でも作中誰かがそこらへん言及することもなく、兄貴だからと主人公の手助けをし続けるの、もうめっちゃいいやつすぎるよ。

優しいタイプの当て馬男。彼には幸せになってほしい。いい感じに彼を好きっぽい同じ職場の人がいたのでこう、どうにかならんものか。

だらだら伸ばしていくよりもこれだけ話詰まってるほうが面白いよね

例えば有名シリーズ書いた作家の次シリーズだと、1巻目はキャラ紹介とこういう問題がありますよ程度で本が終わり、2巻目3巻目から物語は本格的に始まりますというものが多いというかとてもよくある。

そうじゃなく、この1冊で必要なキャラは全部出して物語は完結するの、読んでてめっちゃ良かった。こういうのが良いんだよ、こういうのが。

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