科学オタがマイナスイオンの部署に異動しました (文春文庫)」
あらすじ
「マイナスイオンドライヤーなどの美容家電製品は、廃止すべきです」
大手電器メーカーに勤める科学マニア、羽嶋賢児は、自社の非科学的な商品にダメ出しをしたばかりに、最も行きたくなかった商品企画部に島流しに…。
空気を読まずに正論を言う。そんな賢児はやがて部の鼻つまみ者扱いになってしまう。
賢児のまっすぐすぎる科学愛は、美容家電を変えることができるのか!?
自分の信念を曲げられずに日々会社で戦っている、すべての働く人に贈ります。
ドラマ化もされた『わたし、定時で帰ります。』で話題の著者が描く、お仕事小説。
(『賢者の石、売ります』を文庫化に当たり、改題。)
タイトルに反してドス重い、vsエセ科学長編
あらすじ軽めになってるけど全然軽くねえぞ! むしろクソドス重だぞ!!!!
よくあるエセ科学を片っ端からぶった切るぜ連作短編とかじゃないぞ! パワーストーン、エセ科学、母乳育児、論文捏造、科学者の金策など数多の地獄みたいなものを片っ端から並べ立てて組み立ててる地獄みたいな本だぞ!
終盤での譲への貯金通帳まるごと渡すシーン、最初は男男の超巨大感情!となってしまって笑ってしまったんだけれども、これって賢児から科学への信仰のシーンなんだよな……。
母親が無農薬野菜などに縋ったように、賢児の縋る宗教は科学だ。
母親がツケまでして無農薬野菜に金を出したように、女性たちがマイナスイオンを出すドライヤーに金を出すように、賢児も自分の信じて縋るものへと金を渡した。そう考えると最初の行の「僕は科学を信じています」が一気に強い一言に変化する。
科学者の捏造論文に対して腹を立てる賢児のシーンは、自らが信じるものを否定されて拠り所をなくしその現実を拒否する人そっくりだ。譲がさらりとよくあることだと言うそれに腹を立てるのは、信じるものの不正確さを告げられたからだ。『もうたくさんだ。ほんものの科学が侵され続けるのは。』、これは自分の宗教が侵されたくなくてもがく人に似ていないか。
そう思って読むと、一気にぞっとした。
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