クレイジー・キッチン (カドカワBOOKS) 荻原 数馬

★★★★☆

あらすじ

俺は俺が食べる最高の料理を作りてぇんだよ——伝説的キッチンコメディ!
最高の料理の腕を自負し、自らが作る最高の料理を自分が食べるためだけに使いたい三十路過ぎの洋食屋・洋二。彼の日常は、濃すぎる常連客と従業員や料理仲間たちに囲まれ——なぜこんなことばかり起こる!?

このポストは約 4 分で読めます。

こんな人におすすめ

  • テンポ良い会話を読みたい人
  • 男女バディ(恋愛関係にならない)が読みたい人
  • シモネタが許容できる人

文化があった

やる夫AAという文化があった。
あったというにはまだ完全に過去形になってはいないが、それでも最盛期は過ぎたと思う。

とは言っても私もそこまで詳しいわけじゃなく、傍からなんとなくそういう文化があるのを眺めていただけで、真面目に追いかけた長編SSはライダーバトロワスレぐらいだった。
しかもあれはリレー小説形式だからまた種類が違うし、バトロワという文化がすでに懐かしいし、それ以外にまともに見ていた板は主にピンクだったんだけど。
完全に余談になるけど同人その他でバトロワパロ自体全く見なくなったね。一時期はあれだけ一世を風靡していたというのに。一時期はわさわさあった花魁パロも消えたし、こんなふうにいつかは今流行りのオメガバースも消えていくんだろうか。時代の流れって恐ろしい。いくら流行ったジャンルもいつかは消えて、今は流行っているパロもそのうち消えていく。恐ろしい。
牙狼VRはかなりバトロワ+VRMMOっていう雰囲気で懐かしさすら感じてしまったけれどもあれはああいうなにか(そもそも牙狼だし)。

兎にも角にも、掲示板でSSを書き連ねていくような、そういう時代があった。

そして、この本は、そのやる夫のSSから出来た小説だ。
こないだの朝比奈若葉もだけど、一気に4作品ぐらいやる夫&やらない夫あたりのSSを書籍化したのね。ようやるな。
朝比奈若葉はもともと二次創作モノというか夢小説というか、男性向けのオリ主らしいんだけど、二次創作モノを一次創作にして商業出版って古の時代の話かと思ってたよ。すごいな。もしかして割とあるのかな。

閑話休題。

軽妙な会話が面白い

主人公は、揚げ物がとっても美味しい洋食屋。
立地条件とお値段のお手頃さから昼飯時は満員御礼。夜飯にするサラリーマンや、学校帰りに立ち寄り女子高生などお客さんも多種多様。
ウエイトレスで美味しいものに目がないカナちゃんとともに、洋食屋を切り盛りしている。

1話1話は非常に短く簡潔、起承転結がさっくりしてて、飯自体もうまそうで読んでいて楽しい。
カリッカリに揚げられたコロッケの描写はうまそうだし、終盤に出てきた牛すじ煮込みもチョー美味しそう。読んだ日の昼飯が牛すじ煮込みシチューになったぐらいに美味しそう。
酔っぱらいリーマンとともにコンビニに行って酒買い込んで焼き鳥パーティする下りも相当面白かった。

でもこの本のポイントはそこじゃない。
おもしろポイント最大の箇所は、間違いなく会話だ。

「内海さん、今日がなんの日かわかるかね」
「普通の平日ですが」
「ビーフシチューの日だよ!」
「……はい?」
「俺が作りたいと思ったから、ビーフシチュー記念日だ!」
「正気ですか?」
「自信はない!」

この酷さよ。そしてテンポの良さよ。最高かよ。

序盤からノリが軽くて面白かった会話は、話の後半になるにつれてどんどんテンポが増してくる。
このあたりは、読んでいてどう言ったらいいかわからないんだけど、なるほどやらない夫AAのSSだと思った。

ああいうのって会話の良さが魅力なんだよね。地の文があまりない文化だからこそ、キャラの会話の楽しさが魅力。
会話のテンポが良いから一気に読んでしまうし、その会話が楽しいからキャラも魅力的に思える。

カナさんなんて主人公の奢りで二人して総額5万ぐらい食う人だけど、それもなんか嫌いになれないんだよね。魅力的なんだよね。ひっでえ!でも可愛いなと思ような雰囲気がある。
どれもこれも会話の魅力から来ているんだろうなと思った。

とはいえ、時代柄か場所柄か、会話に下ネタが若干多い。そういうのが完全に駄目って人はきついかもしれない。
お子様ランチ(大人向け)に大人のおもちゃをつけようぜ!ゲヘヘ!ぐらいのノリなんで普通にギャグだけどね。
登場キャラ男女問わずがいうので、性別がこれだから云々というのはまったくない。

恋愛にならない男女バディ(バディ?)

個人的に、この主人公とカナちゃんの関係が好き。
カナちゃんは美味しいものに目がない。主人公が自分の知らないとこで美味いもん食ってると後からグチグチいうタイプだし、美味しいものは自分も食べたい。主人公の料理は美味しいから大好き。
主人公もカナちゃんの食いっぷりには呆れつつも彼女の舌を信頼していて、お試しで作ってみたものは試しにまずは彼女に食べてもらう。彼女が美味しいと言えば店に出せると思っている。
だけど、会話がかなりさっぱりしていて恋愛関係に陥らないだろうなと思わせるところがすごく良い。

読んでいて二人の関係性が信頼のみですごく清々しいんだよね。
主人公が過去の恋人(10年ぐらい前に別れてる)を事あるごとに思い出して未練たらたらだからとも言えるけれども。
とはいえ、恋愛関係に陥らずにカラッとさっぱりした関係性の二人が読んでいて心地よかった。良いコンビだった。

コメント

タイトルとURLをコピーしました