「王様のプロポーズ 極彩の魔女」主人公の一直線さと目的のわかりやすさが面白かった

★★★★☆,ファンタジア文庫ファンタジー,ラブコメ,両片思い,恋愛

あらすじ

世界を統べる魔女の身体と力を手にした少年の、最強の初恋!

久遠崎彩禍。三○○時間に一度、滅亡の危機を迎える世界を救い続けてきた最強の魔女にして、魔術師が通う学園の長。

「――――君に、わたしの世界を託す――」

そして――玖珂無色に身体と力を引き継ぎ、死んでしまった初恋の少女。無色は彩禍の従者、烏丸黒衣から彩禍として誰にもバレないよう学園に通うことを指示されるのだが……。クラスメイトや教師にさえも恐れられ、再会した妹からは兄のことを好きという相談を受ける波瀾の生活が待ち受けていた!

「お静かに。手元が狂います。――いえ、口元が、でしょうか」
さらには油断すると男性に戻ってしまうため、女性からのキスが必要不可欠で!?

「デート・ア・ライブ」のコンビが放つ新世代最強の初恋!

突然謎空間にぶちこまれたと思ったらめっちゃかわいい子に一目惚れして、気づいたら彼女の体に入り込んでいて謎の女性から現状を教えてもらう――という、最初からトップスピードに突っ込んでいく話だった。
情報が多いしファンタジーとしての要素が多いのだけれども、王道ながらも個性的で面白かった。

めっちゃ面白くなっちゃってるボーイミーツガール

主人公の精神がヒロインの体に入っちゃってるため、鏡を見てうっとりするわ、風呂のときがめっちゃ危機だわで面白い。
また主人公も恋愛脳ながらも正しい手順をふまなければ!という性格でお付きの黒衣が毎度突っ込みをいれてくれるおかげでテンポ良くギャグになっているんだよね。

「ええと、じゃあ黒衣。こっちも聞きたいことがあるんですけど……」
「はい。困惑されるのも当然です。何なりとご質問を。わたしに答えられることであればお答えいたしましょう」
 黒衣が質問を促すようにうなずいてくる。
 無色は、ならお言葉に甘えて、というように続けた。
「この女の子……彩禍さんって言いましたよね」
「はい」
「彩禍さんって、どんな男性がタイプですかね……?」
「…………はい?」
 無色が少し照れながら質問すると、黒衣は無表情のまま首を傾げた。
「あっ、ちょっといきなり踏み込みすぎましたかね。じゃあまずは好きな食べ物とか……」
「いえ、そうではなく」
 黒衣は首の位置を元に戻すと、無色の目を見据えながら続けてきた。
「最初に聞くのがそこですか? もっとこう、他に気になる点があると思うのですが」
「そりゃあありますけど……えっ、でも、いいんですか? そんなこと聞いちゃって。そういうのってやっぱり秘密なんじゃ……」
「こんな状況になって何を遠慮しているのですか。むしろ聞いてください。こちらもまず、あなたに現状を把握していただきたいのです」
「そ、それなら遠慮なく……」
 無色はコホンと咳払いすると、ほんのりと頬を染めながらその問いを発した。
「ええと、彩禍さんのスリーサイズって……」
「だからそうではなくてですね」

ひたすらこのノリで、現状かなりとんでもない状況に突き落とされたとはいえ、ヒロインについて知りたい!ヒロインが好き!で全力で突き進む主人公がいっそ清々しくさえあった。やべえやつではあるが。

ところで最後まで読んだ上で見返してみると、これわたしの好きシチュである『聞かれていると知らないままに惚気を語り続ける』というシチュエーションなのか。いや最高じゃん。めっちゃ好きシチュじゃん。
この状況に突き落としたヒロインへの不平不満悪態一切なしに延々と好きだと言い続ける男、そりゃあもうめちゃくちゃ好きになる。

世界観の説明や描写の説明がめちゃくちゃうまい

読んでてこれ一番すげーなと思ったかも。

これは魔法のない普通の世界に住む主人公が、ひょんな流れで魔法のある裏世界に入り込んでしまい、そこで一目惚れの美少女の体に入り込んでしまう物語。そのため魔法とはなにか、この裏世界で戦っている世界の危機とはなにかという要素について読者に説明する必要があんだけど、それがもうめっちゃくちゃにうまいんだよね。

主人公の精神が入り込んじゃってるヒロインのお付きをやっている黒衣が基本的にはなんでも説明してくれる。このわからない人とわかる人での掛け合いで説明するのはよく見る。
そんでもって学校の授業で説明するのもよくある。説明としてわかりやすいし。
でも、この授業中に教師に言われたことをそのままやろうとして、ヒロインの体に入ってる強い魔力をうまく制御出来ずに教室を壊してしまう主人公っていうのは上手いなと思った。
「えっ、俺何かやっちゃいましたか?」の系譜ではあるんだけど、授業部分で魔法についての説明、主人公の破壊で主人公が体を使っているヒロインの力の強さの描写を行っている。
例えばこれがヒロイン自身が能力を見せるんじゃ能力制御できちゃうから、主人公がやらなきゃならないシーンなんだよね。主人公だからこそ能力が暴走する。
これの説明がすげー上手いなと感じた。このあたりやっぱりベテラン作家なだけあるなと思った。

この巻自体はキャラ紹介と主人公の目的設定(ヒロインと主人公の分離、そのためにしばらくヒロインの体を使用する以上誰かに疑われないようにヒロインを縁jリウ)の巻でしかないはずなのに、ある程度シリーズが続いた作家の1巻によくある状況と世界観とキャラ説明だけじゃなくて、面白そうって思わせるのが出来てんのがすげーなと感じた。

最後の最後、『誰も殺せないぐらい最強のヒロインを誰が殺したのか』という問いへの回答として『もっと強くなった未来の彼女』という落ち含めてうまいなと思った。最後まで面白かった。

Kindle Unlimitedへ登録

スポンサーリンク