
あらすじ
「いらっしゃい」「お邪魔します」
すでに慣れたやり取りで桃生の部屋に呼ばれ、いつものようにペアリング――恋人じゃない二人の、いつもの日常。
桃生への恋を自覚した実沢、それに気づかないフリをする桃生。『“好き”になったらおしまい』という約束で始まった関
係の中、二人は矛盾した行動に気付きつつも、もう少しだけ、もう少しだけ――と結論を先延ばしにする日々を送る。
しかし、運命のクリスマスの日、桃生はある決意を口にする。
「楽しかった。夢みたいに楽しかった。だから――」
歪な関係から始まった二人の行く先は――大人ラブコメ3巻!
い、いい話だった……。好きで好きで仕方ない人とこういう関係性を抱いているという歪さに爆発してしまった実沢、そこからの関係性が一度破綻する流れ、そして桃生さんがどうしても子供が欲しかった理由。どれもこれも胸に迫ってきて面白く、読む手が止まらなかった。マジで。めっちゃ良かった。
ぐらついた関係性から始まる巻
今回は、2巻ラストで桃生さんが実沢の恋愛感情を察してしまったところからの物語スタート。
てっきり桃生さんのことだからこれ以上実沢を切り捨てるときの傷が深くなってしまう状態になる前にと実沢とのペアリングを解消するかと思いきや、そんなことなく割とモロでモロなお誘いしたり交流したりを続けており、こ、この女~~~~!!! という思いと、お前もうめっちゃ好きじゃん諦めろ~~~~!! という思いでいっぱいのところから話が進んでいき笑っちゃった。
だってもう、お泊りしていかないかと誘ったり、今までは関係性がバレないように+事務的な関係だと意識付けるように晩御飯は別々だったのがうちで食べていけばとお家でご飯を振る舞ったり、お風呂に一緒に入ったりってもうこれどう考えても実沢の恋愛感情を煽るだけの行動じゃん! 実沢がもっと桃生さんを好きになるだけのイベントじゃん! この! この恋心がわかってない美人年上爆乳上司め!! こいつ!! と読んでてすげえテンションになってしまった。
からの、実沢の爆発。そりゃあ爆発する。これだけイチャイチャしても全部が虚しいだけだけど、でもこれだけ許してくれているんだからチャンスがあるかもと思うの、わかるよ。これに関しては本当にひたすら実沢に同情するというか、実沢が正しい! 実沢が正義! って拳を掲げたくなってしまう。今まで桃生さんがかなり情も愛もありそうな行動をしてきたのが悪いじゃん、こんなの……。だから実沢だって辛くなって思わず言っちゃったりするんだよ……。
でも、ワンチャンあるかもというよりも、この状況がしんどくて虚しくて、というのが大きいというのがすごく、良い人である実沢らしい。桃生さんの事情を理解したうえでの期待だもんな。
その後一旦の破局を経て二人が再度くっつくまでの流れもすごく丁寧で面白かったしドキドキした。とくに鹿又が桃生さん呼び出して飲むあたりがすごく好き。
鹿又って性格がすごくさっぱりしてるよね。あなたは実沢くんに合わない!と言うでもなく、自分は本音で語ったし桃生課長の本音も知りたい! ていう雰囲気が、若くてさっぱりしてて実沢を引きずってない雰囲気で良いな。このシーンで彼女のことがすごく好きになった。
ここで桃生さんの本音を引き出す鹿又、すごい好きなんだよなー。並べ立てられた建前は本音ではなく、もっと別に桃生さんの感情はあるはず。それを出さずに上っ面だけで会話すんのやめません?っていうの、本当にそうだよ。ずっとこの人はまっすぐ喋ってくれなかったもんな。
明かされる桃生さんが子供がほしい理由の根底にあるもの、実沢のプロポーズ、どれもこれも面白くて終盤本当にぐいぐい読まされた。
桃生さんのちょっとした可愛らしさって、仕事中に見せるキリッとした女帝としての顔、プライベートのときに実沢に見せる年上だけれども抜けてて可愛らしい女性としての顔、それに加えて友人の前でだけ見せる少女っぽさというか学生時代の友人相手だからそのノリが残った空気感というか、そういうところにあるんだろうな。
この友達の前でだけ見せる顔の女子高生みたいな雰囲気というか、アラサー女性とは言い難い子供っぽさを見せるところがすごく好き。友達の前と部下の前ではそりゃあ違うよ! わかる。愛らしい。
残っている伏線などもナシで、かなり綺麗にまとまって終わったなという印象。さすがベテラン作家だけあって引っかかってたり回収忘れじゃね? アレどうなったの? っていうのが全然無い。てことはもう続刊はないのかな。
でも内容的にこれ以上続いたところでやる話もないというか、お子さんが出来てめでたしめでたしだもんなあ。確かにすごく満足してしまってこの先が読みたいという雰囲気ではないというのはあった。過不足なく3巻でまとまった物語て感じだった。
