「願わくばこの手に幸福を」ショーン田中
あらすじ
――ああ、かつてに戻るくらいなら、死んだ方がよほどましだ。
冒険者ルーギスが過ごす日々は負け犬そのもの。仲間であるはずのパーティーメンバーから虐げられ、夢見た英雄や勇者への道は程遠い。
そんな彼が謎の影に誘われ突如、自分の過去へ転移させられる。
その機会はたった一度と告げられて。
彼は渇望する――。
今度こそ、この掌に尊厳と誇り、愛する者をと。
だが、運命の神はそれを許さない。大型魔獣との闘い、貴族邸への襲撃、勇者と共に挑むクエスト──思惑とは異なりルーギスは人助けに巻き込まれていく。何時しか念願とは真逆に元仲間の少女達から、歪んだ執着と愛情を向けられていくのだった。
昏く、熱き焔を宿らせて雪辱を果たす、一発逆転リプレイ・ファンタジー!
憎い過去と未来を変えるために、そして幼馴染の少女のために
えーーーーーーーーめっちゃくちゃ良かった!!!
パーティメンバーから虐げられていた青年が、神様のいたずらにより過去に戻ったので、未来が自分の一度経た未来とは違うものになるように動く話。
かんたんに言ってしまえばリプレイモノなんだけど、その中でも好きなのが、主人公の原動力の大半となるのが『救世主である男が憎い』ということ。
主人公は、ひたすら救世主の男の邪魔のために動く。例えばその男の周囲に集まっていた女たちが救世主のもとへと集まらないように、心を寄せないように。そのために自分はひどい目にあったのだから、救世主と彼女たちが出会いすらしないようにと動いていく。
そのために起こした出来事で彼女たちに次第に執着と愛情を向けられていくっていうのがもーーーーーめっちゃいい。ひたすら主人公は救世主が憎いだけで、むしろ未来(過去)で自分を虐げた彼女たちのことは好きじゃない。なのに好意は向けられる。この流れが最高に良い。
気付いててのラッキースケベとかも全然ない。彼女たちはそういう性格じゃないので。そして主人公はひたすらに幼馴染の少女が好きでっていうのもすごく良い。めっちゃ好き。
読んでいて、あざとさとかなく少女たちが主人公を好きになっていく理由が伝わってくるのがいいんだよな……。絶対に誰も助けてくれないと思ってたのに助けてくれた、そんなん惚れてしまうだろ。
そして主人公は未来を知っている。だからこそ彼女たちが将来はめちゃめちゃ強い人になるのを知っているので、ほぼ無意識で「あんたなら出来るだろ」的な発言をしてくれる。誰も認めてくれなかった自分をこいつだけは認めてくれる(実際は実力は認めているがめっちゃ嫌がられている)というの、そりゃ惚れるだろ……。
気になるのは、これだけ現在(過去)にいいやつだった勇者が、未来ではどうも女とっかえひっかえのクソやろうになっているっぽいんだけど一体どういう流れなのか。何が彼にあるのか気になる。