
プレイしている最中、ずっと「なんか変なゲームしてる……」「変だけど面白いゲームしてる……!」と言い続けていたゲームだった。
翻訳はところどころふわふわなので会話がおかしい。ネタを探して小説を書いていくゲームだが、日本語がふわふわなので、メインとなる小説自体も結構なところがおかしい。
でもストーリーもそれ以外の部分も、めっちゃ面白い。
自カプがマイナーだったりオンリーワンな人ほどおすすめ。
なにせこのゲーム、自カプが至るところに登場する。自カプの2人が壁面に描かれ、ゲーム内でちょこちょこと動き回り、ガチャが発生し、当然オンリーの同人誌即売会がある。
現実ではあり得ない、自カプがめっちゃ流行ってる世界を楽しもう!(血涙)
ちなみにゲーム感想記事なので、メインでプレイしているときの自カプではなく、ユラユラクララ(結良・主人公友人)とワメキイカ(詩子・主人公)のキャラを急遽作成してスクショしました。だいたい雰囲気を感じ取ってほしい。

どこの国でも同じだな!と笑ってしまうネタがたくさんのストーリー
ひょんなことから、自作の同人小説を保存していたUSB(作中ではハードディスクだけれどもおそらくUSBじゃないかなと思う)を大学の同級生に拾われた主人公。主人公の書く小説に惚れ込んだ同級生・結良によって半ば脅されるように小説を書いて彼女に見せネットにあげることを約束させられた主人公が、徐々に同人友達を作り、同人誌即売会に参加していく物語。
ろくに会話したこともない同級生に書いていた同人小説を見られる恐怖、何か創作をしている人間ならば誰だって一度は想像し(ときには経験し)怯えるだろうイベントなので、読んでいて異様な臨場感がすごかった。またこの同級生・結良の脅し方が本当にエグくてエグくて変な声出た……。
いやお前その脅し方は本当にめちゃくちゃ良くないです! 主人公がある程度ゆるくて許容できる性格だから無事に済んだだけで、そうじゃなかったら本当に冗談抜きで洒落にならない状況になってたよ! なんなら殴られてもしょうがないよ、公衆の面前で書いたカップリング小説の朗読は!!! やめてくれ!!
そんな友人の結良に脅されたインターネット同人活動だったけれども、書いた小説を読んで新作を依頼してくれる人がいたり、結良とともにネタ探しとして遊びに行ったり、結良とともに同人誌作成をしたりしているうちに、カプのTOだの厄介アンチだの神字書きなど様々な知り合いたちが増えていく。
この出会うキャラクターたちとの関係がまたいい味出していて、それぞれとの関係性が同人女の感情的な同人作家や読み手やアンチとしての強い感情が溢れ出てて良いんだわ……。
個人的にはカプのTOやってる読み手が良い味付けだなって。もともとは結良の発言などから声がでかいオタクのような印象を受けていたけれども、実際出会って話してみたらフレンドリーで誰にでも仲良く、オフ会を開催したりするようなアクティブな読み手。しかし過去にはそれなりにやらかしをしていて、それを反省した上で現在のポジションを取っている。
この過去のやらかしがインターネットで見た!!!! と言いたくなるようなやつで、どこの国でもやってることは同じだな!! 自分のやっていることが正しいと思い、他者を攻撃する。まじでどこのオタクもやることが同じすぎる。
また、この子は完全に読み専(と盛り上げ専)なのだけれども、彼女のような人も書き手たちとは違う方向でカプを盛り上げていると描かれているのも良い。そう、書くだけも十分楽しいけれども、それを読んで楽しんでくれる人がいるから楽しいんですよ、同人活動ってやつは。
その読んでくれる人がいるから楽しいの部分をかなり描いているのもこのゲームの良いところ。最初は結良にもっと読ませてほしいと脅されるところから始まり、彼女のエンドを見たときには「ええ話……いや待て……ちょっと怖くないか? でもいい話だ……」となりました。ちょっと怖いです。
主人公のおばあちゃん(同人歴40年のベテラン)が、同じような同人女たちと老人ホームやって暮らしているのも羨ましい~! 気の合う(合わない)(リバ戦争が発生している)(主人公受けかライバル受けかの戦いも発生している)仲間たちと仲良く暮らしていくのって楽しいよね。いや、戦いはちょいちょい勃発しているが。

これは細かいところなんだけれども、出てくるキャラクターたちのおそらくラインと思われるもののアイコンが、あ~~~~~わかる同人オタクこういうアイコンめっちゃ使う……すぎて本当に負ける。
飼っている猫のアイコン、めっちゃわかる。いる。めっちゃいるよそういう人。フォロワーに思い当たる人が一人ならずいる。
そういうオタクあるあるにも笑いながらプレイして、最後まですごく楽しかった。
簡単ながらも楽しいゲームシステム、沼らせてくるゲームシステム
ゲームシステムは簡単。1日のポイントを消費してネタを集め、体力や執筆するやる気を回復したり消費したりしつつ、集めたネタで小説を書いていく。こういうシステム、古めのフリゲでごまんと見たぞ。
特定のジャンルのネタを探すためには行動力2潰すところに行かなきゃならない、それより行動力1しか消費しないところで大量にネタを集めるか、それとも遠いところで依頼に合うネタを拾ってくるか? など、どこに行こうか考えるのも楽しかった。
ただこのゲームの面白いところはそこじゃない。そこも面白いけど。
主人公が描く小説のキャラクターは、自分が最初に設定した自カプの二人で描かれる。
なんとこのゲーム、開始時に自分で推しカプのキャラクリをする必要がある。主人公のキャラクリは名前だけだけれども、推しカプは外見から一人称まで様々な部分が変更できる。

どのような変更ができるかは、steamのワークショップで他の人達があげたキャラクターを見るとだいたいわかる。なんというかこう……見覚えのあるキャラクターがめっちゃいるんですが……。見覚えのあるキャラクターもめっちゃいるので、自分でキャラクリやるのは難しいよなーって人はここから選んだら早いかもしれない。見覚えのあるキャラがすっごくいっぱいいるなあ……。
ネタを集めて書かれる小説は、前述のとおり日本語訳がガバなので彼/彼女や私/俺、男言葉女言葉もガバガバもガバだけれども、なんか知らんパロや知らん要素の話がアホほど出てくるのが面白すぎる。
これはかなり日本語がマシなほうな文章。

様々なジャンルに合わせるためにパロがメインとなるのだけれども、それも学パロ・警察パロ・芸能人パロから獣化やオメガバース、センチネルバース、更には日本ではあまり見られない武侠や仙人まで多岐にわたる。いや武侠や仙人ってこのゲームで初めて見たんですけど。他国ではよくあるやつなんですか……?
笑ったのはバトロワパロ。当然首には爆発する首輪をつけて、相手を殺すことなど出来ないと二人で一緒に禁止区域に入って心中します。個人サイト時代に無限に見たやつ。どこの国でもウケるパロは同じなんだなあ……。
日本語は確かにおかしいんだけれども、この小説部分も謎にクセになって延々と出してしまった。
そしてアップするとコメントが付く。ツイッターっぽいサイトのユーザー名が死ぬほど見たオタクの名前で笑う。

そして小説を書いて公開するとお金が入る。これはデベロッパーの国のシステムなのかな。日本はあんまり無いよね。国内だと一次創作ならたまに見るシステムだなあという印象。
アップする小説は、流行に乗っているものほど反響は大きく、流行とはかすっていないと反応は小さい。反応が小さいとお金の入りも小さい。流行関係なく小説をアップしてコツコツフォロワーと金を稼ぐか、それとも流行に爆乗りしてがっつり稼ぐかを考えることになる。普通に流行に激乗りしてがっつり稼ぎます。
更には書いてほしい内容を依頼されたりもする。オメガバースで甘い小説を書いてください、現代モノでドラマチックな小説を書いてください、など。それに答えても多めのお金が入ってくる。
この集めたお金で推しカプのガチャを回せるのが、このゲームのヤバイところ。
このガチャ、前述の自カプの画像を使って、自カプがバンドパロしてたり怪盗と警察パロしてたり幼稚園児パロしてたり猫化してたりする。もう何がなんだかわかんないんだよなあ! 最初にキャラをカスタムした理由がひしひしと伝わってくる。リアルには絶対に存在しないがあったら破産するガチャを大量に出して来るな……。マイナーカプほどおかしくなりながら延々と金を稼いでガチャを回し続けるハメになる。

更には自カプの缶バッジやラミカを作成して他の人たちと交換したり、自カプがたまごっちみたいなものになっているミニゲーム詰め合わせが出てきてスイカゲームや謎の音ゲーもどきを延々とプレイしたり、仕分けゲーを気づいたらひたすらやってお金を稼いでいたりと、メインのゲーム以外の部分もひたすらプレイし続けてしまう。
ちなみにわたしはリアルでもグッズ系にあまりに興味がなさすぎるオタクで、ゲーム内でもメルカリに手を出すことなく終了しました。痛バも缶バッジも、それをやることで開放できる要素がなかったらやらなかったとおもう。本当にまるで興味が起きない。そんなところゲームとリアル重ねたくないなあ……。
日本と中国の同人文化の共通点と相違点
デベロッパーは中国と見たので、おそらくは中国の文化が色濃く出ている。日本と同じだなと思う箇所もあれば、全く違いすぎてほえーとなる箇所も多くて、それもまた面白い。
前述の通り、パロの傾向がまず面白い。オメガバースやセンチネルバース、芸能パロといった国内でも良く見るものもあれば、仙人や武侠といった今まで生きてて一度も聞いたこともないパロも出てくる。な、なんすかそれ……。衣冠塚って何!?
TO的な子が開催したお茶会っていうのはおそらくオフ会的なものなのかな? だったらなんとなく理解できるかも。
でも印刷所に調査が入って同人誌が印刷できなくなるというのは本当に全く知らない文化だ……。まじであるんですか……?
こういった全く知らない文化とは別に、ゲームの設定として存在しているあまりに圧倒的な苦手なもの回避システムが、ど、どこの国のオタクも同じだ…… と変な笑いが出てしまった。わたしは苦手なものが多いオタクなので様々なNG設定をいたしました。どうも、三角関係もモブもNGのド固定左右固定カプ厨です。
あまりに丁寧な配慮。


作中で出てくる自カプのイラストも左右を交代できる。例えばAがメイド服でBが執事服のイラストだったら、Bがメイド服でAが執事服に交代できる。このあたりは顔すげ替えで出来ているとはわかっていても、配慮がされている……と感動してしまった。わかる、そこらへんは完全に解釈の世界だからね……。
小説も名前のAとBの部分を逆にすることが出来、こちらも解釈違いへ丁寧な配慮が行われている。ありがとうございます、死ぬのが受けか攻めかで世界は変わってくるからね。
これは何故か記憶が「知ってる……!」と叫ぶガチャパロの画像。


シナリオとしても、解釈違いや他カプでよく行われている解釈で描かれた作品への嗅覚、そこから始まる争いなど、ああ~~知ってる、知ってるよそれ……と思うものが多い。あまりに多い。
めちゃ神書き手が発生したら自分なんかもう書かなくて良くない? となったり、自分の作品を好きだと言ってる人もそっちに行っちゃうんじゃないかと考えてみたり。でもその神書き手が自分を好きだと言ってくれたらめちゃくちゃに嬉しかったり。周囲がみんな特定カプに対してアンチしてて文句言ってるからと自分も言ってるけれど、でもその書き手のなかに好きな人が出来ちゃったり。
オタクってどこの世界も変わんねー! と思える要素も盛りだくさんで、読んでてとにかく面白かった。
シナリオのメインクリア後もプレイは続けられるし、小説のネタ集めも続けられる。いや~~~ほんとうにめっちゃ面白い。知ってる知ってる!と、なにそれ知らん!と、そういう感情あるよね~!の繰り返しでプレイしていてずっと楽しかった。
シナリオ自体はゆっくりめにプレイしても10時間程度でクリア可能、でもわたしはこれからガチャと小説のネタ集めの旅に出ます。