アニメされど罪人は竜と踊る 全話見た感想
そういえばニコニコ動画で全話見たのに感想を書いていないなと思い出したので感想。
ちなみに全然褒めてない。
感想を書いている人はガガガ・靴どちらも全巻既読済み。
アニメは1話はアマゾンビデオ、2話以降は全部ニコニコ動画で見た。
良い部分の抹消
アニメ化不可能!と言われていたのはある意味事実だったなと思わされた。
原作の良い部分として、科学と魔法の間の子みたいな咒式の存在、ガユスとギギナの小気味良い皮肉のやりとり、戦闘シーン、絶望へと叩き込む流れなどがある。けれどこのアニメはその殆どをなかったコトにしていて逆にすごい。なんでアニメ化した?
咒式について
咒式。これは魔法にまで近づいた科学だ。
戦闘時の描写としては、作中では爆炸吼(何回かガユスが使ってた爆発するアレ)を使う際にはトリニトロトルエンをなんたらだとか小説では細かく描写がある。けれどアニメではどーん。科学ではなく魔法にしか見えない。雷霆鞭も原作中ではある程度説明がされている。
もちろんそのすべてをアニメでやれというのは無理がすぎるのもわかる。わかるけれども、せめて化学式を一瞬魔杖剣の前に映し出すだとか出来なかったのだろうか。何してるのかわからない、ただの魔法になっている。
またこれは1話の感想にも書いたけれど、竜の結界をどうにかするためにギギナが剣を突き刺し~などの流れも全くわからなかった。これ以外にも、原作ならばガユスの一人称で進められる地の文で描写されているが故に絵面だけになるとどうしようもない、だったら台詞入れるなりテンポ悪くなろうともエンディング後にガユス先生の咒式解説なノリで入れるなりなんなりしろよと思った。
ガユスとギギナの会話
ガユスとギギナの皮肉の応酬も大半がカットされていた。というか棚怪人のあたり、どうしてそこをカットした!? その場所だけ残したら会話がつながらなくない!? みたいな中途半端な残し方すぎて消化不良というよりも意味不明。
なんとなく原作で使えそうな場所のみを拾い上げたらこうなったんだろうか。文章を読まずに拾ったんだろうか、という気分。
スカした二人組が言い合いする話、として見るも二人の会話が減らされすぎ、日常のやり取りが雑にカットされすぎ。
代わりにジヴとのやり取りは残しているものの、こちらもなんでそこを残した? すぎる。ガユスが寝言でクエロを呼んでしまってジヴが問い詰めるあたりのシーン、ガユスがジヴに対して「お前なんて遊びの女だよ!」という部分がないので、なんでこいつ突然謎の自己嫌悪なってるん……? と不思議になる素敵仕様。
戦闘シーン
戦闘シーンのカットがすごかった。
前述の通り咒式シーンはバンクを使用するなどしている、ガユスの1巻の見せ場である光の紡ぎ手戦オールカット、2巻でギギナとガユスが鎖で拘束されたものの咒式を使わず腕力などでなんとかして交渉の場につくシーンでなんとかするの部分をカットされたため拘束されてるのにイキがってる状態への改変、アムプーラ戦をカットするためにベイリックらの会話がオリジナルシーンとして追加という錚々たる 錚々たるどうしてそうなった……。
アムプーラ戦のほぼカットは驚いた。ニセの指輪投げるガユス好きだったんだけどカットされた。驚いた以外のなんと表現すればいいのかもう何もわからない。話タイトルになったのに存在がカットされた光の紡ぎ手さんは合掌するしか無い。
そこまで戦闘シーンを削りたいのならば、戦闘シーンのないラノベをアニメ化するべきだったのでは? なぜアニメ化した? という気分にすらなった。特にアムプーラ戦。
絶望へと叩き込む流れ
ドーチェッタも昔はまともな人だったけれどもウルムンの民の選挙ではどうしようもないとわかって圧政になった(確か)の流れがあることで読者側は正義とは一つではないかもしれないレメディウスもいつかはドーチェッタとなると思うようなアレは抹消された。
あれ最初に読んだときの絶望感半端なかったんだけれどもそんなものはなかった。
見るならニコ動で
良い部分は抹消と言っても、一応アニメとしての良い部分はある。レメディウスとナリシアの最終シーンで「あなたと」「きみと」の声が重なったのは良演出だと思ったし、レメディウスの死ね死ね部分で回想が入るのもうまいと思った、けれどもそれ以外がもうとにかくひどくてなんでこんなのを見ているのだろうと思った。
この「なんでこんなのを見ているんだろう」と思ったときに有難かったのはニコ動のコメント職人さんの存在だった。
この部分ではこのシーンの追加、ここではこういったシーンの追加などをコメントで解説されている人がいた。あの人がいなかったら見るのをあきらめていたかもしれない。
ここまで「見るならニコ動で!!!」と強く勧めたい作品はそうそうない。コメント職人さんありがとうございました。というかこのシーン普通カットしない。しちゃいけない。
どうやらアマゾンを見る限り、円盤特典小説はかなり良いものっぽい。けれど1万近く出して読みたいか? と言われたらガガガ文庫は比較的再録をすることを考えたら迷わずNOだし、何より面白くもないひどい脚本のアニメだろうと小説つけときゃ売れるだろって思われたくないので買わない予定。
あと1話で終わると思ってたときに放送された最終話、どうしてそうなった!? クエロなんでエロスーツになった!? とブチ切れたのが忘れられない。というかクエロ、アサルト時代は髪の毛長かったはずなので髪型からしておかしい。
本当に、ひたすら徹底して原作の良い箇所を潰し、ろくでもない箇所ばかり増やし、戦闘にかけるコストを限界まで減らそうというのが見えるアニメだった。こんなものならアニメ化しなくていい。原作を見てくれ。
情報の省略方法だったら、今は手に入らないスニーカー文庫版のドラマCDが良い。
この長い原作をどうにか短い尺の中に収めようとした結果、ジェノンくんの存在抹消が行われたり、他にも様々な箇所が消されている。だがそれでもいい。物語の大筋はちゃんとわかるし、有名声優が使われているので友達に「この声優さん好きならこれ聞いてみて」ということが出来たし、咒式の使用についてのあらも(映像がないからこそ)出ない。
対して、今回のアニメ化は、ひたすら『原作でアニメ化するのにコストのかかる箇所を削ろう』『結果、会話がつながっていなくてもしょうがない』という部分が見える脚本と演出だった。脚本も演出もやる気がないのか?と言いたくなるぐらいにひどい。
ガガガ文庫版のドラマCDは、2枚組だけあってまあ分量あったらこれぐらいはできるでしょうね、という、脚本は割とそのままの部分が多いので、それも相まってスニーカー文庫版のドラマCDのほうがすごいと思った。
ちなみに声優はガガガ文庫版のスニーカー文庫版も一緒。これは純粋にすごいと思う。
結論として、アニメ見なくていいから漫画版は読んで欲しい。
個人的に好きなコミカライズはスニーカー文庫時代に出た灰原薬版コミカライズなんだけどこれももう入手不可なんだよな。こちらは原作の短編のみをコミック化しているので1話1話軽く読みやすかった。ちなみにこの時期にはまだ文庫化していない、雑誌にしか掲載されていない短編も載っていた(その後ゴタゴタがあったのかしばらく文庫未収録だったので雑誌を手に入れないとこれの小説版は読めなかった)
対してガガガ文庫移籍後のコミカライズは、1巻の内容を漫画化したもの。
アニメの内容をまともな形で復習したいしラノベは読みたくねえというならこちらのほうが良い。
何が言いたいって、結論としてはこんなアニメ作るんじゃねえということです。