「うちのお嬢様が破滅エンドしかない悪役令嬢のようなので俺が救済したいと思います。 (カドカワBOOKS) 古森 きり」
あらすじ
伯爵令嬢の執事である俺・ヴィンセントは、ある日突然この世界が前世でプレイしていた乙女ゲームで、さらに自分が仕えるお嬢様が悪役令嬢として非業の死を遂げることを思い出す。
は?ふざけんな。お嬢様は確かに愛想笑いすらできない方だが、死んでいいはずがない!
そんな事になるなら、俺が彼女を救って幸せにしてみせる!
…え?俺も攻略対象キャラだって??い、いや負けねー!!
敬愛するお嬢様の破滅フラグを折りまくる、俺の異世界転生コメディ!!
笑い下手な少女を、親戚のお兄さんのような立ち位置で支える物語
主人公の立ち位置がすごく良かった物語。
享年25歳の主人公が、自分を救ってくれたお嬢様を性的な目線で見ることなく恋愛的な目線で見ることなく、ひたすら『自分を救ってくれた相手』『笑うのが下手だけれども正義感が強く素敵な箇所がたくさんあって他人に誤解されやすいかもしれないけれどもとても素敵な女の子』『10歳にしては責任感が強く正義感がある、重荷を背負った女の子』『守ってあげたい女の子』として見ているのが最高。
流行り病で高熱に魘されたことにより過去の記憶を思い出した主人公。この世界が前世で遊んだ乙女ゲームの世界だと認識したと同時に、自分を流行り病から救ってくれた少女の使用人となる。
そうして仕えた彼女は、笑うのは下手だけれども正義感が強く、おかしなことはおかしいとはっきり言えるような少女。思い出した記憶の中でプレイした乙女ゲームでは、彼女は悪役令嬢として死亡エンドや滅亡ルートばかり。敬愛するお嬢様をそんな目に合わせられるか! と主人公は自分の記憶をたどって彼女の滅亡ルート回避に頑張りだす。
冒頭にも書いたけれどもこの主人公の立ち位置がすんごく良い!
記憶は若干思い出していない箇所があるとはいえ、年上の視点からほっとけない女の子を見て守って助けてあげようとしているというのがあってすっごく良い。
実際、呼んでいるとこんな良い子が破滅するのは間違っている!と思えるんだよなあ。主人公=悪役令嬢ではなく、主人公=悪役令嬢のそばにる執事だからかもしれないけれど、(主人公がお嬢様可愛い!という過保護視点があるとはいえ)いくらか客観的な視点で見られた。
しかし、だからこそ主人公も言っているように、なんでこのお嬢様が乙女ゲーの本編ルートのあんなことやこんなことをして破滅へ導かれてしまうのか?とも思う。
どう考えてもやらなそうすぎるでしょ。一体何が起きるというのか。むしろ天と地がひっくり返っても発生しなそうだけれども。
主人公の良いところは立ち位置だけじゃなくて、彼女のために自分を磨けるところ。
主人公は料理や格闘を覚える。乗馬してたったか移動してしまうお嬢様を追いかけるために乗馬のスキルも身につけるし、お嬢様に飲んで頂くためにお茶も淹れる。
それらの大半は主人公が生前から身につけていたスキルだとか、ゲームのプレイヤーとして得たスキルではなく、主人公がお嬢様を助けるために身に着けたものだ。敬愛するお嬢様に仕えるために彼女に必要なスキルを身に着けていく主人公、すっごく格好いい。
そして、美味しいご飯が作れるので持てる。男たちに。腹をすかせた男子攻略対象たちに。モテる。攻略対象たちも腹をすかせた高校生(ぐらいの年齢)だもんな……そりゃモテるな……。
それにしても終盤に出てきたとおり、この国、お嬢様の破滅を回避しても次期女王があまりの暗愚すぎて国滅亡ルートが待ってるんじゃないだろうか。
お兄ちゃんがいないと嫌だと言い張り自分の立場を理解し持てる権力を好き勝手使う鳥頭のアホ王女、早めにつぶしておかないと国が潰れるぞ。
潰せる立場の親父も戦争したさに子供たちほっぽってるけど、このままだと確実に国が潰れるぞ。
とはいえ、王女については主人公以外がなんとかできるだろうけれど、お嬢様については主人公しかどうにかできないんだよなあ。
むしろ、主人公が筋を知っているのは乙女ゲーのルートだけなんだし、王女にかんしてはほっとくしかないんじゃなかろうか。
読んでいてめっちゃ面白かったので続きも読みたい。