好きって言えない彼女じゃダメですか? 帆影さんはライトノベルを合理的に読みすぎる (角川スニーカー文庫) 玩具堂

★★★★☆

あらすじ

無言の『好き』に萌え死に必至!? ちょっぴり不思議な青春ラブコメ!

「恋人同士、ですか? よく解りませんが、それでよければ」
僕の彼女、帆影歩は少し変わっている。無口で無表情が基本な上に「人=哺乳類=おっぱい大好き」と、平然とトンデモ理論を語ってくる。さらに僕の足の甲を愛撫してきたり、入浴中の裸の画像を送ってきたり――って帆影?当初は清純派文学少女だったよね!? おかげでなぜか妹の映が心配?してきて、言葉責めに合うようになったのですが!?(妹よ、お前は何なんだ)
そんな帆影も“普通彼女”を目指してはいるらしく、参考にしているのは……ら、ラノベらしい?(なんか期待しちゃう)
彼女と妹と僕。ラノベを通じた不思議な三角ラブコメ開幕!!

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こんな人におすすめ

  • 可愛い彼女との静かな青春が見たい人 (ドタバタラブコメではない)

物静かな彼女との、静かな雑学ライフ

というかAmazonのあらすじを見て読むと違いすぎててびっくりするな。たしかに風呂の最中の写真を送ってきたものの、これはタブレットのカメラの使い方が怪しいからと言う理由だし、愛撫も完全に勘違いからだろう。
妹も関わってきてはいるものの、特段三角関係ではない(妹は主人公に対して恋愛感情を一切持ち合わせていないし、主人公は文芸部少女にばっちり惚れているのでそれ以外はありえない)。

ある日突然「ライトノベルのことを教えてほしい」と言い出した、オタクの兄を嫌がっているはずの妹。
しかしオタクとはいえラノベ方面にあまり詳しくない主人公は、妹を自分の文芸部に連れていく。
隣の漫画部のツインテール少女や文芸部員の物静かな雑学少女と話し合ううち、妹は不承不承ながらラノベというものを理解しようとする。
でもあの文芸部員は変な人!という妹に、主人公は告げる。
あの人は自分の彼女なのだ、と。――というお話。

最初は妹の出番が多いのでてっきり妹ラノベかな?と思いきや、主人公はまさかの彼女持ちであった。
その彼女は、まさかの雑学少女、ぶっ飛び理論持ちの文芸少女。

二人の関係は、文芸少女の雑学と理論と発想の合わさった八艘飛びのような自論を主人公が合いの手をいれつつ聞くという関係。
ぱっと見彼氏彼女には見えない二人だが、主人公は彼女に静かにベタ惚れ、彼女のほうは分かりづらいけれども主人公が大好き。

「本の拍子やポスターで女性の胸を強調するのは、おかしなことではないと思いますよ」

ここから始まる理論は、読み始めは正直『あ~~~……ラノベにあるある、女のおっぱい強調オッケー理論ね、はいはい、都合良くエッチなこともオッケーな女キャラや中身おっさんの百合キャラによくあるよね』みたいに思っていた(ごめん、でもよくある)。

「それが本当なら、戦国の風雲児織田信長――彼は、人類を人類たらしめるおっぱいモラトリアムを人一倍長く堪能したエリートだったってことだよ。
 そんな信長の人となりを思い出してみてよ」

こんな荒唐無稽な流れに最終的になるというのに、読みながら何故か納得している自分がいた。

理論がA→B→Cと流れていくにしても、A→B、B→Cは理解できる。でもA→Cはまったくもって理解できない。
飛びまくりの理論を読んでいくのが面白い。同時に、彼女が周囲からちょっと不思議ちゃんとして見られているのもなんとなく理解が行く。

萌の話から人類の存続の話までつなげるような斜め右上にかっ飛んでいく彼女の話、それを最高の合いの手でどんどん続きを聞いてくれる主人公の凸凹の噛合っぷりよ。
こんなふうにかっ飛んだ話を丁寧に聞いてくれる人が居たら誰だって嬉しいだろうし、好きな人がこんなに嬉々として面白い話をしてくたらそりゃ面白いだろう。
とても良い、お似合いの二人のお話だった。

静と動が分かれた物語

この物語は静と動のヒロインに分かれている。
静のヒロインは前述の通り文芸部少女である主人公の彼女。
そしてもうひとり、恋愛的な意味ではなく物語の女主人公的ないみでのヒロインが、主人公の妹だ。

物語の前半は、主人公の妹が文芸部に行き、ラノベというものを教えられ、そして主人公に「なんであんな人と付き合っているの?」と訊いてくるので主人公が彼女との馴れ初めを思い出す流れで構成されている。
そこでまぁ可愛い初々しい可愛いイチャイチャ流れが話されるというか、惚れるとこ可愛すぎでしょーーーーーーーーー!? 元々かなり好感度高かったとこであんなことされたら落ちるじゃんーーーーーーーーーーーー!!!!!!!

その部分自体を読んでもそこまでググッとくるシーンじゃないのに、ここまでの流れを一気に読むと心臓に刺さる、そんなすごい可愛いシーンだった。
ああもう、文芸少女……可愛いよ……最高に可愛いよ……。
この可愛さは主人公の視点だからというのもあるんだろうな。妹の視点だともっとわけわかんない女になると思う。

閑話休題。
そして、後半は妹が主人公に助けを求めた理由である、妹の友人のことだ。
好きでもなんでもないが、友人が好きならばちゃんと知りたい。仲直りするために勉強しなければならない。
そんな妹と仲直りさせてやりたい兄のハートフル家族物語となる。

この静と動のダブルヒロインの動きが良いんだよね。
文芸少女といるときのシーンは会話劇がメインとなり(彼女がとんでもない理論を話しているのを主人公が目を輝かせて聞いているのが二人のメインの交流なのだから当然といえば当然)、妹がメインのときは彼女が友人と仲直りするためにあれこれしようとする話となる。

正直な話、この妹はあまり好きではない。
端っからラノベというものを嫌っていて馬鹿にしていて(それが友人と喧嘩した原因でも有るのに治そううとはしていない)偏見を隠そうともしていない。
いくら兄とはいえラノベをある程度読む人がいるのに見下しているのを隠そうとすらしない。
おまけにラノベに対する嫌悪感は他人からの受け売りばかりで、彼女自体の思考ではない。
何もかもがひでーなと思うが、それによって文芸部少女との会話が広がっていくからまあ……まあ……うーん……。

とにかく、荒唐無稽じみた理論を繰り出す文芸部少女の持論が楽しく、また主人公との静かなカップル具合が素敵なラノベだった。
落ちまで含めて最高。

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