「半翼の逃亡者 (富士見L文庫) 永野 水貴」

★★★★☆

あらすじ

翼を持つ民が住む北部と、翼なき民が住む南部。相争ってきた両国間でついに和平交渉が始まった。
その席で、北部の女性外交官フェリータは、同じ和平への志を秘めた南部の大使アンドレアと出会う。
立場を越えて信頼を深める二人だったが、その彼は今、物言わぬ姿でフェリータの前に倒れていた。

捕縛された彼女の無実の訴えは北部への憎悪にかき消された。
絶望するフェリータ。その前に現れたのはアンドレアの亡霊だった。

戦争を回避するため、真実を求めて逃亡するフェリータとアンドレアが辿り着いたのは―。

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目が覚めたら、目の前には死体があった。

めちゃくちゃおもしろかったー!こういう話大好き。
目の前に死体があることから始まる真相探しの話。ミステリーというには読者側に対する証拠の提示が甘いというか少なすぎるけれども、それでも一体誰が犯人なのかと物語を追いかけていくのはものすごく面白かった。

ミステリーものといえばホームズとワトソンのバディだけれど、この話において主人公のアシスタントをするのは死んだはずの彼の幽霊。
自分の死ぬ直前の記憶がない彼とともに真実を探る流れが面白かった。
犯人探しものにおいて、ありがちかもしれないけれども「自分が最重要容疑者」「追われる立場」「○日後までに真犯人を見つけなければとてもやばい状況」というのはとても面白い。

物語は、和平のために交渉していた相手である相手国の大使が目の前に転がっていたことから始まる。
自分は彼と志を同じくしているから殺すわけがない。だがそれを理解している人はほぼいないし、何よりも彼の死体が他の人たちにも見つかった時、自分は凶器を握りしめた上で彼の死体の前にいた。この状況で殺人犯ではないと言ったとして、一体誰が信じようか。

まったくもって絶望的な状況から始まる物語。しかも主人公は相手大使に対して「この人ならば信じられる」とかなりの信頼を持っていた。この時点で主人公の精神的ダメージもかなりのもの。
しかしこのまま放置しては自分が犯人にされてしまう。そして、自分と彼の悲願であった自国と相手国の同盟も水泡に帰してしまう。
真犯人を見つけなければ――と逃亡するも捕まってしまった主人公の目の前に現れたのは、殺されたはずの大使の幽霊だった。

幽霊になってしまった彼に出会ったときの主人公の、呆然としつつも嬉しさは隠しきれないあたりが、本当に彼女は大使のことを信じていたし信頼できる相手と思っていたんだなあ……としんみりしてしまった。
会えたのは嬉しいけれども相手はどうやっても幽霊、生きている人じゃない。真相を探したところで主人公は罪から開放されるが、彼は死から開放されることがない。物語が進むにつれて主人公はどんどん大使に人として惹かれていくのだけれど、それによってこれから先訪れることが確定している別れの未来がどんどんしんどくなっていった。地獄か。

主人公は、自分は空っぽだ、目指すものがないから父の願いを継いでいると言っていたけれど、どうみてもその動きのめざましさや青臭さは父の願いだからだけではないよね。大使が途中で言っていたように、彼女自身は全然空っぽなんかじゃない。

大使と同じにはなれないと言う主人公のラストがすごく良かった。
ものすごく好きなタイプの物語だった。

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