今どきにバージョンアップされたオタクあるある物語「腐男子先生!!!!! (ビーズログ文庫アリス)」瀧 ことは
あらすじ
私の同人誌(BL)を買いに来たのは、学校の先生(男)でした。
ごく普通の腐女子・早乙女朱葉のスペースに同人誌を買いに来たのは、ごく普通の腐男子・桐生和人。
ただひとつ、ごく普通と違ったのは、二人は高校の教え子と教師だったのです――。
イケメン生物教師の真(オフ)の姿がもっさり残念メガネ男子かつ同じ沼の狢……だと……!?
そう、これは――教え子を神(絵師)と讃えるイケメン腐男子先生と、とある腐女子の物語。
桐生:「今週の雑誌にマジ神コマがあるので審議したい」
朱葉:「それな」
こんな先生に教えられたい!? 共感しすぎるオタクラブコメ登場!!!!!
今どきにバージョンアップされたオタクあるある物語
イベント会場に来たファンを名乗る腐男子が、実は学校の先生だった! ということから始まる物語。
うわー、めちゃくちゃおもしろかった。何がおもしろいってオタクあるあるネタが現代ものとしてちゃんとバージョンアップされている所。
例えば最近読んだBLの兄弟にはなれないが攻めが漫画家なお話だったんだけれど、作中では攻めのアナログ漫画作業を受けが手伝うシーンがある。この本自体が2011年発行なこともあるけれどもどうしても古さが拭いきれなかった。
今ぱっと思いついたのがこれだったので出してきたけれども、割と最近かかれたモノでも漫画作業はアナログってのはある。
たしかにアナログ作業だと素人キャラにも消しゴム掛けとか手伝ってもらえるから共同作業という意味では便利だけれど、しかし今どきアナログ……?という感じがある。
この本はその点の処理が異様にうまい。
主人公は高校生。本人の私物としてのパソコンはない。そして、家族共用のパソコンは親の寝室。
一瞬で納得した。アナログです。アナログが正しいです。間違いなくアナログで原稿やります。ハイ。
他にも、腐男子である教師にホモかと問うが、逆に教師からプリキュア(によく似た別の作品)の推しCPは?ではあなたはレズビアンか?みたいな問いかけをされたりと、腐女子あるあるの現代へのアップデートが非常にうまい。ちょっと前の腐女子キャラってたいてい身近な同級生でBL妄想したり本出したりするみたいなシーンが普通に入ってたからね……少なくともそれを本人に告げるのはあんまりないよ……。
それだけじゃなくて、オタク有る有るネタが諸々あって、そのあたりも読んでいて共感しまくり。例えば応援上映。チケット譲渡。ツイッター監視。ネトスト。いくら友人のように楽しくお喋りしたり作ったものを見たりしていても、やっぱりどうしたって神は神。尊敬する人だし自分のものすごく好きなものを作る人。そういうの、読んでてなんだか良いなあ……と思ってしまった。
いくら楽しくお喋りしたり萌語りしても、神はどうしたって神で、神が描いてくれた絵や書いてくれた文章は最高なんだよな。主人公がくれた冷えピタにかかれていた絵にめちゃくちゃ興奮してどうやって取っておくか本気で考える腐男子先生、めっちゃわかる。気持ちがすごくよくわかる。いくら距離が近くても神はやっぱり神である。
物語は、距離の近い友人というポジションから先生の頼れるところを見ていくにつれ次第に主人公が恋をして~という流れなんだけれども、個人的に先生と生徒の恋愛は倫理!倫理!とアラートがなってしまうのでどうなることやらと読んでしまった。昔はそんなの気にせず読めたのにね……年かな……。
年齢の離れた二人の恋愛、どうしても対等ではないと思うし、憧れが恋になっている部分も有ると思うのでこの歳になると素直に読めないな……。難しい……。
最終的な落とし所が、互いを推しにすることで他に相手を作らないというオタクならではのやり方、なおかつ正直先生はちょっとずるいかなーと思うやり方だったので一安心だった。
個人的にはマコトとキングの関係性はかなり好きで、恋人であり神ってなんか……強いな……すごいな……と思ってしまった。