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成長は特に無いネトゲモノ
ネトゲモノのポイントって仮想現実と実在の自分の差であり、現実では出来ないことをすることだと思う。現実の自分とは違う何かになる。そして現実とは完全に切り離した世界である。
……という割とありがちなテンプレを真っ向からぶち破っている本だった。
この世界では、現実の自分とは5%程度しかネトゲ世界の自分は変えられない。
ネトゲに使うアイテムは個人所有のアイテムとはちょっと思えないような物体なのでそういうのを追いてあるネカフェでみんなプレイする。
ネトゲ世界の憧れの存在である妹姫が後輩であると、あまりにしょーもない出来事で速攻でバレる。
いやいやこんなんありかい。
と思うような、ネトゲモノのお約束を華麗にぶっちぎって、そんなんありかい……でシメていくラノベだった。
うーん……面白いか面白くないかで言えば微妙。だからこそ目新しい、というわけでもない。ネトゲ世界でこうだから現実ではコウであるという面白みももそこまで無い。あえて言うならば2巻の女装王子周りが割と面白かった……? これは私が女装王子が好きだからかもしれない。
ネトゲモノであったはずなのに、どんどん現実の占める割合のほうが多くなっていくのもいただけない。1巻はほぼネトゲの話なのに、2巻はオフ会、3巻はリアルイベだからね……。2巻はまだネトゲ世界での行動もあったけど3巻はほぼ完全に現実オンリーだからね……。うーん……。
現実世界の割合が多いならば、現実での彼らは変わるのか、と言えばまたそれも違う。
3巻で現実世界でもアリスが出来るように頑張る後輩へ協力する部分では、もしかして「ネトゲも良いけど現実も良いよね」という流れかな、と思ったんだけど、まさかの「ネット世界サイコー! 俺たちはネット世界が好きだ! 現実では無理だからネット世界でうまくやるぜ!」で落としてくるとは思わなかった。思わないでしょ!? 普通そうじゃないよね!? 結局なに成長したの!? 主人公が生徒会長の彼氏じゃないってわかったことかな!?
本当に、そういう……そういうんじゃないんだよ……という部分の多い本だった。
ヒロインのアリスの性格の悪さも気になった。
これが2013年の本だからそういうブームがまだあった時期だししょうがないのかもしれないけれど、主人公が全く悪くない出来事でも主人公を悪いといい、罵りまくり、悪役とみなして悪く言う。こういうキャラが好きじゃないので読んでいてうーん……という気分。ツンデレにしてもかなりきついラインだった。
アリスよりも他のヒロインのほうが可愛い。
特に女装王子。主人公のことが好きで、優しくて朗らかで気が利いていてちょっぴり意地悪なところもあってとめちゃくちゃ可愛かった。正体がわかってからの彼女は本当に可愛かったな。
ナユタ周りはもうちょっと焦らすのかなと思ったら意外とあっさりバラしてた。1巻でGMなんだろうなと思わせて、これは物語に深く関わってくるのか?と思ったらかんたんにふつーに流れていって……嘘だろ……。ナユタ関連は本当にいくらでも面白くなる下地があったのに、全部アリスのせいで流れていった印象。もったいない。
なんというか、読み終えてからうーん……この本は何が面白かったんだろう……と思ってしまった。