「不敗の名将バルカの完璧国家攻略チャート 1 惚れた女のためならばどんな弱小国でも勝利させてやる」主人公とヒロインのやり取りが小気味好い

★★★★☆,HJ文庫ファンタジー,両片思い,主従,幼馴染,恋愛,戦記物,戦闘,新人賞,身分差

あらすじ

天才将軍は戦場全てを支配し勝利する!

帝国軍の侵略により、小国カルケドは滅亡の危機に瀕していた。
だが、『女の子にモテたい』という動機で戦う天才将軍バルカの登場により、戦況は一変!!

  「難攻不落の城をわずかな兵で攻略せよ」
「大貴族の内乱を解決せよ」

という王女シビーユの難題の数々をバルカは涼しい顔でこなしていく――

「万一の状況も予測して、布石はすでに打ってある」

明るくチャラい『不敗の名将』は、惚れた少女の為に勝ち続ける!!
女好き天才将軍の一発逆転ファンタジー王道戦記、ここに開幕!!

面白かったー!
主人公が策士タイプ故に指揮官として他人をうまく動かすキャラなのが好き。
新人賞らしいけどかなり面白くね?と思ったらもともとスニーカー文庫で出してた作者さんなのか。なろうとかじゃなくて普通にデカ目のレーベルから出してたのに別の賞で出直すっていうのも不思議な感じだな。

策士タイプの主人公

策士であり、多数居る部下をうまく活用したり、事前に準備をしたのをうまく利用するタイプの主人公の戦い方が格好良かった。

もともと本人がめちゃ強チートタイプのキャラよりも、能力自体は大したことないが策を練って勝利する大番狂わせタイプのキャラに弱いんだよね。
主人公のバルカがもろにそのタイプのキャラで、故に『名将』。部下たちをうまく配置し、うまく指揮して勝利するタイプのキャラで格好良かった。

女好きキャラだけどその実好きな子一人な理由がかっこいい

主人公は事あるごとに女の子を口説いては袖にされるキャラ。女好きなのにチャラいし誰にでも言うから全然信じてもらえない、ように見せかけて実際はヒロインたちは主人公のことを憎からず思っていて……という子たちが集まっている。
でもヒロインたちほぼ全員、主人公の本命が誰かわかっているっていうのが面白かった。

タイトルにも『惚れた女のためならばどんな弱小国でも勝利させてやる』とあるとおり、主人公がこれだけめちゃくちゃ戦う理由はほぼ相思相愛のヒロインである王女のため。彼女に幼少期にモテモテの男が好きだと言われたから持てる男になろうとしているというのまで出てきたところで、あーーーーはい、これはヒロインと主人公が相思相愛めっちゃ最高の幼なじみ恋愛モノ……となりました。
だからこそ主人公に惚れた女の子たちは主人公が誰を好きだか察しているからこそあしらい続けるしかない。これ、主人公が多数の女の子に悪くなく思われつつも袖にされ、それでも諦めたり落ち込んだりすること無く次々行くための設定としてめっちゃうまいなと思った。

主人公とヒロインの軽妙ながらも相手を大事に思ってるっていうのがわかるやり取りもすっごく可愛いんだよね。

「見事、イトリア砦を攻略してくれれば、あなたとの結婚を考えてもいいんだけどなー」
「け、結婚……? バルカ将軍と王女殿下が……?」
 ウルリカが呆然として、バルカとシビーユに交互に顔を向けている。どうやら話の展開についていけていない様子である。
「どう?」
 ニコニコと問いかけるシビーユ。
「そ、そりゃ、お前くらい美人でかわいいコ相手なら、今すぐ結婚したいと思うけど……」
「え、何? もっかい言って?」
 バルカが口ごもると、シビーユはわざとらしく耳をそばだてた。
「お前くらい超絶美人で笑顔も怒った顔もかわいくてスタイルも抜群で愛嬌も色気もあって頭が良くて話も面白い女なら、今すぐにでも結婚したい! これで満足か!?」
「でしょ? バルカならそう言うと思ったわ。決まりね♪」
「おまっ、自分がかわいいのをいいことに、俺を意のままに操るつもりか!」
「駄目?」
 瞳を潤ませ、上目遣いで尋ねてくるシビーユに、バルカは矛を収めるしかなかった。
「いいや。そういう小狡いところもカワイイネ、シビーユちゃん……」

「何言ってるの。国王になれば、モテるわよお」
「な、何だと……!?」
「愛人なんて作り放題よ。毎晩、複数の美女をとっかえひっかえよ。ハーレムマスターを目指せるわよ」
「で、殿下!? 何言ってるんですか!?」
 ウルリカが仰天して声を荒らげた。
「あら、いたのウルリカ」
「最初からいましたが!? それより、どういうことですか。あ、あ、愛人って……」
「え? 私、愛人全然オッケーだけど? むしろ、夫にするならモテモテな方が嬉しいけど? 女にモテない、魅力のない男なんて願い下げだけど?」
 私は余裕のある女よ、と言わんばかりに、シビーユはふふん、と笑った。
「どう? 国王になってモテモテになりたくない?」
 するとバルカは、急に真顔になって呟いた。
「……いや、お前と結婚したら、もう女遊びなんてやらねえよ。すっぱり止める」
「と、突然どうしたんですかバルカ将軍!? なにか悪いものでも食べたんですか!?」
 またも、ウルリカが目を丸くした。
「いい心がけだけど、メネス公が反乱に成功したら、私はメネス公と結婚させられるのよ? 本当にそれでもいいの?」
 バルカは顔をしかめた。
「……確かに、あんな脂ぎったおっさんがお前と結婚とか、想像するだけでも腹が立つな」
「でしょ? それに、ああいう脂ぎったおっさんは、きっとイケメンに偏見や嫉妬心を持ってるわよ」
 シビーユは、さらに駄目押しした。
「イケメン禁止令とかが出されて、バルカみたいなイケメンは弾圧されそう」
「そ、それは困る……。ほら、俺って超がつくほどのイケメンだから」
「ああ、かわいそうなイケメンのバルカ……」
「生まれ変わるなら、いっそブサメンに生まれたい……」
 悲劇役者気取りで、わざとらしくよよと泣き崩れるバルカとシビーユ。

このやり取り、序盤のうちは主人公が女たらしで可愛い女の子なら誰でも良いからやってんのかと思ったけど、シビーユとのときだけなんか妙に口調が楽しそうで……。こういうやり取りも二人の間のみで通じるじゃれ合いであり、すごく大事で楽しいお遊びなんだろうな。読んでいてにやにやしてしまう。
それにしてもめちゃくちゃ息が合ってるな。昔からこうしてじゃれ合ってお喋りしてきたんだろうな感がすごい。それにこうして書き出して読み返すと結構序盤からシビーユが女にモテモテの男が良い!って言い切っててとても良い。それもそれで理由があるところ含めて。全部読んでから見るとこの2つ目のほう完全に告白しあってるだけじゃん……。2度め読みのときにこういうのわかるのすげー良いな。

そんでもって最終的に主人公とヒロインが「これから先も結婚はしないけど利用するからね」「知ってるよどうぞよろしく」で終わるのが本当にさーーーー……。
ヒロインが自分の結婚は国同士の縁や領地問題、武力問題に関して利用できるからこそ、いくら相思相愛だとわかっていても主人公とは結婚できない。主人公側もきちんとそれを理解しているからこそのやり取りだったのが本当に最高だった。相手のために、国のために結婚しないって選択肢を取るのが本当に最高だった。

微妙なちぐはぐさが気になった

策士な主人公だし政略ものではあるし、ヒロインの覚悟もかなり国のためにキメてる感じではあるんだけど、同時に女性陣や味方と敵男性陣の命の重さの差だとか、ヒロインの覚悟との重みの違いだとか、そういうところがすごくちぐはぐに感じられた。

ギャグっぽく軽く描かれているからではあるんだけど、でも主人公の学友の舌っ足らず負けヒロインがろくなお咎めもなしに普通に生存して混ざっているのがうーん……?となった。
全体的に人が死ぬとしたら全部男の敵のみで、主人公の凄さを示すためもあるだろうが仲間は死なない。敵の軍を未熟ながらも率いた学友の舌っ足らず負けヒロインも、ろくな罰を与えられること無く普通に生存している。ろくな罰なしに生存して味方側に来れるのは事前に敵を一人寝返らせてるからわかっていたとはいえ、うーん……となった。
あと舌っ足らず学友ヒロインは、その雑な舌っ足らずなキャラ付けが全然可愛くないので、別にこれ男でもなんでもいいな……雑に主人公モテさせるための舞台装置にしか過ぎないな……と思った。

ヒロインの覚悟は重たいし、主人公含めて国を活かすために自分たちの恋心はなかったことにできるよという国>自分たちではあるんだけれども、気軽に聖地巡礼に行っちゃう国王殿だとか、こういう一部のキャラの扱いだとか、すげー変な感じのちぐはぐさのある話だった。

Kindle Unlimitedへ登録

スポンサーリンク