「ラブコメの神様なのに俺のラブコメを邪魔するの? だって好きなんだもん」面白いのは最初の設定だけだった

★★☆☆☆,MF文庫Jファンタジー,ラブコメ,三角関係,同級生,恋愛,新人賞,片思い,現代

あらすじ

ちょっぴりウザい? だけどカワイイ! 神様との100%学園ラブコメ!

「優吾(ゆうご)よ、そんなに天真陽毬(てんしんひまり)が好きなのか?」
「あぁ。俺は天真が好きだ」
「ど、どうして我(われ)のことをす、好きになってくれないのだ。我はこんなにも美しくて胸も大きいというのに。我は優吾のことが好きだ! だからわ、我と付き合ってください!」
「すまん月宮。俺はお前とは付き合えない」
「そんな!? 我じゃダメなのか? お前の想いは絶対に天真には届かないぞ。何故なら、我がラブコメの神様でこの力で優吾の告白を邪魔し続けるからだ!」
「お前はそんなに俺の恋を邪魔したいのか?」
「うん」
「即答!?」
「だ、だって……わ、我は、優吾のことが好きなんだもん! だ、だから、優吾は早くあの女を諦めて、わ、わわ、我を好きになってください!」

徹頭徹尾作者と感性が合わないなで終わる話だった。

作者はおそらく可愛い女の子2人に振り回されるラブコメラノベとして描きたかったんじゃないかな。でもヒロインたちの可愛さが理解できなかったのと、ラストの決着があまりにもふわふわしすぎててツッコミどころしかなく、最終的に面白いとは思えなかった。

告白周りの設定は間違いなく面白いがそれ以外の設定があまりにガバ

主人公が好きな同級生ヒロインに告白しようとするたびに、突然空からパンツが降ってきたり、突然テレポートで移動したりという謎すぎるファンタジーイベントが発生するので告白出来ない!という設定は面白かった。

ヒロインにも主人公に対して好意があるのが読んでてわかるからこそ、告白邪魔イベントが発生しても彼女との関係性が悪くなったりしないから、そこだけは不快感も不安感も無く読めた。
こういうのって空からパンツが落ちてきてそれを手に取っただけなのに「変態!」といわれて謎に平手打ちされるという理不尽つきものだからね。そういうのが無いだけで安心できる。
でも逆にそれだけなんだなー、設定の面白い箇所。

主人公に一方的に片思いして邪魔してくる神様はラブコメの神様で、他人の恋愛を成立させたり、逆に不倫といった道ならぬ恋は邪魔したりという行動を行う。要するに普通にキューピッドのポジション。
そんな彼女や妹が使うラブコメの魔法は、なかなか前進しないカップル未満を見つけて、二人の元にベタなナンパグループをぶつけ、男のほうの身体能力を向上させてナンパ男たちを撃退させ、女にきゅんとさせて好感度をあげてカップルにする、といった魔法。

このベタなナンパグループどっから湧いてきたんだろう。魔法で作り出したのかな。それとも魔法で普通に歩いてた男たちの精神を変化させて突然ナンパさせたくしたのかな。どれにしたってめちゃくちゃ理不尽だな。
ラノベのガバファンタジー設定に突っ込みいれるのも野暮だしファンタジーにそういうのは完全にアホだとは思うんだけど、そのナンパグループのうち2人が実はカップルで、魔法が解けてからなんであんなことをしたんだと喧嘩になりそこから罅が入って破局したらどうするんだよというものすごくどうでも良くいらない展開を想像した。
これ以外にも、失恋した女子の前に突然発生したイケメン男子、これイケメンが目の前を通っただけで失恋に関してなにか良いことがあるのか(失恋した女子が失恋直後に即座に恋ができる精神性だとしても、相手のイケメン男子にその気がなければまた失恋になるのでは?)、草食系男子にラッキースケベ発生させてもだからなに?としか。

でも神様が徹底してあまりにあまりなやり方で主人公の恋愛を邪魔していることを考えると、単純にラブコメの神様が人間歴が少なすぎて人間が何を喜ぶのかなにもわかっていないだけかもしれない。人外ヒロイン枠。

そもそもヒロインたちを可愛いと認識できなかった

神様は行動からして主人公の目的である『ヒロインに告白する』の敵対者として存在しているため、可愛いとは認識できなかった。

主人公が片思いしている同級生ヒロインは主人公に好意を持っているのはわかるんだけど、なんとなくふわふわした喋りの子だな、途中で変な性癖の持ち主だなとは思うが、それ以外に特に可愛いと思える場所がなかった。

神様の妹は出だしから暴言連発して好きな人の前でだけ引っ込み思案だから結果的に好きな人が自分は嫌われているのではと思い込むための枠で、あたりがきついしそれが全部八つ当たりなので可愛いと思うのは厳しい。

男装ヒロインはよくある3番手ヒロイン枠なので成就しないのを完全に本人も認識しているので恋愛感情をかたに取られて主人公のために都合よく動く便利キャラにしかなってない。

そもそも神様が徹底して主人公の目的の敵対者としてしか認識できなかったので、読んでいて彼女が邪魔してくるたびにこちらとしてはヘイトが溜まった。主人公視点での描き方でも『自分を好きだが邪魔をしてくる厄介なやつ』という描き方な故に尚更それが強まる。
主人公に服を買ってもらっちゃった(※神様と同行者が金を持っていなかったために代わりに支払っただけで服を選んだわけでもない)という出来事で嬉しくなれるという、雑すぎてお前本当にそれでいいの?と言いたくなる描写も含めて神様が主人公を(理由は知らんが)好きで好きでたまらなくて必死なのは十分伝わってくるんだけど、でも主人公は神様を恋愛的的な意味では全く好きじゃないのでうーん……。

おそらくこれだけ主人公に執着してくる子は可愛いだとか、こんなに必死になって好意を伝えてくる子は可愛いだとか、こんな些細な出来事でも喜んでくれる子は可愛いだとか、そういう描写がしたいんだろうなというのは察せラッル。
でも、主人公は彼女を恋愛対象として見てこないので、とにかく告白を邪魔してくる敵としてしか認識できない。
このあたり単純にヘイト管理がものすごく苦手なんだろうなっと思った。

途中で主人公が「どうして邪魔ばかりするんだ」というあたり、完全に正論過ぎて全然神様を可哀想とは思えなかった。実際ずっと邪魔をしていたし。
これがもし主人公が神様にも少しでもぐらついている状態で観覧車乗るのを邪魔して来られたんだったら二人の間で揺れる主人公となるんだけれども、そうじゃなくて決死の告白のときに邪魔をされるというのをひたすら何度も何度も何度も何度も繰り返されているせいで、そのぐらい普通言うよなという感想にしかならない。主人公がそういう発言をする気持ちがものすごく理解できてしまう。

最終結論の雑さが目立つ

神様がラブコメ魔法で主人公とヒロインの距離が近づくように手助けしてくれていたからこそ出来上がったヒロインとの関係。だからこそ、神様が邪魔しても壊しても主人公は何も言う資格がない。

主人公が神様の邪魔を許すための最終結論がコレなんだけど、いやいやいや? は? と首を傾げてしまった。

いくら周りから人を減らすお膳立てをされたとしても、そもそもそこでメアドを訊いたり会話をしようとしたのは主人公の努力なんだよ。ヒロイン側が主人公に惚れて距離を詰めてきたのではなく、主人公がヒロインに惚れてアプローチを続けてきた。
確かに神様は周囲から人を減らすお膳立てをしてきたのだとしても、そこから動いたのは主人公なので、関係性を作ったのは主人公だよ。
ヒロインは主人公とある程度近くなってから可愛いと思われたくてのイメチェンなのでおそらく主人公が好きになるほうが早いし、そう考えるとやっぱり彼女との関係性って主人公の努力の結果。突然ヒロインの好感度を100%にされる魔法を使われたわけじゃないんだから、神様にそこまで譲歩したり許したりする必要なくない?

たまによくある負け幼なじみヒロインが、今まで自分からは何も行動してなかったくせに主人公がぽっと出転校生ヒロインと距離を詰めると自分のほうが先に好きだったのにというような、いやだったら行動先にしておけよと言いたくなるような言い分だった。

全体的に作者と感性が合わないし、ヒロインも可愛いとは思えないので何もかも合わなかった。

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