「飛び降りようとしている女子高生を助けたらどうなるのか?」最後に訪れる怒涛の雑を見よ

★★★☆☆,角川スニーカー文庫ラブコメ,両思い,付き合ってる,家族,恋愛,現代,腐女子

あらすじ

失意の底に落ちた女子高生との、幸せな同居生活が始まる――。

特待生の学費免除を維持するため勉強とアルバイトだけをして高校生活を過ごしてきた結城祐介はある日、猛烈に彼女が欲しくなってしまった。
そんな思いつきから寂しさがこみ上げた帰宅途中、ふと空を見上げると廃ビルの屋上から身投げしようとしている少女を見つける。
「なんでこんな事してんだよ!」「私は…生きてる意味……無いですから……」「待て。美少女が死ぬのはもったいない」「……?」「死ぬくらいならさ、俺の彼女になってくれ」「えぇっ?」
こうして奇妙な出会いからはじまった謎の少女・初白小鳥との新たな日常と恋物語がはじまる。

最初の想定よりは面白かった。

でもツッコミどころは多数ありまくったし、そのツッコミどころを押しのけてやってくる怒涛の雑とツッコミどころがラストにご用意されていて笑ってしまった。こんな雑なことある!?

徐々に近づく初々しさと、サブカプの面白さ

恋に恋するお年頃で突然彼女が欲しくなった主人公の元に、突如現れた飛び降り直前の少女。いくつもの痣がある少女に彼女になってと言ったところ了承され、帰る場所がない彼女を家に泊めることとなる。

主人公とヒロインの関係は結構最初っから出来上がっててイチャラブベタベタなんだけれども、それでもほんの少しずつ変化があってそこを追いかけてくのが楽しかった。他人との触れ合いにおびえていたヒロインが主人公と手を繋げた瞬間はよっしゃとなったし、ヒロインが一人の時間でも少しでも暇にならないようにとゲームを買ってきたあたりから徐々に心を開いてきて、接触ややり取りが増えていくあたりがものすごく可愛かった。

二人の初々しさ満載のやり取りや、手を繋いだりくっついているだけで幸せ! というやりとりがもうあまりに尊い。可愛い。ご飯作っただけでこんなに喜んでもらえるならそりゃ作りがいがあるでしょう。

ただ、主人公がどこでヒロインに惚れたのかもよくわかんなかった。このあたりは後述。

でも個人的に刺さったのはサブカプのほうかもしれん。腐女子で若干肉付きが良い(ガタイが良いというと肉付きが良いと言えとどついてくる)少女と、イケメンで野球部なのにその子にべた惚れで彼女相手のときのみ若干変質者状態になっている少年のカプ。ボケとツッコミのノリが良い。

たぶんこれ、二人のやり取りが小気味よいのもあるんだけれど、なんで好きになったのかよくわかんないままの出会いから進行を見ているよりも、物語開始時点で既に好きになっているメインじゃない二人のほうがすんなり見ていられるっていうのがあるのかも。この二人がメインだったらそれはそれで面白くねーって言い出すと思う。

彼女ロールしてるヒロイン、どこでヒロインを好きになったのかわからん主人公

ヒロインが無意識のうちに彼女ロールしてんのかなとも思った。

物語の終盤にわかるけれども、ヒロインは母親を亡くしたところで父親に勉強しろ家事をしろと言われてこなし、最終的には殴る蹴るの虐待も受けてきた。それでも今まで父親のところから逃げ出さなかったのが、最後の最後で逃亡し飛び降りようとしたところで主人公に発見され――で物語は始まる。

主人公と出会って家に連れ込まれた後、人間怖いと行動で出しつつ彼女ロールしているヒロイン、依存対象を父親から主人公に変更して良い彼女ムーブしているように見えた。誰かに必要としてもらいたい女による依存対象変更しての同様のムーブって感じがあった。

更にいうと、主人公が最初っからヒロインにべた惚れですって顔しているけれども、どこで惚れたかは全然わかんないんだよな。顔? 飛び降りしようとしている女の子がいたから助けました、今ちょうど彼女が欲しい時期だったので彼女になってほしい的な発言をしたら彼女になってくれました、彼女は超絶美少女で、助けてあげた俺になんかいい感じに彼女ロールしてくれます、というだけであって、主人公が彼女のどこに惚れたのかはよくわかんない。彼女が出来たことに浮かれている序盤からなんか知らんうちに普通にヒロイン自体に惚れている中盤へと変化してくんだけど、どこで『彼女が出来た=誰でも良い』から『彼女が出来た=ヒロインじゃなきゃ駄目』になったのか全然わかんなかった。ヒロインが主人公に惚れたというか依存してる理由はわかるんだけどね。

でも主人公は主人公でどこで『ヒロインがいい』になったかはわからないけど、ヒロインとの距離の詰め方や気遣い方がうまい。惚れるのはすげーわかる。ヒロインの過去について無理に聞き出そうとせずヒロインから話してくれるのを待つ。友人が自主的に調べてくれたので知ってしまったけれどもそれを持って詰め寄ったりはしない。自分がいないときに暇だろうと貯蓄からゲームを買ってきてプレイしてもらったり、なにかしてもらうと大袈裟なまでに感謝や嬉しさや喜びを伝える。こんなんされたらまあ惚れるわなではあった。いいヤツすぎんよ。どこで主人公がヒロインに惚れたかは知らんけど。

終盤、怒涛の雑

序盤~中盤にかけての丁寧に距離を詰めていったりの物語は面白かったけれども、終盤突然ご都合主義が顔を出して暴れまわりだして笑ってしまった。娘が2ヶ月行方不明でも放置していたのに、偶然見つけたら力づく気味に脅迫もしつつ回収する父親、なに!? 今までほっといてて!? 脅し方も随分と途中から雑だけど!?

この父親周りは流石に雑すぎて笑ってしまったし、そこから人を殺してしまって……の更に雑が重ねられていくの雑に雑を重ねんなよぉ!! って笑ってしまった。

でも雑すぎて手抜かりありまくりな父親に啖呵切る主人公は間違いなくかっこよかったので良い……のかな……雑だよぉ!! 今後の2人はどうなるかというあたりも含めて雑だよぉ!!

最後の最後に雑が怒涛の勢いで訪れて笑ってしまった。

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