「恋は夜空を渡って 2」悪役はいない、でもおもしろい

★★★★☆,電撃文庫ラブコメ,両思い,先輩後輩,恋愛,現代

あらすじ

ラジオで繋がる二人の恋。それは、いまだにじれったい。

クールな後輩、御簾納咲が実は恋バナ配信者――しかも彼女から好意を持たれていることを知ってしまった俺。
保留にしていた告白に、ようやく応える決心がついたんだけど――
「ごめんなさい、お付き合いできません」
まさかの玉砕!? しかも御簾納自身も振ってしまった理由が分からないらしくて……。
ラジオで繋がる青春ラブコメ。とっくに両想いな二人の恋の行方は――!

1巻の感想はこちら。

1巻のラストでヒロインが主人公へ告白。主人公は告白を保留するけれどもほぼ両思い状態。
ようやく腹をくくった主人公が改めて告白をしたところ、何故かヒロインから断られる――という状況から始まった第2巻。
恋愛ものって双方告白して両思いとなったら一段落ついちゃうんだけど、今回は『なんで断ったのかわからない』だったことで話が転がっていくのがおもしろい。

この話においておもしろいのって、配信というツールで相手の気持ちを聞けるところ。主人公がなんで断られたんだ!?と混乱しつつ、配信でなら彼女の本音を聞けるかも!と期待して聞くあたりが不安とわくわく感が出ていて好き。しかしそこで更に『自分でもなんで断ったかわからない』というのが出てきちゃうんだけど。
ヒロイン側が誠実なのって、主人公が聞いているのを知っているからこそここで言い訳しよう!みたいな姑息な使い方をしないところ。むしろ1巻ラストで「これからも聞いていてくださいね」って発言しておきながら、主人公がリスナーにいるのあんまり意識してないよね。実際聞いてるって主人公が言ったら驚いてたし。
そういう方法もあるのにやらないところが誠実かつ読んでて印象下がらないところで良かった。
ぶっちゃけあらすじ流し読みして、これはヒロインが主人公に対する不満を主人公が聞いているのを知っているのに話して、それで主人公がどうにかしようと頑張る話じゃないか?と思ってすらいたので。下衆の勘ぐりしてすみませんでした。この話のキャラクターたちはそんなことしません。

ただこの配信って他人も聞けるんだよね。だから主人公が妹と聞き始めたのが笑ってしまった。

『ああ、またいつかちゃん。「ちゅーはどうです!? したいですか!?」』
「だから! スルーしろって!」
『もう、したいですよ! ずっとしたいと思ってますよ!』
 ──お兄の叫びもむなしく、御簾納ちゃんはそう告白してしまう。
『ちょっと、コメント欄も盛り上がり過ぎですって! こんなこと聴いて何が楽しいんですか!』
 ……あー、これはキツい! んー、ダメだ! あーこれはダメです! 頭に浮かんじゃったよ! 二人がちゅーするシーン! いやね、御簾納ちゃんの方はいいの! かわいいしね! キスシーンを見ても、こっちがときめいちゃうくらいです! けどお兄……あんたはダメだ! 妹として、あんたのちゅーシーンは……ほんと……無理……。
 やば……なんか……キツ過ぎて気が遠くなってきた……。
     (中略)
「そうだな、はは……」
 必死に意識を保ちながら、お兄と笑いあう。
 見れば──お兄は顔が真っ赤になっている。 あーもう……またその顔が無理……。
 兄がそういう表情してるとことか、マジでキツいです……。
 本格的に限界を感じはじめた、そんなわたしに──、
『──ああ、またいつかちゃんから!』

友達と身内のそういうシーンを想像してしまってダメージ受けまくっている妹ちゃん、誠に申し訳ないんだけど笑ってしまった。
主人公とヒロインの二人だけの場でヒロインが吐露してしまったら妹ちゃんは聞けない。妹ちゃんの目の前ではヒロインも話さないだろう。配信という、リスナーと配信者の場だから出てしまった発言。
1巻で主人公が異様に美化された自分の話に頭を抱えて悶えているシーンを思い出してめっちゃ笑ってしまった。

その妹ちゃんがヒロインの友達となって云々のあたり、読みながら大丈夫!?これ妹ってバレてからすげーごたごたする話じゃない!?主人公に言われて友達のフリしたのかって糾弾される流れじゃない!?と不安になったのに、配信終了後即刻バラすわ普通に問題ないわであまりに優しい世界で読んでて胸をなでおろした。

優しい世界と言えばこの物語、リスナーの民度がすごい。
物語だとしてもリスナーがいい人ばっかりで、コメント欄も荒れた様子がない。ヒロインがそういうコメントやメールを拾っているのだとしても主人公側は荒らし米なんて見えるだろうに言及しないあたり、本当にそういうの無いんだろうな。同接2桁ぐらいで馴れ合いしてる配信、もしくは深夜ラジオの雰囲気だ。
あー深夜ラジオ、深夜ラジオが一番近いな。常連さんがいて、パーソナリティの個人的な話も出てきて乗っかって、でもって比較的民度が良い(とリスナー側に見えるようにメールの取捨選択がある)。取捨選択なしにコメントが乱舞する配信っぽさは少ない。
正直に言うと、Q太はヒロインに構ってほしいだけの嘘メール送り続けている人か、ヒロインガチ恋で主人公と本格的にくっつきそうになったから邪魔をしようとしているやべえファンのどっちかだと思ったんだよね。だからどんどんと状況は悪化していく。
実際はそんなことなく、ヒロインに「もう諦めよう」と言われても逆恨みすること無く納得し受け入れる。民度の高い優しい世界だった。

配信が物語のキーとなっているだけあって、この巻の物語のキーとなる『なぜヒロインは主人公の告白を断ったのか?』という部分も配信絡みだったり、主人公の配信をヒロイン側が聞くという今までの逆転パターンがあったりと、そうそう、これが読みたかった!というようなシチュエーションが多くて楽しい巻だった。
嫌な人のいない、ストレスはないものの物語の起伏はあるラブコメとして、すごく面白かった。

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