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あらすじ
史上最も禍々しいヒロイン爆誕! 第37回ファンタジア大賞《大賞》受賞作
『か、可愛い、ですか……? あ、ありがとうございます……』
新入生ヘレシーの召喚獣、ハッピーは心優しく清楚な女の子。
「なん、なの、あれ……」「ひぃ……っ!」
――外見は少し異形だけど。
庶民で落ちこぼれな上に召喚獣が怖すぎて、召喚師学園の異物でしかないヘレシー。
普通にしているだけなのに、高飛車な令嬢を恐怖で籠絡したり、第二の異形美少女を召喚したりと大暴れ。
挙句、無関係な陰謀の黒幕扱いされ――
無自覚のうちに危機に叩き込んでいた学園を救うべく、少年と召喚獣は本領を発揮する!
『鬆大シオ繧翫縺呻(頑張ります!)』
いや~~~ヒロインが可愛い! ド好み!
幼馴染で、主人公のことを異性として意識しているのに妹としてしか意識されていなくて、それだけの理由もあって、地元にいたときは一緒に農作業をしたりしていて、少し前から頭を撫でてもらえなくなったのがちょっと寂しいおとなしい系メインヒロイン! いやあド好みだなあ!
※ただし肉塊で現世に出現した瞬間に周囲のSAN値をゴリゴリ削る
中身としては他ヒロイン含めて上位存在に愛される系主人公モノではあるんだけれども、メインヒロインがぶっ壊れすぎていて笑ってしまった。いや……こんな……つええな……怖いよ!!
よくある物語でもあるのにメインヒロインがおかしい
幼い頃に召喚してからというもの家族のように過ごしている召喚獣・ハッピーと共に召喚師の学校に通うこととなった主人公・ヘレシー! 将来の夢としては実家の村でハッピーと共に畑を耕すこと、というヘレシーだが、隣の貴族令嬢・レティシアのせいで彼女の元婚約者である貴族令息に喧嘩を売られる。
ここまでかなりあるあるで、ここから発生する『貴族令息を幼馴染でもある召喚獣・ハッピーが圧倒的強さを見せつけて倒す、そして主人公の強さに貴族令嬢・レティシアも主人公に惚れて執着してくる』まで完全に一種のテンプレ化しているし想像がつく内容だというのに、召喚獣・ハッピーがあまりにやばすぎるという一点が強すぎる。
立てば血痕、座れば肉塊、歩く姿はSAN値ゴリゴリ。
周囲にいる人間が恐怖と怯懦でろくに動けず絶望しまくる、周囲の正気度をゴリゴリに削るヒロイン。周囲にいる人間に絶望の幻覚を見せてくるヒロイン。しかもそれがパッシブスキル。なんかもう、すべてがヤバすぎるんですけど!?
おかげでレティシアが主人公に惚れる展開も、『恐怖と絶望のなか主人公の声と周囲だけが安全だった』という理由があまりにも「そうだよなあ……」すぎて謎に納得してしまう。いやあ、この状況で安全地帯があったら刷り込みとしてそばにいたくなりもしますわ……。
しかもこのハッピーが、小説ならではの方法で可愛らしく描かれているのがずるい。もしビジュアルがあったらハッピーってめちゃくちゃ怖いと思うんですよ。ぼたぼたと血の滴る肉塊から手足が無造作に生えて人の顔がくっついている何か。見ただけで発狂するような悍ましいもの。
なのに彼女はヘレシーと会話しているときは、どこまでも可愛い女の子。実家にいた頃には一緒に農作業をし、鎌の使い方がヘレシーより上手で、ヘレシーが『女性の扱い方はハッピーのおかげでわかってるよ!』なんていうとええ~本当ですか……?となるくらいには素直で可愛くて、ヘレシーと一緒にお出かけはしたいけどみんなに怖がられちゃうなら駄目だよねと思う程度には常識的な女の子。素朴で愛らしい女の子なのが台詞の端々から伝わってくる。
ただし台詞はすべて文字化けしていて、()で人間の読める言葉が描かれているとする。
この文字化けがあるから「いややっぱめっちゃ異形じゃん」もある。確かにこれがなかったら彼女ただの可愛い系ヒロインですからね。小説ならではの可愛いじゃんのほうが上回っちゃいますからね、この要素があるだけで異形異質恐怖が上がりますよね、正しいですね、怖いです。
これで主人公がハッピーを美少女と誤認してるみたいなんがあれば「それはハッピーがおかしいなにかなんだな」なんだけど、血肉滴ってるの認識してるし、寝起きでハッピーが可愛い女の子に擬態しようとしているなと思っているシーンがある→通常は可愛い女の子ではないと認識しているのを考えると、ヘレシーの認知はバグってないんですよね。ただただ幼い頃から一緒にいたので異形に慣れてて、内面が可愛い女の子なので可愛い女の子と認識しているだけ。
可愛い女の子に見えているのとどっちがマシなのかなあ……これ……。
基本的には上位存在に愛される主人公モノ
ヘレシーって、なにやってるかと言われればほとんど何もしてないんですよ。異様な能力もハッピーのものであり、召喚術というか『声をかければ異界に届いて気軽に呼び出せる』という、おそらくは本人の素質? 出身地にまつわる異能力? のおかげでちょっと人と違っている。精神性はかなりおかしいけれども、別に本人の努力でもなんでもないからなあ……。
そんな彼が、レティシア(これはしょうがない)やレティシアの召喚した上位格存在であるコン子に愛されるのも、言ってしまえばよくある平凡主人公が上位存在に愛されるモノ。
だというのに、主人公周りにめちゃくちゃ不穏さ漂っているのがまた面白い。
こういうのによくある主人公を田舎者と見下して嫌っていて突っかかってくる校長、普通だったら読者にこういうやつサイテ~と思わせて主人公頑張れ!と思わせるための舞台装置なのに、絶対この人何か知ってるタイプの人なんだよ。これほどまでにちょっとそこ詳しく聞かせてもらえませんか!? と思ったことはない。それ以前に、主人公をいやに嫌う校長のほうが正気っぽそうと思うこともそんなないだろ。
「お前の出身地の村が!」みたいな台詞もあるし、よくよく考えたらヘレシーもハッピーについて『村の人たちは大丈夫だけれども都会から来た人たちはおかしくなって逃げていった』みたいな発言を多数していたし、やっぱり出身地の村ごと何かおかしいんだよ。生皮で作られた召喚魔法の書いてある本があるのもおかしいんだよ!
ライバル貴族令息の成長譚としてももっと読みたいよ!
主人公であるヘレシーがさほど特段変化という変化もなく巻き込まれ型主人公として学園生活を過ごしている一方、ヘレシーで冒頭にチュートリアル確定勝利戦のために消費された悪役令息ことジェイドくん。好きだった女もヘレシーに奪われ、恐怖のために学校にもいけず引きこもり状態のなか、彼が必死で立ち直ろうとする姿がすごく良かった。こういう潰されても立ち上がろうとする系キャラ好きなんだよ!!
傲慢だし力の誇示の方向に行きかけてた少年が、一度潰されて鼻っ柱を折られ、自分がどうするべきか考えて立ち上がるのは良い話!
……なんだけれども、結局ジェイドの対応をしたのはハイドラであってヘレシーじゃないし、ヘレシーにとってジェイドって歯牙にもかけない相手でしかなく……。扱いが良いとはとても言えない彼が果たしてもう一度立ち上がってくれるのか(そして今後も出番があるのか)、まるでわからん。
すでに2巻が春に確定しているというのは嬉しい! んだけれども、中身はヘレシーが異形との外交官に!? という方向で、これジェイド出番なさそう……ヘレシーが上位存在ハーレムするのがメインになりそう……。
ハッピーの魅力で読んでいるけれども私はさほどハーレム好きじゃないし、出てくる上位存在女ばっかりだしで、ウーン……と若干なりかけている。どうせなら男女両方出てくれ。
こういう話だとヘレシーは変化が乏しい主人公になるだろうし、まあ一般向け(男性向け)ラノベで売上考えたら主人公ハーレムに男が入ってくる可能性は低いとはいえ、ヴィラン・叩き潰し要員以外でも男がいてほしいというか、主人公に同性の友人がいてほしい派です。異性の友人しかいないのキモいだろ。女主人公だと女友達いること多いんだけどな……。
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