乙女ゲームの世界でヒロインの姉としてフラグを折っています。 (ビーズログ文庫アリス) 藤原 惟光
あらすじ
可愛いヒロイン(妹)のために、攻略キャラとのフラグを折りまくります!
妹は前世でハマリ込んでいた乙女ゲームの最推しヒロイン。
そして私は姉の真梨香に転生した!
でも、このゲームの攻略キャラはヤンデレ王子や傲慢バカなど――ろくな男がいない!!
そんな『残念男』達のルートに突入すれば、可愛い妹は辛い思いをしてしまう。ならばいっそ、攻略キャラとのフラグを折ってしまえ!
そうして、攻略キャラ全員の様子を伺えるポジション=生徒会に潜入したけれど、なんだかゲームの設定とは違うような……!?
圧倒的フラグ折り力
セコムと呼ばれるポジションがある。
特定キャラに対して過剰な保護意識を抱いて、近づく敵っぽいやつやら恋愛的に興味がありそうなキャラやらを片っ端から遠ざけるタイプのキャラクター。ピクシブ辞典を見るとだいたい詳しく載っている→セコム (せこむ)とは【ピクシブ百科事典】。
そして、この物語の主人公は、妹のセコムだ。
推しゲーの推しキャラの姉に転生し、攻略キャラにはろくな男がいねえので片っ端からフラグを叩き折り続ける主人公の物語。
方向性があまりにトンチキすぎて面白い。恋愛を邪魔するという意味ではとても正しく悪役令嬢をしている主人公だ。
転生してよかったと思うのは、ゲーム画面では顔アイコンと、イベントスチルの一部、設定資料などでしか見ることができなかったヒロインの姿が、いろんな角度、表情で拝めることである。しかも全編フル動画。
そりゃあ相当幸せだろうなあ!
主人公の推しはヒロイン。そう、ヒロイン。攻略キャラでもなければ脇キャラでもなくヒロイン。
そして主人公の現在ポジションは、ヒロインちゃんの姉。
攻略対象のイケメンたちでは私の可愛い桃香を幸せにはできない。それならばいっそ彼等の魔の手から大事な妹を守ってみせる、と。
転生前の記憶が蘇ると同時にそんな強い決意をしてしまった主人公が、片っ端からフラグを叩き折りまくる。
本来ならばヒロインと攻略対象が出会うポイントで攻略対象を池に叩き落としてフラグアイテムの交換を阻止し、本来ならばヒロインがパーティに制服で参加したことをバカにされるイベントが発生するのでその前に自分が同じ学校に入学した上で制服で参加し他にも同じようなことをする生徒を増やそうとし、特待生の地位が低いならばヒロインが入学する前にあげてやると生徒会で奮闘する。
こいつ、完全に妹のために動いている。完全にすべてが妹のためになっている。
当然、そんな目立つことをしていれば他人から目をつけられるし、乙女ゲーの攻略キャラたちも主人公へと目を留める。
しかし主人公に見えているものはただ一つ、妹の幸せのみ。自分にモーションかけてくる女好きキャラも邪魔物にしか見えなければ、本質はヤンデレなキャラが自分になんとなく矢印を向けていても見向きもしない。こちらに興味があるふりを見せているキャラはそれ以前に出会いフラグを叩き折っているから眼中にすらない。
もちろん、桃香が恋する相手が攻略対象だった場合は、彼女の幸せのために応援する覚悟はある。その場合は全身全霊をもってバッドエンド回避に尽力してみせる。
というものの、その前に恋するルートに入るのがとっても難しいよう出会いフラグすら潰している主人公。あまりの徹底っぷりに笑ってしまった。
ヒロインに対するフラグが折れたキャラたちは、当然のように主人公に矢印を向けてくるものの、当然主人公はそんなもの眼中にない。視界にいるのはただ一人妹であり、幸せにするべきあいては妹のみ。その徹底っぷりが面白かった。
こうなると妹が入学してから一体どんな波乱万丈が起きるのか気になりすぎる。
勿体ないのは、物語が学校でのものが大半で、主人公が最愛の相手である妹がどのぐらい可愛いのかの描写が少ないこと。もっと妹溺愛するだけ可愛いキャラだというのを見せてほしかったな。それもそれこそ続刊に期待。
とはいえ、発売が2017/7で現在まで続刊なしでなろう小説ということは、もうこれは続刊絶望的なのかな。Webだと続きが読めるようなのでこちらを読んでみたい。
読書メーター見る限り、もしかしてWebだとかなり開始の状況が違うっぽいし楽しみ。