「とってもカワイイ私と付き合ってよ!2」友達以上恋人未満の二人の関係性が最高

★★★★☆,角川スニーカー文庫付き合ってる,学園,恋愛,現代

あらすじ

結朱の前にライバル登場!? それぞれの想いが揺れ動く文化祭が始まる!

文化祭の準備を進める“偽物カップル”の結朱と大和。そこに高校に入ってから距離をおいていた大和の友人・日菜乃が加わったのだが――結朱はどこかご機嫌斜めで、何故かいつものナルシストっぷりがエスカレート!?

シリーズ: とってもカワイイ私と付き合ってよ!

文化祭と、それにともなって大和が過去に壊してしまった人間関係が二人の前に現れる巻。いやめっちゃ良かった……。

結朱と大和の関係性が最高

友達以上恋人未満としか表現できない二人の関係性がめちゃくちゃ良いんだよな……。

偽物カップルを演じていて、しかも大和は中学時代陽キャを演じていた、結朱は陽キャでハイテンションかつ周囲をちゃんと見ている性格なので、演じ方がすごくナチュラル。
二人での普段の会話は、傍から見れば気が合いテンポも合うバカップル。けれども本人たちからしたら気のおけない仲であり気を使わない仲であるからこそ出てくる気安いものと、いちゃついた会話をしてもあまり照れたりしない陽キャ同士だからこそ出てくる会話。好意がないからこそのカラっとした空気感、だからこそのイチャつきに見えるという距離感が良い。
同時に、結朱がナルシストというか自己肯定感高めなので、何かあったら自分とのデートが報酬だとかそういうお喋りもできる。
読んでてすごいするする読める良い関係だった。

今回大和の前に現れた、過去には友達だった女子。結朱の前で、彼女と大和の間でしか知らない会話が繰り広げられたり、大和は時々彼女について俺はあいつのことわかってる感ある様子を見せる。
それについて結朱は嫉妬はするけれど、その嫉妬が恋愛面での嫉妬なのか人間としての嫉妬なのかふわっとわかりづらくされているところもものすごく好き。
結朱の自覚としては人間としての嫉妬なんだよね。結朱が知っている大和は今の大和であり、陽キャでコミュ強だった時代は知らない。だから大和が自分の知らない頃の大和になってしまったら寂しいしちょっと怖い。
けれどもそれは恋愛ではなく、大和に距離が近い恋愛関係になるかもしれない女子が現れたからという理由ではない。
この絶妙さというか、微妙さというか……なんというか、すげえうまいしわかるし、その嫉妬が発生する距離感こそが二人の良さなのだなと認識した。

「大和君は本当に私のことが大好きだね。あと束縛も強め」
「あはは、結朱は魔女になりきるのが上手いなあ。人の優しさをこんな歪んだ解釈ができるなんて、魔女以外にありえねえよ」
 笑顔で皮肉を返すと、結朱も最高の笑顔を向けてきた。
「うふふ、そういう大和君は神父に向いてないね? だって平気で嘘吐くもん。本当はヤキモチを焼いているのに、無理やり他の口実を作って着替えさせるなんて。駄目だよ、神父さんはもっと正直者じゃなきゃ」

この会話なんて特に、傍からみたら完全にバカップル、でも本人たちはその気が無いからやれる会話だよね。いやー……バカップル(偽であり恋愛感情はない)……。

そしてこの二人は自分たちの感情を隠すのがうまいし誤魔化し上手だからこそ、読み手として見ている『二人の関係は嘘かもしれない』『恋愛感情があるけれども無いふりをしているのかもしれない』とも読めるのが面白い。期待しちゃうっていうか。
でもまだしばらくこの関係性でいてほしいなー! 偽であって真ではないカップルで、イチャつきに見えるが好意はなく信頼はあるが恋愛はない会話をしてほしい。

人間関係という前巻との対比

前巻は、結朱が自分の周囲の人間関係が壊れないように動き回る巻。
対して今回は、すでに過去に壊れてしまったように思えていた大和の人間関係を、少しだけ修繕する巻だった。

陽キャだった中学時代だが、自分を偽るのに疲れて人から徐々に離れていってしまった大和。その頃に自ら手を引いて人の和に連れて行った少女との再会。

 結朱にも言った通り、俺は友情が終わることは悪いことじゃないと思っている。
 だけど――俺たちはまだ終わっていないのだ。
 最後の最後、喧嘩もしないまま、互いの本心も言わないまま離れた結果、終わることもできなくなっていたのだ。

前巻の完全に亀裂が入って明確に壊れかけていた結朱の周りの関係性とは完全に真逆であり、けれども人間関係の崩壊という意味では結朱の事件も思い出させる出来事なのがうまかった。

そしてヒナを選ぶ(過去の自分に戻る)か、結朱を選ぶ(今の自分のままでいる)かの選択の場面。
ジャックオーランタンの格好の結朱がヒナの居場所を伝えるの、よくよく考えたら1巻と同じく、自分が身を引いて、自分が輪から外れることで他の人の関係性が丸く収まるようにする行動なのか。結朱の、普段は陽キャでナルシストにすら思えるぐらいに自分を可愛いと思っているのに、ふとそうやって身を引く瞬間にぐっとくる。

大和は自分の過去をちゃんと精算し、結朱との関係を選んだ。その清々しさや、選べる強さが、今の大和なんだなと思った。

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